第52話 樹人の惑星再び、歓迎の宴でのサクラとのペア踊り部分は省いてもいいよね?

 ワッサワッサワッサザワザワ

【久しぶりですな英雄殿、いや……息子殿とお呼びするべきか?】


「ああいえ、まだ婚約ですのでそれは気が早いかと」


【そうですよお父様、私はまだ幼木なのですから、これからじっくりククツ様のお側で年輪を重ねて……受粉するのはずっとずっと先の事です……うふふ、楽しみですねククツ様?】


「ああ、そうだなサクラ」



 俺は今樹人の惑星へと来ている。



 様々な惑星へと行き、商売なんかをしつつ時間が過ぎるのを待っていたら、サクラのお姉さん達の準備が出来たと連絡があったからだ。



 そして……今回の俺はフルチンでは無い!



 謝罪の為の外交使節だった前回と違うからね、今回はブーメラン水着でおっけーという非常に安心出来る物だった。


 一緒に地上まで降りたのは俺とサクラだけで、サヨやクレアは軌道上で樹人の皆さんを受け入れる準備等をしている。


 サクラの恰好も水着で、ヒモでは無くビキニの上と、下はパレオと褌……太ももから下は根っこだからね。


 お姉さん方もサクラと同じ様にふとももから上を人の姿に変態しているというので、同じ様な水着やパレオを大量に送り届けて、今はそれらを着て貰っている所だ。



 なので地上に降りた俺とサクラを樹人の長と他数人……数本の雄型の植木さんが出迎えて話をしている所だ。

 場所は前回の時より広い空き地だ。



 ワッサワッサ。

【このまだまだ年輪の少なかった娘が、こんなにも色気のある花を咲かせる様になるとは、やはりククツ殿に任せてよかった】


 長の言葉と共に、後ろに控えている樹人もワサワサと体を動かす。


 ザワザワワ、ワサワサ、サヤサヤ。

【くぅ! あの娘があんなに良い花を咲かせるとは、もっと早く気づいていれば……】

【馬鹿者、ククツ殿という良質な日と養分があるからああなったのだ】

【うむ、まだ未熟なお主が相手では立派な果実は出来まいよ】

【しかりしかり】


 うーん、樹人の比喩的なあれを訳すと、俺の側にいるからサクラが可愛くなったって事を話しているのかな?


 俺に合わせて変態しているサクラでも可愛いと思うんだね彼らは、ちらっと隣を見た俺。


 隣のサクラのツル毛に咲く桜の様な花は、いつもより赤みが強くなっているみたいだ。

 久しぶりに家族……樹人は全員が親族みたいな物らしいけど、まぁ家族に会って恥ずかしがっているのかもな。


 そんなサクラの頭をそっと撫でてあげると。


 ポポポンと、いつもの様にツル毛の蕾から花が咲く。



 ワッサワッサ。

【うむうむ、仲良きようでよろしい、二人の間に果実が出来るのが楽しみですな】


 ザワザワザワザワ、ワサワサ、サヤサヤ。。

【ぬぐぐ……やはりあの踊りが、もっと枝葉を鍛えねば……】

【見た目だけ変えても意味が無いと判らんうちはまだまだ】

【表は立派でも中が空洞ではの、すぐ倒れてしまい養分になるだけよ】

【しかりしかり】


 果実って子供って事だよな? サクラの変態が進めばそれも可能って話だけど……。


 まずはサヨとの子供が出来てからなんだが、種族差みたいな物があるとかですっげぇ確率低いみたいなんだよな。


 宇宙では百年や二百年くらい誤差っていう感覚もあるみたいだけど、まぁしばらくは新婚夫婦みたいな状況が続きそうなんだよね。



 そして、俺や樹人の長が会話をしていると、空き地の周囲に音が響いて来て……わぉ。


 ワッサワサ。

【娘達の準備が出来た様ですな英雄殿】


 長の言葉の通り、俺と長たちの周囲にサクラと同じ様に水着とパレオを着た樹人の娘さん達が集まって来た。


 あー、サクラは薄い緑な肌の色をしているのだけど、お姉さん方の肌は色々だ。

 茶色や黒や蒼やオレンジっぽいのも居る。


 そして皆がパレオから下は根っこなんだね、ズリズリズリと根っこを器用に動かしている。


 一万本……いや今は一万人と表現するべきか、そんな人数に周囲を囲まれると圧迫感があるね。


 皆美人で上半身のスタイルは良く、モデルさんとか普通に出来そうな樹人が一万人だ。


【おまたせしましたククツ様】

【お久しぶりですククツ様】

【この様な機会を与えて下さり有難うございます】

【サイン大事にしてますよーククツ様】

【妹の抜け駆けに幹を絡ませる思いでしたが……】

【今はもうそれはいいでしょ? それよりククツ様】

【私達にも】

【妹の様に名前を付けて頂けませんか?】


 一斉に一万人からの挨拶メッセージが空間投影モニターに流れる。


 その中で気に成った内容が名前の事だった。


「あ、あれ? 名前は事前に考えておいて頂ける様に、すでにお伝えしてあるずなのですが……」


 さすがに一万人の名前を付けるのは無理だろうしな……。



 ワッサワッサワッサワッサ。

【済まぬな英雄殿、我が娘……サクラの名を頂いたのでしたな? そんなサクラの様に英雄殿に直々に付けて頂いた名と自ら付ける名では、想いの深さが違うだろうという事になってな、出来れば……全員に名を付けてあげて欲しいのだが、難しいだろうか?】


「ああいやその……サクラは俺の故郷に咲く花から名前を取ったので、そうなるとお姉さん方にも花や植物の名でとなると……一万はちょっと難しいかなって……」


 ワッサワッサワザワ。

【ふむ……英雄殿、別に同じ名でも良いのですよ? 私共は貴方の想いが籠った名であればそれで良いのです】



 んん?



 長の言い様に、周りのお姉さん方が頷きで返して来る。


 つまり俺がこの人の葉や花はこれに似てるなーって感じでつけた名前なら、名前が被っても良いって事かな?


 ……それならいけるかもか。


「あーえーと、判りました……頑張ってみます」


 俺がそう答えると、ポポポポンッと周囲に音が響き渡り……。


 どうやら、お姉さん方が喜びを花の咲き具合で表した様だった。



 周囲を囲む一万の樹人が咲き乱れた訳だが……すごいなこの光景は……。



 ……。



 そうして一万人の変態した樹人女性が俺の前に並んだ。


 俺は軌道上に居るサヨに頼み、お姉さん方のツル毛に付いている花や葉に良く似ている花や植物の情報を、空間投影モニターに出して貰った。


 サヨにはなるべく沢山の候補を出して貰っている、何故なら、候補が一つだけだとサヨが名を付けているみたいに成るじゃん?


 なので似ている部分が少しでもあれば情報を出して貰ったので……ものすごい量から悩みつつ名を付けていく事になる。



 うんうんと唸りながら一人一人名付けをするのだが、ものすごい時間かかるなこれ。



 ……。



「では貴方は葉っぱの形からカエデで」

【ありがとうございますククツ様】



「うーんウメ……いやアンズの花の方が……貴方はアンズで!」

【ククツ様が真剣に思い悩みながら付けて頂いているのが判ります、ありがとう御座います】



「カキツバタ……いや貴方はアヤメで!」

【アヤメの名、謹んで頂きますククツ様】



 ……。



 ……。



 ――



 えっと、今何人だっけ……。


 ワッサワッサワサ。

【英雄殿、少し休みましょうぞ】


 長の言葉に一旦名付けは休止、いやぁ……考えすぎて疲れるわぁこれ、もう40時間くらいたつのに、まだ千人にも満たない……。


 俺は水と果実を頂きながら、周りに居る変態した樹人達を見ている。


 ん? サクラもお姉さん達に混ざって大きな木の桶の様な物を大量に持ってきているな、なんだろ。



 と彼女らの動きを見ていると、桶に虹色の水を入れ出しており……。


 うわ! 今気づいたけどサクラのお姉さん方のほとんど……いや全員か? 見た事のある腕輪をしている……。



「長殿……私には変態した樹人の方々全てが、遺産を持っている様に見えるのですが……」


 桶に入れた虹色の水に次々と飛び込んでいくお姉さん達。


 彼女らにはまだ発声器官が無いのであれだが、お互い精神感応で会話をしているらしく、身振り手振りの様子から、雑談をしながらお風呂を楽しんでいるのがなんとなく判る。


 ワッサワッサワッサ。

【惑星上では個々が持つ必要がありませぬが、外に行くのなら別でしょう、あれはいくらでも増えますから問題ありませぬ】



 増えるって……自己分裂でもするのか? きもい遺産だ……。



 だがそれよりも問題は、今の今まで考えて無かったけど……うちの看板商品である『サクラの残り湯』が一万倍増えそうな事なんだよな……。



 これはやばい多すぎる。



「長殿! あの物資があるからこそ樹人はVIP扱いな訳で、うちで大量に出回らせると良くないかもです、そちらの輸出量より少な目にしますので、どれくらい輸出しているか教えて頂いてもよろしいか?」


 ワッサワッサザワザワ。

【そこまでお気にせずともよろしいのだが……英雄殿のお気遣いは無駄に出来ませぬな】


 そう言った長殿とプチ会談を始める俺は、空間投影モニター越しにサヨとクレアにも参加して貰った。



 ……。



 ――



 その結果、樹人達の輸出量では皇国全体の需要を賄うには、まったくと言ってよいほど足りて無かったので、大丈夫そうという結果になった。


 一応樹人側の輸出量を計算に入れつつ、うちの出荷量のコントロールをする事になったのだが……。

 どうにも樹人は積極的に輸出をしていないみたいで、思ったよりも出荷量が少なかったね……。


 なので、うちからの『サクラの残り湯』やそれを使った商品の出荷は、樹人の長の許可を得てやっている事にした。


 つまり樹人の長の機嫌を損ねれば、俺の所からの出荷が止まる可能性があるぞ、って事にして樹人の立場を守った訳だ。


 それと、うちで作る化粧水も、今までは一般的な製造レシピに従って薄めて製造していたみたいなのだが。

 これからは、自分達の使う分は成分の濃い化粧水に出来ると、クレアが喜んでいた。


 今よりお肌がプリプリになっちゃうの? ……樹人の残り湯が凄すぎるよなぁ……。



 ……。



 ……。



 ――



 そうして一万人の変態した樹人のお姉様方を、うちにお迎えする事になった。



 今は人の常識を学ぶべく、別荘惑星でブレインユニット達と遊ぶ事で色々と学習をして貰っている。



 そして、これからは一万倍になる『樹人の残り湯』の使い方をどうしていくのかと、ブレインユニット達や側使いやらすべてを含めて、仮想空間を利用した一千万人会議が開かれた。



 自分達の使う化粧水分は完全に確保できるのだと皆大喜びで、色々な意見が出たのだが。


 そのいくつか採用された意見の中で、一番シマポイントを稼いだのは……。



 トウトミが提案をした『化粧水プール施設の建設』だった……。



 一千万の女性陣全員一致の賛成だったのには驚いたよ……。


 皇国の女性達は、薄めてあっても尚商品不足な化粧水を目の色を変えてゲットしようとしているのに……こんな使い方を俺らがしているのがバレたらと思うと……。



 内部情報は絶対に外に漏らさないように気をつけないとな。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る