第24話 【おまけ話】刃の下に心を持つ

 ◇◇◇

 前書き

【おまけ話】は時系列が繋がってませんのでお気をつけ下さい


 この話はサヨとクレアとの婚約を報告しに家族に会いに行った話で

 時系列的には女王級適応体を倒した後で映画の撮影が始まっているあたりになります

 ◇◇◇







「火遁火柱の術~~!!」


 ごぉぉぉぉぉぉぉ!!!


 開けた訓練場である場所に火柱が立つ。

 その高さは5メートルは超えているだろうか、正直危ないし怖い。



「水遁爆龍水の術!!」


 ざざー-っっと近くにあった池の水が、龍の様に空中を曲がりくねりながら火柱に被さり火が消えていく。


 俺はそれを見ながら隣にいる爺ちゃんに話し掛ける。



「なぁ、爺ちゃん、あれどうやってるんだ?」


 爺ちゃんはキセルを咥え、煙をふーっっと吐き出すと。


「知らん」


 そう簡潔に答えた。


「いやだって『ククツ流忍道』の術なんだろ? そんなもんがあるのかは知らんけど……」


「んなもん無いのはお前が一番知ってるじゃろ、あれはサヨさんが用意してくれた忍者アニメを見た子供らが勝手に習得した術じゃよ」


 まじか、すげぇな子供ら。





 結婚の報告をしに皇国の本星に移住した家族に会いに来た俺なのだが、サヨやクレア皇女は母親や姉さんや婆ちゃん達に、女子会をやるべく屋敷へと連れていかれ。


 俺は爺ちゃんや父親に会いに野外でやっている子供忍者教室を訪れたんだ。



 子供忍者教室も出来るだろうと、広い敷地を持つお屋敷を家族に貸したんだよね。


 この屋敷は公爵一派に洗脳暗示を受けていた狼獣人から、借金のカタとして貰ったものなのだが、それはまぁ別の話。


 とにかく小学校か? というぐらいでかいお屋敷と、野球場が30面以上取れる庭があるこの場所は、今や子供忍者教室の為の場所になっている。


 何もない広い場所では様々な忍術が乱れ飛び、遠く離れた場所ではフィールドアスレチックとでも言えば良いのだろうか、木やロープで出来た様々な器具や施設が有り。


 子供らが飛び回って遊ん……忍者の修行をしている。


 ちなみにこの飛び回ってというのは、比喩では無い子も居る……。


「有翼人種も居るんだね爺ちゃん」


「宇宙は広いからな……あの火柱を出した子は竜系人種だし、水を出した子は魚系人種だ」


 はぇーなるほどなぁ、つまり天然で火や水を操れる種族……って。


「種族固有の技を忍術と言っているのか……まぁそれでもいいのかな? そもそも忍術の定義とか曖昧だしなぁ」


「子供らが楽しければいいんじゃよ、後は怪我さえしなきゃな」


 プカーッっと口から輪っかなケムリを吐き出す爺ちゃん。


 そのキセルってサヨが小道具として渡した奴で、タバコっぽいけど実は健康にまったく影響のない煙を吸える奴だよね、爺ちゃんによく似合っている。


「それもそうだね『ククツ流忍道』の忍術定義は、相手を惑わして結果が出せればそれが忍術っていう事にしとくよ、それで、サヨ姉妹は役にたってるかい?」


 今も遠くで子供達を指導している姿が見えるサヨ姉妹達の事を聞いてみた。


「ああ、名前が同じなのがちょいと面倒だが、それ以外は良くやってくれているよ、忍者教室も……そして儂らの護衛もな、ありがとうな四枚しまい


 きちっと名前を呼ばれるのは久しぶりだな。


「どういたしまして、まぁ狙われるのも俺のせいって部分もあるんだけどね」


「何かあったとしても、それは襲って来た奴が悪いのであって、お前が悪いなんて事は一切ありゃせんよ、……自慢の孫じゃ」


「はは、あんがと爺ちゃん」



 ……。



 少し気恥ずかしい会話をした為に、お互いだんまりと広場を見ている。



 精神生命体種である幽霊の様な子供の忍者が、分身の術をしてみせたり。


 鉱石人種っぽい見た目が岩な子供が、柔らかく解された土の中に一瞬で潜り込んだりしている。



 ……。



「そういや親父は?」


「あいつは地球に行っとるよ」


「なんでまた地球に? 忘れ物でも取りにいった?」


「英雄になったお前さんが、故郷である地球に一切立ち寄ろうとしないからあやつが呼ばれたんじゃよ、今頃地区長会議で全地球人が見ている中で演説でもしとるんじゃないかの」


「なにそれ怖い! うちのパパのメンタルはがねじゃね?」


「親子揃って良く似とるわ」


 そうかなぁ? 俺の方が親父よりイケメンだよね?


 そうやって爺ちゃんと話をしていると、忍者の恰好をした子供達が俺達の元へと集まってきた。


「頭領! こんにちは!」

「本当に頭領だ! 僕を頭領の忍者部隊に入れて下さい!」

「たしか現頭領はくのいちしか受け入れてないのよ、頭領、私は入れてくれますよね?」

「頭領、すごい忍術を見せて下さい!」


「あーそれいいね、頭領、お願いします!」

「「「お願いします!!!」」」


 え? 俺は忍術なんて出来んのだけど?



 子供達を引率していたサヨ姉妹を見るも、苦笑いを返して来るのみだ。


 そりゃ身体強化された体だからさ、すっごく早く走れたりはするけど、そんなのじゃ駄目だよな……うーん……。



 ……。



 あ、あれやってみっか。



「よーし、それじゃぁ、あの広場は危ないから避難する様に皆に言ってきてくれ」


「「「「承知しました頭領! ニンニンニーン!」」」」


 わーと子供忍者らが、広場を開ける伝言を伝える為に走っていったり、飛んでいったりした。


「どうするんじゃ? 儂は過酷な任務の為に体を壊して、今はヨワヨワという設定だからいいんじゃが、お主は現頭領じゃろ?」


「あーまぁなんとか誤魔化すよ、へいへいサヨさん聞こえますかおーばー」


 俺は自身の体の中にあるナノマシンに意識を寄せると銀河ネットを使い、母親とかに連れていかれたサヨと連絡を取って段取りを進める。



 ……。



 ……。



 広場を開けるだけでよかったのに、何故か広い敷地に居た子供達全員が集まって見学をする事になってしまった。


 というか数百人は軽くいるんじゃね? 多すぎだろ……。



 俺は彼らが固唾を飲んで見守る中、空いている広場に向けて。


「 臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 列! 在! 前!」


 とかなんとか言いながら、両手で中二病な頃に練習をした印を結ぶ。



 そして。



「『ククツ流忍道』秘の二番! 召喚の術!」


 俺がそう言うと、ボフンッと広場に白い煙が蔓延し、しばらくしてそれが晴れた後には。



 一軒家が余裕で建ちそうなくらいの大きいテーブルに、袋入りの様々な種類のお菓子類が山の様に……これも比喩でなく実際に山になって存在していた……サヨさんちょっと多くね?



 ……まぁ、多くて困る事も無いか。



「未来の凄腕忍者達に俺からのプレゼントだ、みんな好きなのを食べていいぞ、ただし! お菓子の取り合いでケンカをする子は『ククツ流忍道』からの破門を言い渡すから気をつけろ!」


 子供達は俺の言葉を聞いて一瞬ビクッとするも、仲良くしていればお菓子食べ放題な事に気付いて、わー-っと子供達が皆してテーブルへと駆け出して行った。





「すごいのう、どうやったんじゃ?」


 爺ちゃんが目を丸くして驚いている。


「まぁちょちょいとね」


 誰が聞いているかも判らないので言葉を濁す俺。



 実はこれ、内乱の時に押さえた公爵の研究所の実験データを元にした物質転送だ。


 まだ精度の問題で生物は危険だが、壊れてもいい無機物なら衛星軌道あたりにいるサヨの補給艦から地上くらいまでなら、そこそこの成功率で送れる様になった。


 旧銀河帝国の遺産で似た様な物があるのだが、公爵はそれを研究していたらしい。


 遺産の方だと例え生物でも星系内くらいなら余裕で何処にでも飛ばせるから、技術力の格が違うんだけどね。


 銀河ネットジャマーといい、この物質転送装置といい、公爵は優秀な研究者達を纏める才能があったんじゃないかな


 ……平和にやってりゃ歴史に名を遺しただろうにさ……内乱の件で名を書類から抹消されたからな……ただの『元公爵』な犯罪者としか残らないんだ……。




 まったく馬鹿な奴だよ……。


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