第66話 踊り

「え……もっかい言って貰っていいか?」


『学園都市の研究所が三回目の爆発を起こしました』



 ……。



「それはまたあの人の?」


『怪我人等は一切出てませんので、問題は無いかと?』


「……いやまぁ前回も前々回も怪我人とか出てないんだが、もう少しこう……爆発しない研究のやり方にならんのかいな」


『本人が張り切ってますので何とも……よっぽどシマ様の婚約者になった事が嬉しかったのでしょうか?』


「どうなんだろうなぁ?」


 今俺はサヨと一緒に観光惑星の視察に来ていた所だったんだが、学園都市の研究所の一部で三度目の爆発が起きたと言う報告を受けている。


 ドリドリ団から離反をした……本人が言うには契約を解消したスターデさんが、爆発を起こしたという話だ。


 見た目小学生なロリっ子ドワーフな彼女だが、うちに受け入れる前に話をしておこうって事だったのに、なぜかサヨにお見合いという事にされて、気付いたら俺の婚約者という事になっていた。


 スターデさんはそういう事に慣れてないのか、いきなり嫁は無理だと言い始め。


 尚且つ皇国からの観察処分中なので婚約者としてならと、自分の手の先を合わせつつモジモジさせながらそういった提案をして来た。


 まずは恋人らしくデートを重ねるべきだそうだ……。


 スターデさんが、あの視覚がどうのやら空気の振動がどうやらな、エロっぽい研究をしたのは自分がそういう事に慣れてないからなのかなーと思った。


 年齢だけで言うのなら俺の婆ちゃんより……いやこういう考え方は良く無いな。


 そうしてスターデさんとは今度デートでもという話を最後に、面接……お見合いが終わったのだけど。


 その後の彼女の仕事への張り切り方がすごくて、研究所が何度も爆発をしている。


 まぁ、怪我人が出ないならいいんだけどねぇ……それを防げるのなら爆発そのものを防いで欲しい所だ。


 学園都市で働き始めたスターデさんは、女子学生達の受けもいいらしい。

 というか色々な研究室に顔を出しては、有益なアドバイスをしていく教授として、学生達に人気があるっぽい。


 ちびっこいのにやり手なんだよなぁあの人、ドリドリ団に居た頃はずっと一人で研究していたって話なのにな……。


 古巣では他の奴らに助言とかした事ないとか言ってたし、ドリドリ団の連中とは交流も無い冷たい関係だったみたいだね。



 それはさておき、今俺は枯山水をメインにした鉱物系人種向けのテーマパークの視察をしている。


 そして爆発報告を受けた事で、ちょっと休憩という事にして立ち止まり。

 各所に設置してあるベンチに座ると。


 俺の横へと腰掛けて来たサヨに。


「なぁサヨ」


『なんですかシマ様』


「こないだのスターデさんとの面接を無理やりお見合いに仕立てたのって、そんなに彼女が欲しかったのか?」


『……』


「……」


『……そうですね、新たな物を生み出す才能に関しては私には無いですし、彼女の性格や考え方を調べていくうちにシマ様にも合いそうでしたから、一石二鳥かなと』


「……どっちの鳥が先だ?」


『……勿論シマ様との相性です』




「そうか……ならいい」


『はい』



 ……。



 ……。



 まったく……。


「とはいえ事前に相談しなかったサヨにはお仕置きな」


『え? 私もメイド長の恰好をしないといけませんか?』


「そっちじゃないわい! 次のみんなでやる予定だったお肌プルプルプールでのBBQ大会では裏方としてずっと焼きそば制作係な」


『ええ! それは酷いですよシマ様! 折角皆を楽しませる為のサプライズを用意しているのに!』



 ……なぜサプライズにしたがるのだこいつは。



「だーめ、何を用意していたのか知らんがサヨには焼きそばを全員分制作して貰う、アンドロイド用の調理用プログラムを利用すりゃ楽に出来るんだろうけどな」


『そうですけど……くぅっ……折角シマ様の好きそうなポヨンポヨンダンスを姉妹と一緒に披露をしようと思っていたのですが……残念です、諦める事にします』


 ……ポヨンポヨン? なに、その心がウキウキワクワクするワード、そしてダンス? どういうダンスなの?


 ちょっと気になるなぁ。


「別にサヨ抜きで披露をして貰ってもいいぜ」


『いえいえ、あれは姉妹で揃って披露をする予定でしたので、永久封印する事にします』



「いや、次の機会で出してもいいし、永久に封印する事は無いんじゃないか?」


『冷静に考えるとポヨンポヨンはちょっと恥ずかしかったかもしれませんし、封印が妥当かもしれません』



「……ちなみにどんな感じ?」


『サプライズの内容を事前に言ってしまっては、おっと、もう披露する事が無いので言う意味なかったですね、ニッコリ』



「こいつは……むぐぐぐぐ……そこまで言ったら教えてくれてもいいだろう!?」


『罰を受ける身で芸の披露は出来ませんので』



「あーじゃぁもうお仕置きはいいよ、反省してくれたらそれでいいから!」


『そんな訳にいきません、一度言い出した事をそんな簡単に翻してはいけませんよシマ様』



「じゃぁどうすりゃいいんだよ……ポヨンポヨン……」


『お仕置きである罰をやる事は確定です、一度決めた訳ですから』



「まぁ……そうだな……ポヨンポヨン……」


『なので、芸を披露する私ではなくシマ様が焼きそばを作れば、サプライズポヨンポヨンダンスを披露する時間も出来ると思うのです』



「なるほど? あれ? でも――」


『ポヨンポヨンを取りますか? 取りませんか?』



「取ります」


『はい、ではシマ様』



「あれ? ん? どした?」


『BBQ大会当日の焼きそば係をお願いしますね』



「ん? ああ、俺がやればサヨ達が出し物に出られるんだよな……あれ?」


『それでは視察の続きに参りましょう、鉱物系種族に成り切って下さい』



「ああ……あれぇ? ……まいいか、えっと視察の続きを、ってさすがに鉱物系種族の感性にはなれんだろうに……」



 ……。



 ……。



 ――



 そうして視察を済ませた俺なんだが、なぜか焼きそばを作る事になっていた……あっれぇ?



 ちなみに、このしばらく後に行われた『お肌プルプルプール』でのBBQ大会で、調理知識をインストールされているブレインユニットの一人に調理教育を受けながら、延々と焼きそばを皆に作っていた俺は、気づいたらサヨ姉妹の出し物を見逃すと言う大ポカをしてしまう……。



 いやだってさ、何万人も居る中で出し物の演舞場と俺のいた位置が遠かったんだもの……。


 サクラとかクレアが言うには、サヨの踊りは素晴らしくセクシーでポヨンポヨンだったと絶賛してたんだよなぁ……くそぉ……見たかったなぁ……今度個人的に見せて貰おうかしら?


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