第7話 翠の決断
お母さんからの突然の伝言により私は驚きを隠せなかった。
「ちょっと待って。お見合いって、それよりこの人だれ?」
「地元の弁護士事務所の弁護士さんらしいよ。年齢は30歳、お相手は承認済みだって。」
「そんなお見合いって言ったって何が何でも急過ぎるよ。」
「私もそう思ったよ。だから、期限を設けようって言ったの。私は来年いっぱいって提案したんだけどそれは長すぎるって言って4月までにってなった。」
「そんな。」
「おはようございます。って朝陽さんどうしたんですか?元気ないですね。」
突然のことに落ち込んでいると、翠君が喫茶店にやってきた。
「翠ちゃんどうしたの?今日はお休みのはずよ。」
「ちょっと充電器を忘れ物しちゃって。近くまで来たので取りに来たんですけど。どうかしたんですか?」
「ううん、なんでもないよ。」
「そうですか。ならいいんですけど。」
「翠ちゃんせっかく来たんだからコーヒー飲んでいきなさい。」
「いいんですか?では、いただきます。」
翠君は私の隣に座り、コーヒーを飲み始めた。私は急に4日前のことを思い出して恥ずかしくなってしまった。
「あのマスターさん、あの2人ってまさかですけど。」
「流石ね。でも、本人たちはそれに気づいてないけどね。」
「なるほど。ねぇ翠くんって言ったけ。」
神楽がなにやらにやつきながら翠君に話しかけてきた。私は神楽の顔を見て嫌な予感がした。神楽がにやつきながら話しかけるときは悪いことを思いついたときだからだ。
「はい、えっとすみません。お名前は?」
「私は神楽、牡丹の幼馴染よ。それで一つお願いがあるんだけど。」
「なんですか?」
「実はね、4月までに牡丹に彼氏ができないとお見合いさせられてしまうの。幼馴染としては望んでないお見合いはしてほしくない。だから、もし翠君さえよかったら牡丹の彼氏役として挨拶してくれない?」
神楽の突然のお願いに、翠君は理解が追い付いていないのかぽかんとしていた。私は神楽を連れて席から少し離れた。
「ちょっと神楽!急に何言ってるのよ。翠君困ってたじゃない。」
「何ってお見合いは嫌でしょ。だったら本当に彼氏を作るか彼氏役として誰かを紹介するしかないわよ。さっきも言ったけど、私としても牡丹が望んでないお見合いしてほしくないし。それにあのお見合い相手あまりよくない噂もあるし。」
「よくない噂?」
先程までにやけていた神楽の顔もどよんと曇った。
「牡丹のお見合い相手の人、バツイチらしいんだけど。前の奥さんとの離婚理由がその人の浮気とDVだったらしいの。」
「なんでそんな人がお見合い相手なのよ。お母さんは気づいてないの?」
「そうかもね。なんかおじさんの会社のことでお世話になったらしくて飲み会の時に牡丹の写真を見せたら一目惚れしたんだって。おじさんも娘でよかったらって言ってお見合いには前向きみたい。」
「お父さんまで。わかった。とりあえず、お母さんたちにはこっちから連絡しておく。教えてくれてありがとう。」
「本当よ。もうすぐ新幹線の時間だから帰るわ。悔いのないほうを自分で選びなさい。あわよくば、アタックしてみるのも一つの手かもしれないわよ。」
「ちょっと神楽!」
「それではもうすぐ新幹線の時間なので帰りますね。コーヒーごちそうさまでした。」
神楽は足早に帰っていった。
「また大変なことになったわね。それでどうするのお二人さん。」
「どうするって言われても急なことですぐに決めるのは・・。一応4月までっていう期限がありますからそれまでにいい案を考えます。ごめんね翠君。こんなことに巻き込んじゃって。」
「あの、朝陽さんってその人とお見合いはしたくないんですか?」
翠君は陰険な面持ちで私に聞いてきた。
「まぁしたくないかな。流石に恋愛は自由にさせてほしいし、仕事も順調だから地元に帰るのは嫌だし。」
「わかりました。では、自分が彼氏役やります。」
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