第67話 ドリドリ団との戦い、にもならないよね、そりゃそうだ。

「全艦砲撃始め!」


 クレアの命令により攻撃が始まる。


 今回は銀河端っこの辺境の無人星系でもあるので、やりたい放題出来るので遠慮は無しだ。


 サヨを中心とした数百万隻の艦隊からの砲撃が、惑星やら衛星やら敵が隠れている可能性のある場所全てに降り注いでいる。


 ここは銀河の外れ、アリアード皇国ですらない辺境域で、二つの恒星がお互いに影響をしあって中心部で回っている恒星系だ。


 地球出身者からすると太陽が二個? とも思うかもしれないが、宇宙的に見るとそれほど珍しくもない。


 ドリドリ団からの離反者……もとい、契約を解消したスターデさんからの様々な情報提供により、皇国軍はドリドリ団を追い詰めた。


 辺境域でのドリシティの逃亡経路の予想、それからドリシティが持つステルス技術の解析データやら、そのステルス状態を見破る為の新型レーダーの技術提供等をスターデさんから貰ったアリアード皇国軍は張り切った。


 もう、怒涛の勢いで皇国軍とドリドリ団のドリシティが追いかけっこをする事しばし。


 皇国軍が銀河の端っこにドリシティを追い詰めたという話をサヨから聞いたのが少し前の事。


 そして皇国軍から俺に救援依頼が来た。

 例の如くまた適応体が沢山集まっているんじゃぁ、しょうがないよね……。


 適応体を誘引する技術がある彼らを追い詰めたのはいいけれど、その太陽が二つの二連恒星系には適応体を集めていた様で……。


 ドリドリ団は適応体を集めるだけでは無く、操る術も手に入れたのかなぁ? だってさぁ。


「前回よりは適応体が少な目だけどさ、それでもこの量の適応体がウヨウヨしている恒星系内に潜伏するって可能なのか? ドリドリ団は適応体を操っている可能性あるかな?」


「それは無いと思うよシマきゅんっ!」


 いつものサヨの戦闘指揮室に、今日はロリっ子ドワーフ研究者のスターデさんにもお越しいただいていて。


 クレアは前回と同じく総指揮を取る為にお立ち台に居るので、クレア用の椅子にスターデさんが座っている。


 彼女の今の見た目なのだが、少し前にやった面接がいつの間にかお見合いに変わった時とは変わっていて。

 服がジャージから可愛いワンピースに、その上から白衣なのは同じで。


 ボサボサだった肩までの髪の毛は美容師によって整えられているが、目が隠れ気味なのは変わらずだ。

 まぁぱっと見で可愛くはなっていると思う、さすが美容師4姉妹の仕事だなぁとは思った。


 それはまぁよいのだが、俺の呼び名は語尾に『きゅんっ』を付ける事が彼女の中で決まってしまったのだろうか。


『そう思うに至る根拠はあるのでしょうか? スターデさん』


 サヨがスターデさんに質問をしている内容は、俺の聞きたい事でもあった。


「うん、僕が古巣に……ドリドリ? に居た頃でも適応体を引き寄せる事しか出来なかったのだから、操るなんて技術をこの短い期間でどうにかするなんて事は、とてもじゃないけど無理だと思うな!」


「でもさスターデさん、引き寄せる事が出来るのなら操る研究くらい前々からしてたんじゃねーかな? てーか操るのが無理ならこの二連恒星系に逃げ込んだっていうドリドリ団はどうなっちゃうのさ?」


 集結している適応体の数が前回より半分以下くらいだと予想されているけども、そんな数がウヨウヨしている星系内に隠れていられるとは思わないんだけどな。


 スターデさんは、その小さいロリっ子体型を大きく動かし、身振り手振りを使いながら説明をしてくれる。


「シマきゅんっの言いたい事も判るよ? でもね、あの適応体を集める技術の基礎部分は僕が研究した物だからね、彼らが自身の力で適応体を操る技術をどうこうするなら後数百年は必要だと思うんだよ」


 え?


「あの技術ってスターデさんが開発したの? ……えーと目的は?」


 スターデさんは戦闘関係の技術を表に出してないって思ってたんだけども。


「適応体は味方の数が少ないと隠れちゃう事も多いからさ、それを炙り出すのに使えるかなーって、人類に仇成す害虫を効率よく集めて排除出来たら楽だし、貴重な資源も獲得出来てお得かなぁなんて思ったのだけどね……僕の思惑とは違う使い方をされちゃったみたいだよね……申し訳ない……」


 スターデさんは、その目隠れロリっ子姿でしょんぼりと椅子に深く座り込んでしまった。


 あーそういう事か、技術ってのは開発者の思惑と違った使い方をされるなんて事は良くある事だよなぁ。


「あー、害虫を一か所に集める技術と考えれば問題は無いよね、それをあんな風に使うドリドリ団が悪いな、うんうん」


 俺が精一杯のフォロー的な事をスターデさんに向けて言っていると。


『なるほど……確かに低威力で使えば擬態状態で隠れている適応体を見つけるのが楽になりそうですね……集めれば狩るのも楽ですし……素晴らしい技術です! 是非後程、誘因装置に関する情報をご提供下さい!』


 サヨが自分の椅子から立ち上がり俺を挟んだ反対側まで回り込んでスターデさんに詰め寄っている。


「わわ! え? え? う、うん、シマきゅんっが許可を出すのなら構わないけども……そこまで欲しいものかな?」


 サヨに両手を包み込まれるように握られているスターデさんが狼狽しているけども、俺にはサヨの気持ちが判る。


 前回のドリドリ団の罠の時は結局その技術は手に入らなかったし、サヨにしてみたらご馳走が勝手に集まってくれる機械を作れるって事だものな……。


 惑星とかにへばりついて擬態をする適応体は、サヨでも見つけるのが面倒っぽいからねぇ……あいつらも馬鹿じゃないから少数だと逃げ隠れする事もあるって話だしな。


 まぁ俺らがこんな会話をしている間にも戦闘は続いている。


 ドリドリ団が誘因装置で集めたであろう適応体を、クレアが細かな采配にて丁寧に倒しつつ、適応体以外の小衛星やら惑星やら罠を仕込めそうな場所は、遠距離から超弩級要塞での砲撃でぶち壊している。


 惑星はサヨが吸収するのでもいいかと思っていたんだけど……今回は超弩級要塞のブレインユニット達のストレス発散の的になって貰っている。


 勿論罠の炙り出しも兼ねてね。


「お、この恒星系で最初の惑星が壊れたな、破片もなるべく細かく壊してから回収かね」


 俺達の前の空間投影モニターに映し出されている光景により、惑星が砲撃によって崩壊していくのが確認出来る。


『……お煎餅を粉にしてから食べる様な物なんですが……まぁお煎餅の中にワサビを仕掛けられている可能性を考えたらこの処理も仕方ないでしょうか……勿体ない……』


 今だにスターデさんの側にいるサヨが、そうやってポソリと呟いたが。


 サヨにしてみたら惑星の崩壊も一枚の煎餅が割れるがごとしか……サヨさんだしな、そんなもんかも。


「シマきゅんっの配下の攻撃力が圧倒的だよね……この戦力だけでも皇国を片手間で征服出来るよね?」


 スターデさんはあまり驚いている様には見えないけども、隣の席からそんな事を言って来る。


 征服? そんな事して何が楽しいのさ……。


「世界征服なんてのはそれを為した後の統治が大変だと思うんだ、俺はそんな面倒事をやりたくないの」


 と、前々から思っている事をスターデさんにも伝えておく。


 それにさぁ……アリアード皇国がアホみたいな国だったら革命なりなんなりするかもだけどさ。


 そもそも支配階級全員がアホだったら銀河に多種族の統一国家なんて樹立出来てないんだよなぁ……まぁ一部の貴族はアホになっちゃってたみたいだったけど……。


 スターデさんは目を瞑り、少し何かを考えた後に再度俺の方を見て来ると。


「……僕はここに来れて本当に良かったと思っているよ……圧倒的な遺産の力を側で観察する事が出来るし、ご飯は美味しいし、研究予算は潤沢だし、最新の機器は揃っているし、周りに居る人達の性格は良いし……それに……み、未来のだ、だんな様は出来るし……」


 最後の方のセリフを恥ずかしそうに言う、ロリっ子目隠れドワーフのスターデさんだった。


「……これからもよろしくスターデさん」


 優秀で可愛くて面白い人が、納得してここに居てくれるのなら有難い話だよね。



 ……。



 ……。



 ――



「それで……僕はいつまでサヨさんに手を握られているのだろうか?」


「ん? たぶん適応体の誘因装置の情報を貰えるまで、ずっとそのままだろうと思うよスターデさん」


 俺は未だに両手を握られているスターデさんに、そう教えてあげる事にした。


 だってサヨの無表情に見える表情を見るに、すっごいワクワクしてるんだもん、あれは止まらないよね。


「ええ!? さっきのあれって、今すぐって話だったの!?」

『ワクテカ』


 俺は狼狽するスターデさんとサヨのやり取りは放置する事にして、作戦の状況を見守る仕事に移る事にした。


 だってさ、さっきからクレアがたまにこっちをチラチラとお立ち台から見て来るんだもの。

 俺らが作戦にあんまり関係ない雑談とかしていたから寂しかったのかもね。


 なので、おれは凛々しく艦隊を指揮しているクレアに、笑顔で手を振りつつ応援をしてあげる。


 すると、さっきまで少しショボンと落ち込んでいたクレアのフサフサの尻尾が、また元気よく動き出すのであった。



 ……判りやすくて可愛いなぁ……休憩時間になったらチュッチュしながら頑張った事を褒めてあげないとね。


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