宝くじを買ったら見知らぬオジサンに声を掛けられて高額当選を目指すことになりました

望月ひろし

第1話

 世の中には不思議なことが沢山ある。

 例えば今だ。

 科学や常識では計れない超常現象や奇跡というものもあるだろう。

 それらから比べればなんということはないことなのだが、俺からするとそれは十分に驚きに値することだった。


「きみ、きみ。ああ、そこの君だ。今、君はそこの宝くじ売り場で宝くじを買ったね? ばっちり見ていたぞぉ」


 声を掛けて来たのはよれよれのジャケットを着た、いかにも疲れた感じの男性。

 だけど、その声は明るげで張りを感じることができた。だからだろう。服装とは相反してみすぼらしい印象はなかった。

 かといって俺とこの男性とは初対面だ。いきなり声を掛けれれる謂れはない。


 確かに俺は宝くじを買った。いま流行りの数字選択式の宝くじだ。

 なぜ買ったのかって? もちろん当てて人生を変えてやるんだ。


「それがどうしたというんですか? あなたには関係ないでしょう」

「いいや、あるね」

「why?」


 思わず英語になってしまった。

 

「君は若い頃の自分と同じ目をしている。根拠のない野心でギラギラしているね? 宝くじで人生を変えてやるみたいな」

「……!」

「おや、なぜ分かるのかという顔をしているね。言っただろう、若い頃の自分と似ていると」

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