7 蛍抄

(「おのが火を逃れんとして蛍飛ぶ」かねて愛誦する山田みづえのこの句へのオマージュとして。)


限りある時とも知らず蛍飛ぶ


おのが身のしきを知らず蛍飛ぶ


残照は黄泉よみへの道ぞ蛍飛ぶ


残照に明日をたのみて蛍飛ぶ


せせらぎや一筆書ひとふでがきに蛍飛ぶ


眼裏まなうらに消えぬ道あり蛍飛ぶ


てられし水子みずこたまや蛍飛ぶ


幼子おさなごひたいを越えて蛍飛ぶ


何もかも崩れる夜ぞ蛍飛ぶ


ひとりにはひとつの光蛍飛ぶ


人はまだ知らぬ国へと蛍飛ぶ


読まれざる書架しょかの狭間を蛍飛ぶ


ちちははのるはさちなり蛍飛ぶ


過ぎし世のひとみも集め蛍飛ぶ


心眼にとおる光よ蛍飛ぶ


闇は海孤島ことうのごとく蛍飛ぶ



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