第6話 突然のカウントダウン

翠君とデートした日から4日後、喫茶店が通常通り営業しているというので私はいつも通り足を運んでいた。


 「でも、マスター頑張りますよね。明日大晦日ですよ。」


 「みんなが私に会いたいって言ってくれるからね。期待には応えたいし、私もみんなに会いたいしね。牡丹ちゃんは私に会いたくないのかしら?」


 「まさか、会えて嬉しいですよ。年末なんて家でごろごろしてるだけですし。」


 「ありがとう。でも、牡丹ちゃんは私よりもっと会いたい人いるでしょ。で、どうだったのよデートは?」


 「からかわないでくださいよ。普通に楽しかったですし、普段とは違う彼の様子が見れて嬉しかったですよ。」


私は彼とのデートを思い出し、にやけを抑えるのに必死だった。そんな私を見てマスターは、ずっとにやけていた。


 「相当楽しかったのね。でも、残念ながら今日翠ちゃんは来ないわよ。まぁゆっくりしていきなさい。私とガールズトークを楽しみましょ。」

 

 「もう、本当にからかうのが好きですよねマスターって。」


 「あら、私はただ恋する乙女を応援しているだけよ。」


その後、少しの時間マスターとの会話やコーヒーを楽しんだ。話に夢中になっていると、辺りはだんだんと暗くなっていった。


 「あら、もうこんな時間なのね。最近は暗くなるのが早いわね。」


 「まぁもう年末ですからね。そろそろお暇しようかね。」


 「あっ!いた!こんなところにいたのね牡丹。」


私が帰ろうと支度をしていると、1人の女性が入店してきた。私はその声で入店してきた女性が誰か一発で分かった。


 「なんでここがわかったのよ。神楽かぐら。」


 「いらっしゃい。あなた牡丹ちゃんの知り合い?」


 「あっはい。」


 「そうなのね。まぁ一旦座りなさいな。牡丹ちゃんももう少しゆっくりしていきなさい。」


私と神楽は席に座り、マスターはサービスと言ってコーヒーを出してくれた。


 「ありがとうございます。」


 「いただきます。」

 

コーヒーを飲んで落ち着いたところで神楽はマスターに自己紹介をした。


 「お騒がせしてすみません。私は牡丹の幼馴染の紅花神楽べにばなかぐらと言います。今は地元の市役所に勤めています。」


 「神楽ちゃんっていうのね。今日は何でここに来たの?」


 「今日はこの子に用があってこっちまで来たんです。」


神楽は私の頬をつねり、引っ張りながら答えた。


 「ちょっと神楽痛いんだけど。」


 「うるさいわよ牡丹。だいたいあなたが全然電話に出なかったから大変だったんだからね。おばさんにあなたの住所を聞いて家に行ったのに家にはいないし。」


 「そういえば今日はお昼前からここにいたから。」


 「あんたは昔っからそうよね。せめて、電話は出なさい。どんだけ探し回ったと思ってるの。」


 「ごめんって。マスターとの話が盛り上がっちゃって。」


 「まぁまぁ神楽ちゃん。コーヒーでも飲んで落ち着きなさい。」


マスターが仲裁に入ってくれて、神楽はコーヒーを飲み干して一息ついた。


 「神楽、今日うちに泊まっていくの?」


 「まさか、家に旦那と子供たちを置いてきてるのよ。帰るわ。」


 「あら、神楽ちゃんって旦那さんとお子さんがいるのね。」


 「はい、3年前に結婚して翌年に子供を出産しました。男の子と女の子の双子です。」


 「いいわね賑やかそうで。」


 「まぁ旦那も育児やってくれているのでなんとか頑張れてますね。多分もうすぐイヤイヤ期に入るのでそこが心配なですけど。」


 「神楽ちゃんの旦那さんっておいくつ?」


 「私の2歳年上なので27歳です。って私の話はいいんですよ。今日は牡丹に話があってきたのよ。」


 「牡丹、あなた最近おばさんからの電話あまり出ないでしょ。」


 「だって、出るたびに結婚はまだかとか彼氏はいないのかとか聞かれるんだもん。お母さんは好きだけど流石にまいっちゃうよ。」


 「そうかもしれないけど。おばさんから伝言を預かってるわよ。」


 「お母さんから?」


神楽はカバンから1枚の写真を取り出して私の前に置いた。


 「来年の4月までに彼氏ができなかった場合、この人とお見合いをしてもらいます。って。」

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