第9話 喫茶店外の年末
12月31日大晦日。いつもの喫茶店はお昼ごろには閉まるということだったので、自宅の掃除をしていたはずだった。だが、なぜか今私は会社の同僚たちと少し離れたショッピングモールに来ており、かれこれ3時間近く服やメイク道具などの買い物をしていた。
「ちょっと
「当たり前でしょ。年末セールで安くなってるんだから買わないと。それに冬のボーナスも入ったんだし。」
「そんなこと言って美咲はボーナスのたびに散財して貯金とか大丈夫なの?」
「この子その辺意外とちゃんとしてるから貯金尽きたことないのよね。一時期、怪しいバイトしてないか疑ってた。」
「そんなことしないわよ。莉理は私をなんだと思ってるのよ。」
その後、ショッピングモール内にあるカフェで少し休憩することにした。
「それにしてもいっぱい買ったわね美咲。服に化粧品、靴まで買って。」
「まぁね。これがストレス発散にもなるしね。それより、牡丹と莉理は何も買ってないけど欲しいものないの?」
「私は別にいいかな。莉理は?」
「私はもう買ったよ。」
「いつの間に。何買ったの?」
莉理はスマホの画面を私たちに見せてきた。
「これ。」
「なにこれパソコン?莉理、自分のパソコン持ってたでしょ壊れたの?」
「違う。これはゲーミングPC。前から欲しかったのやっと買えた。」
「良かったじゃん。・・ってたっか!こんなにするの。」
私は莉理が買ったパソコンの値段を見て目を疑った。パソコンだけで30万近くしたからだ。
「パソコンだけで30万。すごいね。」
「周辺機器も買ったから合計でいったらもっとしてるよ。これを買うためににあのくそ忙しいクリスマスを耐えたといっても過言じゃない。」
莉理は自慢げにグーサインをしていた。
「牡丹も莉理みたいに何か趣味か何か見つけたほうがいいわよ。あなた休日何もしてないでしょ。服もいつも適当だし。」
「大丈夫でしょ。牡丹、最近は行きつけの喫茶店の店員さんにお熱だし。」
「!そうなの。」
「ちょっと莉理ちゃ~ん。何言ってるのかな~。」
私は莉理の頬を引っ張りながら問い詰めた。
「いらぁいよ。だって、昼休みはコンビニご飯だったのに最近は毎日食べに出てるし、クリスマスの打ち上げすぐに帰ったし。それに、現場目撃したし。」
莉理は喫茶店で私と翠君が話している写真を見せてきた。
「あら、なかなかのイケメンじゃない。あの牡丹にも遂に春が来たのね。根っからのインドアの牡丹に。」
ここから美咲の冷やかしと質問攻めが始まった。30分近く質問攻めにあい、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
「恋愛に興味なかったあの牡丹が年下男子にお熱とは。」
「別に・・そんなんじゃ。」
「ちなみに明日のご予定は?」
「そ、その子と・・一緒に・・遊園地に行きます。」
「美咲。」
「そうね、こうしちゃいられないわ。」
美咲と莉理は急に立ち上がり、すぐさま会計を済ませて店を出た。
「ちょっとどこ行くのよ。」
美咲と莉理は無言のまま、先程美咲が買い物していた服屋の前まで来た。
「いらっしゃいませ。先程来られたお客様ですね。どうかなさいましたか?」
「この子明日、気になる子と遊園地デートなんです。」
美咲が私の肩を掴んで店員さんと見つめ合うと、何か通じ合ったかのように店員さんは服を選びだした。すぐさま数パターンの服を選んだ店員さんは私を試着室に案内した。
「まずはこの服を着てみてください。」
そこから、1時間近く試着を繰り返した。服を着ては美咲と店員さんがチェックして着替えてを繰り返して10着以上は試着しただろう。なぜか莉理もノリノリで着替えるたびに私の写真を撮っていた。
結局、店員さんの一番のおすすめを購入して店を後にした。
「なんかどっと疲れた。結局日が暮れるまでかかったし。」
「まぁまぁ。牡丹、外出用の服はあまり持ってなかったでしょ。せっかくのデートなんだし。」
「似合ってたよ。これならあの子も落ちるよ。後これ。」
莉理は小さな紙袋を手渡してきた。
「何これ?」
「私と美咲から。告白して来いとは言わないから楽しんでこい。」
紙袋を開けると、ネックレスが1つ入っていた。
「それなら今日買った服にも合うし、攻めすぎてないから。」
「ありがとう。2人とも。」
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