#2 不法投棄の冷蔵庫

 空き地に、真っ白な石碑のごとく不法投棄の冷蔵庫が突っ立っていた。


 早朝、散歩に出て、「ンッ…、ンッ…」と声がするので冷蔵庫の裏をのぞくと正体不明のジジイが野グソをしていた。気が付けば半径30mほどに渡ってウンコくさい。不愉快だったので口論になるも、相手がキモのすわった奴だったので言い負かされて私は顔を真っ赤にしてその場を去った。


 翌日、また冷蔵庫の裏をのぞくと動物のお墓のように土がモッコリしていて、突き刺さった木の板に私が昔飼っていたすべての猫の名前が書かれていた。なつかしく思った私は、死んだペットに出会えるという伝説の虹の橋を探して、雨上がりの町をかけずり回った。午後、その話を臨床心理士の女に話した。その女はイケてる。なのにカウンセリングは一時間でたったの600円。私はメンヘラトークをしながら興奮して勃起する。女の耳につまらない話を垂れ流して勃起。排泄。一時間600円。精神医学の勝利。

 帰りに寄ったコンビニでバイトのJKがレジに入った時、『デラベッピン』とコンドームを買った。


  そして夜

  真っ赤な月が昇り

  ねぼけてウェイクアップ

  窓の外を見れば

  空き地にケムリが上がっているじゃないか

  私は裸足で駆け出した

  ああ、駆け出した、駆け出した


 不法投棄の冷蔵庫がブゥウゥウゥウゥーーーーンとうなりを上げている。「電気が通っているみたい」。頬を寄せると、ほのかに温かい。扉を開けて、深夜の台所のように光があふれて、中はドクンドクンと脈動して肉がうねっている。私の体は吸い寄せられる。ヒダをかきわけて、冷蔵庫の内側に沈んでいく。ズブズブと。心地いい。もうおしまいだ。なぜだか知らないがフワッと、昔飼っていた猫のニオイがした。


to be continued...

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ファイアソード がらくた教授 @garakutakyoujyu

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