第19話 【おまけ話】補給艦は補給艦であって戦闘は基本的に出来ないんです
◇◇◇
【おまけ話】なので時系列は続いていませんのでお気をつけ下さい
この話は皇帝陛下に会う前の、シマ一人で適応体捜索任務を遂行していた時のお話です
◇◇◇
『アジ型適応体は全て撃破、ですがオニカサゴ型適応体に逃げられてしまいました、第5惑星に逃げ込んで擬態して潜んでいる様です、現在探知不能』
「あらら、まぁ位置が悪かったしこちらも戦力を出し過ぎたのかもな」
今俺は第8艦隊から離脱してサヨと共に適応体探索の任務についている。
そこで出会ったオニカサゴ型とアジ型適応体合わせて8匹、戦域も広いので戦いたい奴は戦場上限まで出て良いぞと言ったら、ブレインユニットが操る戦艦群が大量に出撃し始めた……。
相手が10にも満たないのに、こっちが万単位で出てきたらそりゃ逃げるわな……。
ブレインユニットさん達はシマポイントのせいか、張り切り過ぎの様だった。
『こちらが逃げ込んだ惑星の映像ですシマ様』
サヨがそう言って見せてくれたいくつもの映像は……。
「すごいな、海があって大陸も程々に存在していて、植物も大量に生えてるし、そこのズーム映像の中でちょろっと動いているのは大型の動物か? これってテラフォーミングしないでも移住出来ちゃうんじゃね? 一級品の移住適応惑星じゃんか……」
通常だと新たな移住先を探す場合には、水分がある程度あって、尚且つ重力が丁度いい惑星があれば十分当たりと言われる。
そういった惑星は長い時間を掛けて、改造や調整をして初めて人類が住める様になる。
その改造は長い場合世代をいくつも超えるとも聞いた事があって、身体の強化措置が当たり前の宇宙なのだが、安い強化措置でも地球人の一世代は150年は突破している。
つまり百年とかは軽くかかるのが惑星の調整なのだが……。
『そうですね……調査機器を降ろしてみないといけないですが、アリアード皇国の技術レベルですと20年はかからないという程度でしょうか、この情報を売るだけで普通の地球人なら一生どころか子々孫々10代は遊んで暮らせる金額が手に入りますね、まぁシマ様だと一代でしょうけど』
なんで俺だと一代なんだよ、そんなに無茶な金の使い方はせんわい。
「となるとオニカサゴ型適応体を倒すために焼き払うのは勿体無いよな……ん? 皇国の技術レベルって事はサヨがやったら?」
『私なら1年もあれば……いえ空間歪曲場に収納して内部時間を加速すれば、シマ様の体感で数日で終わりますけど、今は惑星に適応体が居るので無理ですね』
「すごいなそれ……でもサヨのそのすごい能力って攻撃には使えないんだよな?」
『そうですね、使えないというよりは使う事を許されていないという表現の方が正しいです』
「前もちょろっと聞いたけど、もう少し詳しく説明して貰っていいか?」
『了解しましたシマ様、私を作った旧銀河帝国の技術者が設定した規定により、補給艦としての分を超えた行動が難しくなっております、つまりブレインユニットを伴った戦艦を作成する事は出来ても、戦艦に搭載されているビーム砲を製造して私の補給艦に装備させる事は出来ないのです』
「なるほど、昔サヨに出会ってすぐの頃、自分には戦闘力が無いって言ったのはそういう事か、てことは恒星やブラックホールを食う事は出来ても?」
『はいシマ様、それらの力を適応体を倒す事には使えません……ただし』
「ただし?」
『自爆による攻撃は許可されています、浪漫らしいですよ?』
「旧銀河帝国の技術者はアホか! そんな事はせんでいい!」
『自身が無事な裏技の様な自爆の使い方はあるんですけどね……使わないに越した事はありませんね』
こうして俺とサヨが会話をしている間にも、惑星の各所を映した映像が切り替わって流れていき適応体を探しているのが判る、惑星そのものはビリアル型巡洋艦数千隻で囲んでいる。
「敵がいたら惑星とかを吸収出来ないって事は……適当な惑星とかを吸収しようとして出来なかったら敵が居るって事になるのか?」
『いえ、私が敵を認識しているかが問題なのであって、隠れている敵ごと空間歪曲に仕舞ってしまう事も有り得なくは無いです、ただし内部で敵を確認した場合、一切手出しをせずに外に放流する必要があります、まぁ外に出した瞬間に戦艦群で駆逐をしますけど』
うーむ、なんだろう旧銀河帝国の技術者って技術の無駄使いというか……浪漫とか言い出しているあたりを鑑みるに『こんな事もあろうかと』とかそういうセリフが好きそうな気がしてきた。
つまり技術者的変態だな、常人には理解出来ない独自ルールとか持ってそうな奴らだ。
空間投影モニターに流れる惑星の映像情報を流し見しながら会話を続けていく。
「適応体見つからんな……サヨに規定されている禁止規定な物は他にもあるのか?」
『そうですね……戦闘に使う物は登録されている物しか作れません、多少の改造や応用は良いですが、新たな宇宙戦艦等の新規設計等は許されていません』
「こないだの旧型巡洋艦も、頑なに『修理』だと言っていたのはそのせいか」
『はい、あれは『修理』ですので問題は無いのです』
巡洋艦1隻を『修理』すると10隻ほど生まれたり、尚且つまだまだ修理できるパーツを保持しているらしいのだが……。
俺の知っている『修理』とは概念が違うらしい……いやまぁこじつけて禁止規定を迂回しているんだろうけどな。
そういう迂回路もわざと残してんじゃねーかなと思うのは疑いすぎかなぁ? でも変態技術者だしなぁ……。
「禁止規定はそんな所か? 他に項目は無い?」
『……』
サヨの言葉が止まり沈黙が訪れた……む? んー? ……あ!
「言えない事は無理して言おうとしなくていいぞサヨ」
『ありがとう御座いますシマ様』
言えない何かもあるって事だな、まぁ生活するのに問題なきゃいいだろ。
それを知った所で、俺がどうこう出来るもんでも無いだろうしな。
『シマ様』
「んーどうしたサヨ」
大陸の内部をズームした映像に映る、ゾウとキリンを足した様な動物を見ながら返事を返す。
『私は自ら考えて行動をし様々な経験をしていく事で、成長や進化をする事を許されています、なので、いつか……いつの日か……私を補給艦とした技術者を超えて見せます! それまでお待ち下さいね』
サヨはいつもの無表情でそんな事を言った。
「よく判らんが……期待しているよサヨ」
『はいシマ様!』
サヨが元気よく無表情で返事をした時に、空間投影モニターから警告音が響く。
「見つかったか? んー……同じ山の地形が二つ並んでいる様に見えるな……片方がそうか?」
『可能性は高いですシマ様、航宙母艦ダストトレイル型及び戦闘機ファイヤーフライ型スクイード3号の発進許可を下さい』
「3号ってーと対地爆撃型だっけか」
『惑星に巡洋艦のビームを大量に打つと環境破壊が酷い事になりますから、まずはチクチクと細かい攻撃をして適応体を炙り出します、ビームは確実にトドメを討てる時だけにしましょう』
「よーしじゃぁ攻撃許可を……なぁサヨ、この惑星って知的生命体居ないよな?」
『……』
サヨは無表情で黙り込んでしまった。
しかもその額に汗がタラリと一筋流れた、いやお前それわざと出してるだろ……芸が細かいなぁサヨさんは。
「もしもしサヨさん?」
『確認に一日ほど頂きます』
「調べてないんかーい! いや俺もちゃんと言わなかったのが良くなかったけどよ」
『では調査を始めます、惑星調査用の機器を揚陸艦クロージャー型にて惑星に降下させます』
調査機器に大気圏突入の能力は無いのね。
「よろしく、時間かかりそうだしちょっと休むかな……オニカサゴ型適応体が動き出して宇宙に飛び出す様なら撃っていいからな」
『はい攻撃許可を頂きました、では休憩にご一緒します、私の中の別荘惑星に降りますか?』
ご一緒って……まぁサヨの処理能力なら俺と一緒にご飯食べていても、全く問題なく各種処理とかは出来るんだろう……本体は補給艦だしな。
「いざって時に戦闘指揮室にすぐ戻れないのは問題だろ? 補給艦内部の自室でいいや」
『え? 別荘に居てもこの戦闘指揮室に居ても大してかわりませんよ?』
「いや、そうなんだけどよ……波が穏やかな綺麗な浜辺でビーチチェアに寝転んで、トロピカルカクテルを飲みながら適応体に対する戦闘指示を出したりするのは……さすがに気分がなぁ……いやでもまぁ今更か……」
『そうですよシマ様、気にしないで別荘に行きましょう、ビーチチェアを新しい4人以上寝れる大きい奴にしたんです! なので一緒にノンビリ浜辺で寝ましょう、ほら火砲は寝て待つと地球では言うじゃないですか』
「なんだろうか、果報のイントネーションが微妙に違った気がするんだが……気のせいか?」
『ほら早くシマ様! 私とビーチチェアの弾力を一緒に確かめに行きましょう!』
サヨは俺の手を取り、別荘惑星に行くべく降下用のスクィード5号が待機しているドックへと引っ張っていく。
「いやサヨさんさ、お前は弾力を確かめるってセリフを言いたいだけなんじゃね?」
サヨに引っ張られつつも、サヨのセリフに対しての突っ込みを入れ、そして別荘に着いたら何を飲もうかなと考えながらドックへと向かう俺だった
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