第5話

 そして男性は話を始めた。

 「私はこう見えてもね、今は銀行利子や株式の配当で生活費を賄っているんだよ。でも若い頃は本当にお金がなくてね。毎日なにを食べて飢えを凌ごうかと考えていたんだ。公園の水で渇きを癒し、コンビニの廃棄予定の弁当をこっそり貰って食べていた。そのコンビニの娘さんがあの子というわけさ。そして思うのは『今にみていろ。私はこんなものじゃない。いつか羨まれるような暮らしをするんだ』ということだ。だからといって何か具体的な方法が考えついたわけじゃない。何か行動を起こせるような元手があったわけじゃない。だが、それを聞いたコンビニのオーナーが言ってくれたんだ。うちで働かないかと。君も今の生活に満足をしていないな。そしてその出口としての答えとして宝くじを選び、きちんと行動して宝くじを買った。ああ、話が逸れてしまったね。私はね、そのコンビニで一生懸命に働いた。そもそもがコンビニだからね、勤務シフトは楽じゃなかったよ。深夜早朝は当たり前で、シフトが2つ続いていた時もあった。朝5時から夜の8時までとかだね。でも全然つらくはなかった。あの子もことも小さい頃から知っている。そうしてやっと人並みの生活ができるようになった頃だったな。コンビニで宝くじを扱うことになったんだ。私も新商品の1つとしてある程度の勉強はした」


 そこで男性は一旦言葉を切った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る