ファイアソード

がらくた教授

#1 チューリップに挿入する

 市民プールで、当時45歳の母親が、ヒョウ柄のビキニを着て来た時ほどイヤな感じのした事はない。私は10歳ぐらいだったが、帰りの車の中で350mlの缶コーラを飲み干すことができず、怒った父が代わりに飲んだ。胃袋が小さかったと思う。


 新興住宅地の雑草だらけの空き地にピョコッと、二本の太くて黒い管が生えていた。たぶん便器と海をつなぐためのチューブだが、いつかそれを性的な目的に使えたらいいと思っていた。図工の時間、私は流木に『海賊船』とタイトルを付けて、そのまま無加工で提出した。それが図工の教師にウケた。調子に乗って、マストやオールや操縦席を自作して木工ボンドで貼り付けた。教師は私を軽蔑した。


 このままではラチがあかず、私はルーブル美術館に直行した。それは東京ドームぐらい巨大な一頭の鳥の肋骨を利用した建物だった。広大な部屋のまんなかにポツンと小さなチューリップが展示されていて、私はそれにペニスを挿入しなければならない。私は近付き、チューリップにペニスをあてがった。しかしニュルニュルと滑って挿入できない。勃起が不完全なのだ。いつのまにか、真っ黒な警備員たちが距離をおいて私を取り囲んでいる。焦って挿入しようとするがニュルニュルと滑る。警備員たちがにじりよってくる。焦れば焦るほどフニャる。もう警備員たちの鼻息が聞こえる。しかし彼らは私を逮捕しない。ただジッと見ている。魔法にかかったように不完全な勃起。小学校の制服の半ズボンの薄い生地を押し上げる若いペニスのために、私は制服を拒否して、ジーパンを履いて登校した。掟破りに対して教師は怒り狂った。私は学校が好きだったのに、勃起を隠すために、規則に反抗した。それほどまでに英雄的なはずのペニスが今、不完全な勃起。そして真っ黒な警備員たちがいつまでもそれを見つめ続けていた。


to be continued...

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