第2話

 この男性からは言いしれないオーラみたいなものを感じるような気がしないでもない。

 俺の中では当たり前だが、未だに正体不明のたまたま声をかけてきただけのミスターXなのだ。

 ここはアーケード型の商店街の入り口付近で、近くには広めの休憩スペースになっている場所だ。休日こそ家族連れやまとめ買いに来る主婦などで人通りが増えるものの、今日は平日で昼間だ。そんな時間にこんな場所にいるというのは定年退職後の初老か、会社をリストラされた冴えないオヤジくらいだと思われる。

 しかし、そのどちらにも当てはまらなそうな、だけどどちらかといえば後者のこうかもしれないが。

 俺はこの中年の男性を見て考え込んでしまった。


「どうやら興味を持ってもらえたようだね。それじゃ、驚かないで聞いてくれたまえ。実は未来の世界からやってきた20年後の君なんだよ」

「マジか?!」


 20年後の俺だと? これが? それはアニメとかゲームではそういう設定あるよな。かの有名なネコ型ロボットにもそういう設定があったような。いや、それはいいとして。


「本当に?」

「……と言ったら驚くかな?」


 は?

 俺はすぐには理解できなかった。

 そのあと思ったのは「帰っていいかな」と「殴ってもいいかな」だった。

 鉄の意志を持って後者を取り下げた。大体の場合は最初に手をあげた方が負ける場合が多いからだ。冷静に判断できた俺さすが。


「あの、用がないなら帰っていいですか? こちらは暇じゃないんで」

「その反応。やっぱり君には素質がある。どうせ帰ってもやることなんて、その宝くじを清めるだとか、高いところに飾って拝むとか、それくらいなんだろう?」

「うっ!」


 図星を指されて言葉に詰まる俺。


「第一、宝くじなんてものは欲の塊じゃないか。それを清めるだって? 当たりたくないって言っているようなものだぞ」

「さっきから随分と上からものを言うじゃないですか。『最近の若いものは……』みたいな話なら他でやってもらえませんかね」


 のらりくらりとした態度に半分キレかかっていた。それを知ってか知らずか男性は尚も話を続けた。


「そもそも君が宝くじを買おうと思ったのは、ある女の子に振られたからだろう? 名前は……」

「やめろぉ。まさか、本当に未来の俺なのか?」

「いや、違う。はじめましてだね。私はその女の子の関係者だ」

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