2 黒蜥蜴

この林檎とあの林檎と何が違うのか


朝霧に刻印されし冬薔薇そうび


魂の墜ちなば燃えよ草紅葉


落日や我をほふらん蝉時雨


目を閉じて師走のからす懐かしむ


秋空へ破れし心解き放つ


廃ペンキ屋狂喜撒布てっぷし紅葉萌ゆ


倦怠けんたいを噛んで血を吐く黒蜥蜴とかげ


忘却の影が呼び交う井戸の底


糸杉の遠くの空に鼻架ける


十字路に肋骨埋めて指腐る


十字路に肋骨埋めた指腐る


電報の行間に白き指かざす


枯野にて古靴舞えば命燃ゆ


(飯田龍太に知人の自裁じさいをとりあげた句が、確か二つある。どちらもその行為への戸惑いを読んだ作に見えた。)

木枯こがらしやされど自裁じさいは彼のもの


青黒き蛇の腸内駆けめぐる


このせいいとうことなし寒椿


時針凝視じしんぎょうし指欠けてゆく無残



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