第46話 会議は踊ると言うけれど、俺とサヨ以外が踊るのは見た事ねーんだよな……
「また見つかったのか?」
『はいシマ様、これで5人目になりますね』
「あーでもさ、内乱を止めた後に皇国軍が一応調べたんだろ?」
『潜伏型の催眠暗示は見つけるのが難しいですから』
「あのドリドリ艦隊に居た遺産持ちも催眠暗示を受けてたよなぁ? やけに感情的だったしよ、あの狼獣人の時と似てたもんな」
『ドリドリ団の上層部である技術者達にとっては自身の能力ではない遺産という力は認めがたいのでしょうね、だからこそ催眠暗示を使い適合者を駒として使うのでしょう』
「あの狼獣人の発言は酷い物だったけど……実際のやらかしはほとんど取り巻きが主導をしていたんだろ?」
『暗示をかけた者を主体的に動かす以上は、あまり強力な暗示を使う事は出来なかったのでしょうね、本人の性根が表に出てきてしまう様で……あの狼獣人はお馬鹿ですが根が善良だったようで、仕方なく取り巻きを沢山付けて誘導していたのでしょう』
「なるほどなぁ……それに比べて、あの複製遺産持ちは酷かったもんな……性根がクソだったんだろうなあれは……」
『あまりお気にしませんようにシマ様、海賊と同じで生け捕る意味も価値も無い相手でした、何某かの罠があったかもしれませんし遠距離からの殲滅はベターだったと思われます』
「判ってるよ……しかしまぁ、怖いねぇ催眠暗示ってのは……身体強化をしていても洗脳や催眠暗示にはかかるってか……俺も気をつけないとな」
『シマ様は私が必ずお守り致します、なので、シマ様に異常が無いか24時間366日きっちり監視をしていきますね!』
「……」
『……』
「皇国の銀河標準時間と地球のは違うよな?」
『あ、そっちに突っ込みが来ますか……これは予想外……は!? まさかシマ様がすでに催眠暗示を受けている可能性が!?』
「ないない、どんな催眠暗示だってんだよ」
『突っ込みのキレが無くなる催眠暗示です』
「地味に嫌だなそれ!」
『なのでテイク2!』
「ずっと俺を監視するとかよ! サヨお前さぁ! ……俺の事……好き過ぎじゃね? それと、閏年をわざわざ使う意味なくねぇ?」
『……』
「……」
『ああ、いつものシマ様です、安心しました、80点あげます、そして私はシマ様の事が大・好・き・なのでちょっと間違っていますよ、ハート』
「ったくもう……俺も大好きだぜサヨ」
『シマ様……』
「サヨ……」
「『ムチュー……』」
「二人共そこまで! もう、なんで会議をしているのに途中から夫婦漫才? みたいなのをぶち込んで来て、しかもキスまでしようとするのシマ君とサヨさんは! い・ま・は・し・ご・と・中です!! はぁはぁ……ほら皆も呆れて見てるわよ?」
俺は会議室に詰めている各人を見回していく。
この部屋には俺とサヨとクレア、そしてそれ以外にも十数人が大きな円卓に着いて居る訳だが。
各人は呆れて……居ないよ? 楽しそうにこちらを見ているし。
なんなら俺が見ている空間投影モニターには、この後デートしませんか? とか彼女達からお誘いメールがこっそり何通も来てるよ?
参加メンバー的に会議と言うよりは遊びに来ている感覚なのか。
ここに来ている彼女達は全員がコスプレ染みていて……トウトミとスイのペアアイドル衣装がすごい似合っていて可愛いので、俺はこの会議の後に三人だけのコンサートを開こうと思っている。
でもまぁクレアを怒らせると怖いので続けるか。
「オホンッ! んんっ! ……では、今回のはあれらと違うと?」
『はい、使い捨ての駒扱いでした、自分達の本拠地であるドリシティに一定規模以上の艦隊戦力を向けるとなったら発動をする催眠暗示だった様で、それ以外は普通に過ごすので発見が難しかった様です』
「ドリドリ団の上の奴らは優秀だな……優秀であるがゆえに、それ以外はゴミ扱いなんだろうな……元公爵でさえ愚民とは言えどゴミとまでは言わなかったのによ……」
「……それって違いはあるの? シマ君」
クレアが質問を挟んで来たので、もうちょい詳しく応えてあげる。
「愚民は愚かしいから優秀な自分が導いてやる存在で、ゴミは捨てる物だろ? まったく違うよクレア」
「ああ、そういう……元公爵はまだかろうじて為政者であったと言う事なのね」
まぁそれでも切り捨てるべきと思ったらきっちり切り捨ててきたけどな元公爵は、旧辺境伯領には何人の人が居たのやら……。
『元公爵は自分より無能だと思っていた者が、皇帝の席に座って居るのが耐えられなかったのでしょうね』
「この広大な版図を持つアリアード皇国の皇帝が無能な訳ねーのにな……あのおっさんは一応俺の義理の父な訳だが、飄々としていて……正直俺は苦手だ」
「義理の父というか皇帝陛下はまぁ……わざと頼りなさげに見せて調和を取るタイプなのでしょうね、自身の能力で回りをグイグイと引っ張るタイプだった元公爵とは判り合えなかったのかな……」
「ああもう、あいつらの話は暗くなるから置いておいて、だ、その催眠暗示は危険だよな?」
「だよねぇ……操られた人が皇国軍第一艦隊の旗艦動力炉を暴走させようとしたんだってさ……」
『他には軍港インフラに致命的な損害を与えた妨害方法もありました』
「せっかく作った観光惑星と、衛星軌道に乗せる要塞都市、そして要塞都市表層に作る予定の学園都市計画もちょっと止めるかね」
「今の状況で人を迎え入れちゃうと怖いかもねシマ君、催眠暗示をどうにかする方法を見つけないと……」
むーん、困ったね、どうしよう?
ん? 円卓の向こうて誰かが手を上げるのが見える。
それは、メイド服でツル毛や体に花を咲かせている女の子のサクラだった。
「サクラ、何か意見があるのか?」
【はいククツ様、私の精神感応で催眠暗示を受けた人を見つける事が出来ないでしょうか?】
樹人であるサクラは、まだ人への変態が完全では無く言葉を発せないので、空間投影モニターに文字を映す事で意思を伝えて来る。
ふむ……。
「どう思う? 俺は詳しくないから判らんのだが」
『可能性はありますね、いえ……すごく良い意見かもしれません、一度催眠暗示された人員を調べてみたい所ですが……』
「そうだね、それなら……シマ君の領地への留学希望を出していた子の中に、催眠暗示の件で改めて調べ直したら行動が昔と変化していて怪しかった子が居たよね? あの子でテスト出来ないかなぁ?」
うえ……あの20万人の嫁候補リストの中にそんな子が居たのかよ。
いやまぁ相手を攻撃するのなら内部からってのは、順当な手といえばそうなんだが。
「クレアの意見はどうだ? サヨ」
『あの娘が確実に催眠暗示を受けたとは言えませんが……やってみる価値はあると思います』
「よし、それじゃぁ徹底的な安全措置を講じたうえでその子を……そうだな、これから学園都市に人を受け入れる為のテスターを呼ぶという事にしよう、実際呼ぶのはその子一人で他はブレインユニットをサクラにしてさ」
「それがいいかもね、賛成だよシマ君」
『一人相手なら身体に爆弾でも埋めこんでなければ対処も可能かと、送り込まれる時にきっちり身体検査は致しましょう』
「そうだな、それじゃぁサクラ、難しい仕事だと思うがお願いしてもいいかな? 上手くいかなくても責めはしないからさ」
【お任せくださいククツ様! このサクラ、きっとやり遂げてみせます!】
いやだからそんなに意気込まなくていいから……。
後でサクラにはもう一回声をかけるか、俺みたいに適当に力を抜いてやれってさ。
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