6−9
和やかに挨拶を交わした2人。
さらにユウヒは狼に近寄って、頭を撫でる。
「ムーンも久しぶり」
狼はユウヒに頬を寄せる。
ユウヒは狼の頭を撫でる。
鞄から頭をヒョコンとだした兎が狼の上の少年に向かって耳をピコピコさせていた。
戦場にそぐわないほんわかとした雰囲気に、周りの兵士たちだけではなくゴリラゴーレムも見て止まる。
ポカーンと呆れているようにすら見える。
「ユウヒ、配達?」
「うん、アサヒは傭兵?」
「うん」
2人は短く言葉を交わし合う。
その様子を見ていた領主はその2人に声をかけた。
「お前ら、知り合いか?」
「「双子」」
言われて呆れた領主だが、狼の上にいるアサヒと呼ばれた少年に声をかけた。
「お前、傭兵なのか」
「うん、そう」
「今、雇えるか」
「仕事内容は?」
「あのゴーレムをなんとかしたい、できるか?」
「できるよ。金貨200」
「問題無い、頼む」
アサヒと領主は流れるように話をまとめた。
兵士達に向かって叫ぶ。
「狼は味方だ!ゴーレムを狼に任せて陣形を立て直せ!」
指示に我に返った兵士達は即座に対応して陣形を立て直し、怪我人を回収しようとする。
アサヒはその様子を見ながらユウヒに声をかける。
「ユウヒ、アリス貸して」
「うん、どうぞ」
ユウヒは鞄から兎を取り出すと、両手でアサヒに向かって放り投げた。
ひゅーんと、飛んでいく兎をアサヒはキャッチし片手で支える。
「僕、あのゴリラの相手してくる」
「じゃあ、ボクは兵隊さんを山小屋に届けるね」
「うん、じゃあ後で」
「後で」
言うと、アサヒの乗った狼は方向転換して今度はゴリラの元にまた走り寄っていった。
アサヒの乗った狼はゴリラに向かって飛び掛かって前脚の爪を叩きつける。
ガィンと金属音が響き渡り少しだけよろめくが、すぐさま体勢を立て直して狼に向き直った。
先ほどまでは狼を気にしていなかった様子だったが攻撃されたことで敵だとみなした様子で、今度はゴリラと狼が向き合う。
狼が再び攻撃し、ゴリラは向かってくる狼をはたき落とそうと腕を振り回す。
狼が爪で一撃加えるが今度は効かない。
反撃するゴリラの腕は狼がさらりと回避して距離をとって正対する。
狼がちょっかいを出して、ゴリラが捕らえられない展開が続く。
その中でも狼は少しずつ場所を変えていき、ゴリラの立ち位置を怪我人や山小屋から遠ざけていた。
狼とゴリラが戦闘しながら、少しずつ離れていくのを見た兵士達。
「今のうちだ」
「おい、大丈夫か、動けるか」
怪我をして動けない兵士の救出に向かい、引きずって距離をとる。
動ける兵士は狼とゴリラの戦闘を見ながら、戦闘に巻き込まれないように様子を見守っている。
陣形立て直しに向かっている状況を確認した隊長。
領主の元に走り寄って合流を果たし、手短に状況確認と作戦会議を行う。
「領主様、これはどういうことですか?」
「わからんが、運び屋の兄妹だったらしい。傭兵だと。ゴリラをなんとかする契約した」
「では、この間に大元をなんとかしたいですね」
「そうだ、運び屋」
「はい」
領主が呼びかけると珍しくスムーズに返事するユウヒ。
すぐに領主はユウヒに用件を伝える。
「お前、何かいい手はないか?」
「山小屋の中に連れて行けばいいですか?」
「連れて行けるのか?」
「はい、2人ならいけますよ。運び屋なので」
即答するユウヒ。
その答えを聞いて、領主と隊長が顔を見合わせて頷いた。
「では、頼む」
「請け負いました、じゃあ、届けますね」
ユウヒは依頼を受けて答えた。
しかし、山小屋は依然結界石で守られており、中に入ることはできない。
方法がわからない領主がユウヒに尋ねる。
「どうやって?」
「とりあえず」
「とりあえず?」
領主と隊長がなんとなく息を呑む。
「走ります」
真顔でユウヒは2人につげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます