第10話 デート成功 意外な再会
元旦のお昼前。ショッピングモールは家族連れで賑わい、公共交通機関は帰省ラッシュにより多くの人が押し寄せていた。そんな時、私は遊園地の入場ゲートの前で翠君を待っていた。
「牡丹さん。お待たせしました。」
「大丈夫私もさっき来たところだから。」
「良かった。では、行きましょう。」
翠君は手袋を外して、私の手握った。
「あ、手・・。」
「あっえっと、今日は寒いですし今は仮にも恋人ですし。牡丹さんさえよければこのままでも・・。」
翠君は恥ずかしさか寒さか耳まで真っ赤にしても私の手を放そうとしなかった。
「そうね。今日は寒いしお願いしようかな。」
「はい!行きましょう。」
私は翠君に手を引かれ遊園地へと入っていった。大学生の体力はすごいもので絶叫系を何回乗っても疲れることはなく、すぐに次の乗り物に乗ろうとする。
「翠君。一旦・・一旦休憩しない?」
「あっそうですよね。すみません。近くにお店があるのでそこに入りましょう。今ならディナー前で空いていると思いますし。」
「そうね。そうしましょう。」
私たちは直ぐ近くにあったカフェのようなお店に入った。互いにケーキセットを注文し、注文の品が届いてからしばしの間雑談を楽しんだ。
「遊園地なんて高校生の修学旅行以来だけど、やっぱり楽しいものね。体力が追い付いてないけど。翠君は流石、若者なだけあって体力が有り余ってるわね。羨ましい。」
「若者って牡丹さんもまだ若いじゃないですか。確か25歳ですよね。」
「もう25歳よ。もうちょっとしたらアラサーの仲間入りだし、地元の友達はみんなは示し合わせたかのように結婚していくし。そのせいか最近は実家だけでなく職場でも『朝陽さんは結婚とかしないんですか?』って言われる始末だし。」
「大変なんですね。俺は経験がないので共感はできませんが、牡丹さんが少しでも元気が出るように俺頑張りますね。」
「ありがとう。ケーキも食べ終わったし、そろそろパレードの時間だから行きましょうか。」
コーヒーを飲み干した後、私は支払いを済ませ店を後にした。
「牡丹さん支払ったんですか?いくらですか?半分だしますから。」
「いいの。この間のお出かけの時、払ってもらっんだからこれはそのお礼。」
翠君はあまり納得のいっていない様子だったが、パレードを見るや否や少年のような目にかわった。
「すごいです。キャラクターたちがあんなに近くにいます。牡丹さんすごいです。」
翠君は終始パレードに釘付けになっていた。その光景に私は微笑ましく思い、いけないことだとわかっていながら翠君の写真を撮ってしまった。
「すごかったですね。俺、パレードをあんなに近くで見たの初めてです。」
「そうね。私も初めて。もうすぐ閉園時間だし、マスターのお土産買って帰りましょうか。」
「あ、あの牡丹さん。」
翠君は私の手を掴み、少し自身の方に引いた。
「今日のデ、デートは楽しかったですか?途中、俺テンション上がりすぎてあまりエスコートできてなかったと思いますけど、それでも、楽しんでいただけましたか?」
「もちろん。アトラクションに並んでいる時も会話が途切れないように色々と話しかけてくれたり、私が歩き疲れないように歩幅や速さを合わせてくれたりその他にも細かい気遣いをしてくれてとっても嬉しかったし楽しかったよ。ありがとう。おかげで最高のお正月になったよ。」
「本当ですか。よかった。」
翠君は安堵したのか胸の撫でおろした。
「じゃ、じゃあ。」
「?」
「また、誘ってもいいですか?」
翠君の手がかすかに震えていた。かなり勇気を出してくれたのだろう。私自身、正直飛び跳ねる程嬉しい気持ちでいっぱいであると同時になぜ私なのかという気持ちもあった。今は仮の恋人だから?お店の常連だから?昔からネガティブな考えをしてしまう癖があり頭をよぎるが、今だけは翠君の言葉に首を縦に振ってもバチは当たらないよね。
「うん。楽しみに待ってるね。」
「はい。さぁマスターのお土産買いましょ。」
翠君は再び私の手を握って引いた。
「お土産は逃げたりしないわよ。」
「もしかして牡丹?」
お土産屋に向かっている最中、背後から聞きなれた声が聞こえた。
「お母さん?」
初めての一目惚れ ゆうさん @kjasdbfcluink
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