第44話 やはり最後に頼りになるのは同好の士という事か
『ご馳走様でした』
「お粗末様」
適応体との戦いも終わり、最後に残った恒星を食べたサヨの言葉にそう返した俺。
「「「「「「【お疲れ様です】」」」」」」
パチパチパチパチと周囲からも拍手が起きる。
この恒星系は予定通り完全に消滅させてしまう。
ドリドリ団にとって何か意味のある場所かもしれないからね、全てまるっとサヨのお腹の中で資源へと変えてしまう。
皇帝陛下からの許可はすでに貰っているので何も問題は無い。
うちのブレインユニット達がテンション高めではっちゃけた結果、第一惑星が半壊していて。
サヨ曰く『香ばしい味で、オーブンで焼いたチーズグラタンに似ている』とか何とか……高出力ビームで大地が焼け焦げて溶岩に覆われた様な状態だったんだけどなぁ……。
「サヨさんは粗末な物を食べたの?」
クレアが首を捻っている、あー翻訳だと日本の謙遜の意はたまに伝わらない事があるな。
皇国で良く使われている主要言語だと、特殊な言葉の言い回しには意味を補完してくれたりするんだけども。
まだ地球は皇国に組み入れられてたった数十年かそこらだし、そんなド田舎の言葉だとまだまだ補完し切れていない表現があるんだろうね。
そのうち翻訳がアップデートされるだろうけどさ。
お粗末様なんて言葉は、うちの婆ちゃんなんかが飯を作ってくれた時に、御馳走様の返事として良く使っていたんで俺もつい言っちまったよ。
クレアには後で説明しておこう。
「「「「「【お先に失礼します】」」」」」
戦闘指揮室に居た諸々の子達が、俺達に挨拶をしながら自室に戻っていく中で、俺とクレアとサヨはそれに身振りで応えてあげながら三人で会話を続ける。
「じゃまぁしばらくこの宙域に留まって適応体が集まらないかを監視するとしてだ……ドリドリ団の本部はどうしよっか? 皇国軍に丸投げするか?」
『有象無象同士で食い合わせるのも良いかもですね』
お前は本当に俺と家族以外どうでも良さげだよなサヨ‥‥‥。
「うーん、確かドリドリ団が居るのは宇宙ステーションなんだっけか? サヨさん」
『ええクレアさん、辺境と中央を結ぶ航路の一つに有り、かなり大きい宇宙ステーションで、観光地としても有名です』
「嫌な場所だよな……無関係な人間も一杯いるだろそれ」
『下手に手を出して一般人を盾にされると、シマ様の声望に傷がついてしまいますね』
「となると悔しいけど皇国軍に投げちゃうのがいいかもね、情報が洩れて逃げ出されてもそれはそれで殲滅し易くなりそうだし」
そうだな……そもそも俺の声望とかどうでもいいんだが、一般人を盾にとられるとステーションに戦力を突入させないといけなくなるのが嫌だな……。
それだとうちの対人戦最高戦力である『くのいち忍者部隊』を出さざるを得ないし……ステーションごと自爆とかされたら嫌だなぁ。
最悪一般人を無視して吹っ飛ばす事も考えないでも無いんだけど……俺は正義の味方って訳じゃねーが、さすがにそれはなぁ……。
……。
「よし決めた! サヨ! 皇国にこないだ掴んだ情報の全てを渡しちゃってくれ、彼らも内乱残党殲滅の勲功が欲しいだろうし頑張って働いてくれるだろう……ああでも、軍内のスパイの情報だけは信頼出来そうな筋のみにな」
『畏まりましたシマ様、スパイは上層部にはほとんど居ませんでしたので、その情報は皇帝直属軍参謀本部の数名にシマ様の名前で直接届けておきます』
「うわっ、サヨさんそこって皇国軍の最中核じゃないの……正規軍の参謀本部より権限が高いから皇国軍の要だよね、元皇女の私でも簡単にはアポとか取れないんだけども……個人で情報とか送れるの?」
へぇ……あの人達ってすごい人だとは思ったけど、そこまですごかったのかぁ……何気に交流あるんだけどな……。
「あそこの人とは少し話をする機会があってさ……それで少佐殿、いや今は中佐だっけか? と知り合いになってたまに情報のやり取りをしてるんだよね」
「前が少佐なら入りたての若い人かもね……最近中佐に? ……ねぇシマ君、それってもしかして×××中佐?」
あれま、クレアは知ってるのか。
「そうだね、クレアが知っているって事は、有名な人だったのか?」
「皇帝直属軍参謀本部付の期待の新人だよ! 皇国本星中央防衛大学を全期トップの成績で卒業をした知る人ぞ知るって感じの……そんな人がなんでシマ君と知り合いなの?」
え? えーと……あー……どうやって説明しよう……困った。
「あー、んー、えーとそれはな……えーと――」
『シマ様の秘密なムフフアーカイブによって紡がれた同好の士という奴ですね、今でもたまにお互いが見つけたムフフ情報のやり取りをす為に、個人の連絡先パスを受け取っています』
サヨが普通に説明しやがった!
……やめたげてよぉ! ……俺は兎も角さぁ……。
超絶エリートが自分のムフフなアーカイブを人と自慢し合ったり、同好の士で融通しあったりするなんて知られたら可哀想だろう?
「あ、はい……そっかぁ……男の人って……そっかぁ……」
クレアが何かを悟ってしまった様だ……。
まったくサヨって奴は。
「そういう所だぞサヨ」
『はて?』
あーいや……もしかして……。
考えてみるとサヨは人とのコミュニケーションをまともにとりだしたのが、俺に出会ってからなんだよなぁ……。
それまでは銀河ネットの仮想空間の奥底で、相性の良い知的生命体が来るのをずっと待っていた訳で……。
知識はあれども対人経験は赤ん坊みたいな物だと思えば……今までの数々のやらかしも経験値が低いゆえか……。
「しょうがねぇのかなぁ?」
『何がですか? シマ様』
いや……ほんとにそうか?
色々思い出すと……やっぱしそれだけじゃねー気がしてきたわ。
「やっぱサヨさんアウトだわ」
『シマ様の言動が支離滅裂で理解不能です、担架を呼びます、お疲れの様ですし自室で休みましょう、クレアさんそっち持って下さい』
「了解だよサヨさん」
何故か俺が疲れている事にされ、肩と足を掴まれドローン担架に乗せられた。
まぁいいか、ドローン担架に乗せられた俺は、皆が歩いている通路を寝転びながら運ばれている。
周りから心配そうな声がかかる度に、大丈夫だからと返しながら。
『お疲れのシマ様には私が添い寝してあげますので、ゆっくりお休み下さい』
「それいいねー、私とサヨさんで挟んじゃおう」
そうだな、戦いも一区切りしたし、ちょっとノンビリするか。
さすがに何かが起こる事はもうねーだろしさ。
と、ドローン担架の上で目を瞑って寝ちゃう事にした俺だった。
服やなんかはメイド部隊が勝手に着替えさせてくれるだろうて……では、おやすみなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます