第13話ギフト

「エリーゼ、聞きたいことがあるんだけど」

「なんでしょうお嬢様」

実は私はエリーゼにどうしても聞きたいことがあった。

「町で誰か平民の子と話していたでしょう?あれはだれ?」

闘技場から帰る途中、私は平民の2人の女の子と喋っている彼女を目撃していた。

「ただの知り合いですよ」

「その割には彼女たちはあなたにしきりに感謝を述べていたようだけれど」

「少し困っていた彼女たちを助けましてね」

別に感謝しているならいいのだ、恨まれるよりははるかに良いに違いない、しかしあの感謝の仕方は尋常ではなかった。まるで命を助けられたような……まあいいか。ここは別に深く追求するようなところでもない。

「じゃあ他にあと一つ」

私は闘技場でのマリーヌの戦いを思い出す。

「マリーヌってなんであんなに強いの?あれは明らかに人間じゃないと思ってるんだけど」

「ギフト、について教えていなかったですっけ」

可愛く首を傾げられてもまったく教えられていないが。

「そうですか。では、ギフトというものについてご説明いたします。まずギフトというのは限られた人だけがもらえるものです。魔法と違い持っている人はほとんどいません。ただ、持っている人は爆発的な力を発揮できます。例えば魔法を際限なく使えるほどの魔力を持つことが出来たり、人間には不可能なスピードとパワーを持つことが出来たり。レイ皇子のおばあ様であるマケドニア・マーキュリー様を

覚えていらっしゃいますか?彼女はギフトとして尽きることのない魔力をもちマリーヌ様はギフトとして天才的な身体能力を身に着けたのです」

なるほどな。だからマリーヌは初の特待生として学校に入学もしているのだろう。

「自分がギフト持っているかどうかってどうしたらわかるのかしら?」

「基本的に判定方法はわかりません。しかし、ギフトをもらったのなら自然とその分野で頭角を現すのです。歴史上重要な局面に必ず現れ、深く関わることになる彼らのことを人は”ギフテッド”と呼んでいます」

ギフテッド。マリーヌはその中の一人、では私と彼女は歴史上有名な局面に立ち会っている、ということになるのか。

「エリーゼ、私にギフトってあったりしないのかな?」

「……もしかしたらあるかもしれませんね」

多分ないだろうなあ、と思いながら私はそう聞いたのだがエリーゼに少し意味深な答えを返されて驚いた。

「ギフテッドの中には晩年その才能を開花させた人もいますから」









「アレン、今日はどうしたんだ」

今日はアレン皇子に私ローラとレイ皇子、そしてマリーヌが突然集められていた。

「聞いてもらいたいことがあります」

アレン皇子の手にはなんらかの書類が握られていた。

「どうしたの?もったいぶってないで早く言いなさいよ」

マリーヌは地団駄を踏んで早く結論を言えと催促をする。

「あの地下闘技場、関わっていたのはルーベルト家だった」

ルーベルト家、そう聞いた瞬間レイ皇子が一瞬殺気だった。ルーベルト家、少し聞いたことがある気がする。どこで聞いたんだっけなあ。

「ルーベルト家?そんなことあるわけないじゃない?マリックは殺されたのよ!」

そうか、ルーベルト家といえば呪いで殺された第一の被害者マリックの家なのか。

「ああ、そしてこの国で王家に次いで権力を持っている四つの家の一つだ。例え、この事実を追求したとしてもおいそれと潰せる相手ではない。おとう様の協力が不可欠になるが、今のままでは証拠が足りない……」

王家に次ぐ権力を持つ家、そして呪いで殺された家。この家もこの事件に深く関わっているような気がする。

「でもルーベルト家って結構評判良かったんだよね?良い噂しか聞かないんじゃないの?」

「ローラ、それは跡継ぎのマリックの話だ。現当主の方は王の器を狙っているとか、自分の領地の市民を奴隷のように働かせているとか黒い噂が絶えない人物なんだよ」

そんな黒い噂が絶えない人物ならイメージ通りといえばイメージ通りになるが……

「俺が調査していた家族のほとんどが呪いで殺された一家のことだが」

続いてレイ皇子の報告が続く。

「残されたのは父親と息子だけ、しかも今現在息子は行方不明」

行方不明、もしかしてどこかで呪いで殺されたということなのだろうか。

「詳しいことはわからなかった。市民の事件だとやはり衛兵も詳しく調査していないからな」

三人が落胆した空気がその場で流れる。この二つの事件、どこかで結びついているのかもしくは全くの無関係なのか。それさえもまだ分かっちゃいない。








「どうすればいいと思う、エリーゼ」

行き詰った私はエリーゼにヒントを求めることにした。エリーゼの頭の回転が速いことは私にも十分わかっている。彼女ならばなにか有益なヒントを私達にくれるかもしれない。

「そう、ですね。私も私で考えておきましょう」

しかし結局有益な答えはあまり返っては来なかった。

その日の夜、私は久々に夢を見た。ローラではな権田正三の姿で私は夢の世界におり、そこは真っ白な空間だった。いっそ神々しいぐらいのオーラでその場所は包まれている。

「ゴンダよ、どうやらあの世界で困っているようだな」

どこからか低く威厳に満ちているが人々を安心させるような不思議な声がはるか上空から聞こえてきた。私は自分より圧倒的上位の存在に自然と跪いて敬意を表す。

「はい、じつはある事件に巻き込まれておりまして」

不思議と詳細は語らずとも声の主ならわかってくれるという考えが私の中にあったのだ。

「そうか、ゴンダ。王宮の地下室を訪ねてみるといいだろう。きっとお前の仲間と一緒ならば行くことができるはずだ」

仲間、というのは皇太子の事だろう。確かに皇太子と一緒ならば問題なく入れるはずだ。

「ありがとうございます」

感謝の意志を表す。

「ゴンダ、この国及び世界の危機が迫っている」

声の主は大きな声でそう言った。

「お前がいま追っている事件はその危機と大きく関係があるのだ、急げゴンダ、世界を救える位置にあるのはお前しかいないんだ」










その日は久しぶりに朝すっきりと目が覚めた。しかしその直後に夢で見た内容を思い出す。世界を救う?そんな内容を夢で見るとは少し恥ずかしいな。そう思いながらも、私は夢の中で声の主に言われたように地下へ行くことを決めていた。声の主を疑う気にはなぜかなれなかったからだ。もしかした事件はこれで進展するかもしれない、その期待を胸に私は四人で地下室へと向かった。

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105歳の爺さん、悪役令嬢に転生する 絶対に怯ませたいトゲキッス @yukat0703

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