第14話 レベルアップと少年
翌日、僕は言われた通りにギルドの前で待機していた。
(もうすぐ来る頃だと思うんだけど……)
現在時刻は午前七時五十分。待ち合わせの時間まであと十分ほどある。
とりあえず周囲の人達を見渡していると、遠くの方に見覚えのある姿が見えた。どうやら向こうも僕の存在に気付いたらしく、駆け足でこちらに向かってくる。
「おはようございます、ジークさん」
「おー、早いな」
「いえ、それほどでも」
「よし、全員揃ったところで早速出発するぞ」
「あの、他の二人はまだ来ていないんですか?」
「ん? ああ、あいつらはもう少し遅れてくるはずだ」
「そうなんですか」
「つーわけで、先に出発しようぜ!」
「あっ、待ってください!」
ジークさんはそう言い残すと、一人で走り去っていってしまった。
僕は慌ててその後を追いかける。そして何とか追いつくことが出来た。
「ちょっ……速すぎですよ! 少し休ませてくださいよ!」
「何だ? そんなに疲れたのか?」
「そりゃあ、全力疾走すれば誰でもこうなりますよ……」
「しょうがねえなぁ。じゃあ、これくらいにしておいてやるよ」
そう言って速度を緩めてくれたので、僕はようやく呼吸を整えることができた。
それからしばらく歩き続けた後、ようやく目的の場所に到着したようだ。
「ここが目的地なんですか?」
「ああ、そうだ」
目の前には大きな門があり、その奥に見える建物はまるで城のような大きさだった。
「おい、こっちだぞ」
呆然と立ち尽くしている僕の手を掴み、ジークさんはそのまま中へと入っていく。
するとそこには大勢の人が忙しなく動き回っていた。
「えっと、ここで何をするんですか?」
「まあ、見てろって」
ジークさんはそう言うと、近くにいた人に話しかけ始めた。
「おう、ちょっといいか?」
「はい、何か御用でしょうか?」
「実はこの子に戦闘の仕方を教えてやりたいんだが、大丈夫だよな?」
「そうですね……。一応試験を受けて頂くことになりますが、よろしいですか?」
「ああ、それで頼むわ」
「ではこちらへどうぞ」
受付のお姉さんの後に付いていくと、そのまま訓練場らしき場所に案内された。
そこでは何人かの冒険者風の男女が剣を打ち合っていたり、魔法を撃ち合ったりと様々なことをしていた。
「それではお二人とも、こちらで軽く運動をしてもらいますね」
「わかりました」
「俺は外で見張ってるから、終わったら呼んでくれ」
「はい」
ジークさんはそれだけ言い残して外に出ていった。
残された僕達は早速準備を始めることにした。
まずは体を動かすための簡単な体操をする。
「ふぅ……」
「よし、そんじゃ始めるか」
「お願いします!」
こうして僕達の修行が始まった。
「さっきも言った通り、これからお前には俺と戦ってもらう」
「戦うといっても、模擬戦のようなものですけどね」
「わかってるなら話が早い。とにかく実戦形式でやってみようぜ!」
「はい!」
それからジークさんとの模擬戦が開始された。
最初はお互いに様子を窺うような戦いだったが、すぐに激しい打ち合いに発展した。
(やっぱり強いな……)
正直ここまでとは思っていなかったので驚いた。
だけど、僕だって負けてはいない。
僕は持てる力を全て使ってジークさんの攻撃を防いだり受け流したりしていく。
しばらくの間は互角の戦いが続いたが、徐々に僕の方に余裕が出来てきた。
「なかなかやるじゃねえか」
「まだまだこれからですよ!」
僕はさらに攻撃の手を強めていく。しかし、それでもジークさんの動きについていけるようになっていた。
おそらくこれも『限界突破』の影響だろう。
今ならあの時の感覚を思い出しながら戦うことが出来そうだ。
僕は心の中でステータスを確認する。するとレベルが2に上がっていたことに気付いた。
おそらくだが、レベルアップしたことで身体能力が上がったため、それに反応出来るようになったのだと思われる。
「ほら、今度はこっちからだぜ?」
「ッ!?」
いつの間にか背後に回り込まれていたらしく、僕は慌てて振り返った。
そして次の瞬間、頬に鋭い痛みを感じた。「痛っ!」
どうやら殴られたらしい。まさか一撃貰ってしまうなんて思ってもいなかった。
でもこれで終わりじゃない。ここから反撃だ! そう思った矢先、再び顔面に衝撃を受けた。
「ぐっ……」
「隙だらけだぜ?」
その後も一方的に攻撃を受け続けてしまった。
これはマズいかもしれない。
「よし、一旦休憩するか」
「ありがとうございました……」
結局、一度も攻撃を繰り出すことが出来ずに終わってしまった。
「おい、そんなに落ち込むなって。最初なんだから仕方ないだろ?」
「でも……」
「それよりも、ちゃんと飯を食って休まないとダメだぜ?」
「はい……」
「それと、今の感じを忘れないようにな」
「えっ?」
「だから、もしまたやる機会があった時は同じ失敗をしないようにしろよってことだよ」
「……」
「わかったのか?」
「はい……」
「よーし! それじゃあ飯にしようぜ!」
そう言ってジークさんは食堂に向かって歩き出した。
僕はその後を追いかけるようについて行く。そして食事を済ませた後、部屋に戻って休むことにした。
「今日はこれくらいにしておきましょうか」
「はい、よろしくお願いします」
「それじゃあ、また明日な」
「はい、お疲れ様でした」
そう言ってジークさんと別れた後、僕は宿屋へと向かった。
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