第6話 ……わたくし、お疲れちゃん。

「……学園側の事情も理解出来ますけど。危険な橋を渡ろうとしていますわ」


 甲斐かい学園長も。


 わたくしと同じ危惧きぐをしていますの。


 わざわざ電話で知らせて来るのが……証拠ちゃんですわー!


『理解が早くて助かるよ。これで、月姫も共犯――』

「ふともも♪ もっちもっち♪ 貴方だけのもちリズム♪」


 キャラクターソングを盾に。話を聞き流す作戦ですわ!


 わたくしまでも――隠ぺいの片棒をかつがせるつもりでしょうから!


『もちもち野郎を自認じにんしてるじゃないか!?』


 いいえ! わたくしとの相違点そういてんを知るために。


 あえてラノベを購入、研究した結果ですの!


 敵キャラクターを知り。


 自身の、もっちり加減を知れば。


 どんなキャラクターでも否定出来ますから! 


 名付けて『もっちり兵法へいほう』ですわー!


「もちろん♪ いつでも、もちもち♪ もっちりですわ♪ もっちー!♪」

『アタシが悪かった! だから、その洗脳ソングを歌うな!?』


 おーほほほ! 戦略通り! 


 を上げました! 


「……それより、何がお望みですの?」

『……しばらく推移すいいを見守る為に。警察関係者を派遣してもらいたいのさ』


 なるほど。世間に事が露見ろけんした時の。


 言い分を確保ちゃん! でしょうか?


『条件としては。警察関係者だと看破かんぱされない人材。あらぬ噂も厄介だからね』

「生徒に配慮はいりょしつつですの? 難しいですわ」


 部下の赤城あかぎ警部は……暴力団員みたいで無理ですって!?


 し、失礼ですわ!?


 豪胆ごうたんさは刑事として、長所ですもの!?


『まあ、連絡係で良いのさ。この事態を解決出来る――みたいに優秀な奴なんて簡単には居ないだろ?』

「……まるで、御用聞ごようききみたいな。都合の良くて、暇をしてる。洞察力どうさつりょくも高め」


 わたくし対しても。ストレートに意見を述べる方。


 忖度そんたくされて、情報を隠されては。


 意味がありませんし。


『こちらからの頼みだからね。最終的な決定には従うよ。その時に、連絡をくれるかい?』

「はい、了解ですわ」


 厄介な事になりつつありますわね。


 先の通り魔事件を。


 解決したばかりだと言うのに。


『しかし、月姫? 庶民しょみんの生活に随分と馴染なじんでるじゃないか?』

「はて? そうでしょうか?」


 皆さんが優しく接してくれるからですわ!


 自身の成長とは言えません! ぐぬぬぬ!


『人間的にも……もっちりしてきたwww もっちもっち♪……はっ!? アタシまでおかしくなってきた!?』

「けけけけ! ろん、お仲間歓迎ですわよ! 甲斐かい学園長!」


 妖怪じみた嘲笑ちょうしょうで。お誘いしましたが。


 いつの間にか通話が……逃げましたわね。


「『事件が起きたが。起きていない』こんな、問答もんどうに誰を指名すれば」


 答えは……もう出ています。


 単に、その方に任せるのも。大問題でしょうね。


 かと言って。


 適任者が他に居るかと問われれば。


 残念ながら、居ませんわ。


 関わったら呪われると噂の――御門みかど はらえ


 彼の活躍で。


 前回の通り魔事件に。決着をつけたのだから。


 その犯人が――彼に呪われた結果で。


 あの様な末路に至ったのは。


 限られた関係者しか知らない。


 それだけ、危険な人物。


「……わたくし、お疲れちゃん」


 椅子いすにもたれて。意味無く、天井を見つめる。


 数分後に赤城警部が入室して来ましたが。


 相変わらずの。巫女装束のままで。


 再び、くっころ! な気分を味わってしまったのも。


 言わずもがな! ですわ!


 


 


 

 


  


 


 




 


 

 

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