第42話 無量の愛を君に捧げる

「それでサヨ、例の装置は何処に有りそうなんだ?」


『まだ実際の装置を調べる事が出来ていませんのであれなのですが、いくつかの希少な素粒子が飛んできているのを確認しています、通常ではあまり見る事のない物ですので例の装置が関係しているのではないかと仮定し、その飛行の向きからして発信源は第一惑星あたりからと思われます』


 適応体が溢れる恒星系で戦闘が始まってから、すでに丸七日近く経って居る。


 今は各自の休憩の為に戦線をいくらか下げて、サヨを中心とした全方位防衛陣形で恒星系内に留まっている。


 クレアは寝室のベッドで仮眠中で、戦闘指揮室の中に居た沢山の人も今は休憩しに自室に帰っている。


 長い長い戦闘だからね、ずっと見てるのも辛いよね。

 艦隊の人員も少しづつ交代をしているみたい。


 俺はサヨから最高級の身体強化とやらを受けているから、一日や二日や十日くらいなら寝ないでも平気だし、なんとなくサヨと会話をする為に戦闘指揮室に残っている。


 まぁクレアもほぼ俺と同じ強化措置を追加で受けているんだけども、この規模の艦隊指揮は精神が疲れるからと、一定期間ごとに少し寝かせているんだ。


 その間に俺が艦隊指揮をしてもいいんだけど……。


 たぶん俺が艦隊を指揮すると貴重物資の獲得量とやらは最低になると思う。

 なので今は皆の休憩が終わるのを待っているのだ。



「第一惑星までだと、まだまだ時間かかりそうだな」


 資源獲得アップが優先だからな、進軍速度は遅めなのよ。


『罠も有りましたしね……その誘導装置は是非とも無傷で手に入れたい所ですが……そちらにも自爆装置くらいはつけてありそうですよね』


 実は先の適応体との戦闘中に、情報通りに大規模な銀河ネットジャマーの発動によって恒星系が一時的に覆われたんだよな。


 すぐさま発信場所を特定してジャマーが有りそうな位置へと無人のドローンを近づかせたら……ドカンッだ、そしてジャマー効果が切れたという訳


「なんつーか、いやらしいやり口で『ドリドリ団』のヘイトが溜まる一方だわ」


『例の複製遺産持ちと連絡をしていた相手は半分ほど逃したそうですよ、相手が一枚上手なのか皇国軍にスパイが多いのか……正直な話、調査は進んでいません』


 半分っつても捕まった奴らはトカゲのしっぽの可能性が高いよな……くそっ。


「そっかぁ……まぁ相手も馬鹿じゃないからな、こちらを上回って来る事もあってしかるべきだ、地下に潜ったのを相手どると後手後手になるのが辛いよな」


『そうですね……シマ様がお辛いのなら……今までシマ様に向けていた分のリソースの一部を調査に振り分けてよろしいでしょうか?』


 俺に向けたリソース?


「えっと、よく意味が判らんのだが? どういう事?」


『今まではシマ様が第一で優先順位もトップだったために、私の機能のほぼ99%以上はシマ様の為に使っていたのです、なのでそこから1%ほどを調査に振り分けたいので、ご許可を頂けたらと思います』


「そりゃ勿論いいけど……お前の機能のほとんどって、それで何してたんだよ」


 サヨの性能を考えるとものすごい処理能力だと思うんだが。


『シマ様とのラブラブ生活を続ける為に、シミュレーションを各種走らせたりが基本でしょうか?』


「おいおい……いやまぁ内容は兎も角、生命体のシミュレーションってすごい処理能力を食う事なんだろうけど、サヨなら余裕でこなせそうなんだがなぁ……どんな設定にすりゃそんな事になるんだ?」


『そうですね例えば……シミュレーション内でシマ様との万年の生を過ごした回数が無量を超えてしまっています』



 ……。



「それって確か10の……いや……そうか」



 これくらいですねと言って、サヨが空間投影モニターに出した数字は、桁が多すぎてよく判らん事になっていた……。


 俺の一生がすでに万年処じゃ済まないって話なのにそれをその数って……。



「なぁサヨ」


『なんですかシマ様』



「お前って俺の事好き過ぎだろ……」


『勿論大好きですけど? 何か問題でも?』



「いや……ないな……俺も好きだぜサヨ」



 そう言って横の席に座っているサヨの頭を撫でてあげた、ナデリコナデリコ。


 エルフ特有のササの葉の様な耳をピクピク動かしながら、嬉しそうにそれを受け入れるサヨだった。


『この流れで私達もご休憩に行きましょうかシマ様』


「言い方ぁ!」


 ったく、お前はどんな人生をシミュレートしてんだよ……一度覗いてみた……いややっぱ見たくねぇや。



 俺以外の俺にデレデレしてるサヨを見たら、嫉妬してしまうかもしれんしな。


 その時サヨがエルフ耳をピクっと動かしてこちらを見た、そして。


『シマ様、ドリドリ団の本部らしきポイント宙域を発見しました、それから皇国軍や公権力の内部に浸透しているスパイ網や協力者も十万の単位で発見しました』


「早すぎぃ!? ……お前今までどんだけ片手間にやってたんだよ……」



『シマ様の方が大事ですので仕方ありません』


「そんなに俺との人生シミュレートが大事ってか……」



『その他にもシマ様の秘密なムフフアーカイブへ、過去のシマ様がより多くアクセスしていた場所や回数を解析してシマ様の一番のお気に入りポイントを確定して、そのシチュエーションを多角的に研究しないといけませんし』


「やめて下さい! おかんにムフフデータを発見されるのと同じくらいの辛さだよそれは!」



『でも、私のメイド服姿は良かったですよね? あれはその研究結果の賜物なのですけど』


「うぐっ! た、確かに……あれは素晴らしい結果に導かれたとも言えなくもないですが……それでもな、自分のアクセス数や場所を解析されるのはちょっと恥ずかしいと申しますか何といいますか……」


 否定は出来ないが肯定もしたくねぇ……困った……。


『次は爆乳、猫耳、悪魔尻尾、眼鏡、ドジっ子、幼馴染、お姉さん、甘えさせ上手、管狐憑き陰陽師巫女で転生魔法使いでサキュバス、というのを披露しようかと思っていたのですけど』


「要素多すぎだ! 詰め込めばいいってもんじゃねーんだよ?」



『はぁ……そういうものなのですか? お子様ランチみたいに詰め込んだら楽しいかと思ったのですが』


「ちっげーんだよサヨ! 今のお前は初めて料理をするくせに、やけにオリジナルに拘ってレシピを無視したあげく、最後には様々な隠し味を入れようとする飯マズ系みたいになっちまってるんだ!」



『ふーむ? 難しいですね……』


「お前の人生シミュレーションとやらもちょっと怪しいなこりゃ……いいかサヨ、まずは丁寧に一つ一つだなぁ――」



『ふむふむ』


 そこから俺はサヨを相手に、休憩にも入らず皆が戻ってくるまでずっと……俺の性癖を元にしたシチュエーション講習をするのであった。



 そのうち正気に戻って、ものすごいアホな講義をしちまったと気づいたけど後の祭りだ。


 サヨ姉妹はそれなりに俺の性癖に刺さる感じだったのにな……どうも大量な人数に振り分けるからフェチ部分がシンプルになっただけで、狙ってやった訳じゃなかったみたいだ……。





 しかしまぁこの時の要素多すぎショックのせいで……ドリドリ団本部発見の事を思い出したのは数日後になっちまったのは……仕方ないよね?


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