第18話 【おまけ話】奪ったのなら返すのが当たり前らしい

 ◇◇◇


【おまけ話】は時系列的に続いていませんので、よろしくお願いします


 ◇◇◇







「シマ様ちゃんと見て下さい! ほらこの透け透けレース部分とかどう思いますか?」


 今俺の前にはブラとパンツのみの下着姿で、モデルポーズを取っている美人が居る。


「う、うん、すごく似合っていて可愛いと思う……よ?」


 最後が疑問符になってしまうのは勘弁してくれ。


 だって君でもう400人を超えるんだもの、脳の中が美人や美少女の下着情報で一杯になり、ゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。



「そうですか! では私はこれにしますねシマ様! それじゃぁ二人っきりでじっくりレースの透け具合とか確かめたい時は呼んで下さ――」


 そう言って下着姿の美人は俺に近づき……。


「ピーっイエローカードです、そういうのは私とシマ様の結婚式が終わってからにして下さい」


 俺の後ろに居たサヨがそう言うや、軍服の女性達がさきほどの美人を何処かに連れていく。



 結婚式の後ならいいらしい。



 俺は今、サヨが自身の中に確保している別荘惑星の、リゾート街に作られたショッピングモールの中にある女性用下着専門店を渡り歩きながら、美人や美少女の下着姿を眺めつつ感想を言うマシーンになっている。



 何故こんな事になっているのか?



 俺は戦闘機のブレインユニット達に、機体を貴族に渡すからよこせとお願いしてしまった。

 サヨが言うには、それは自分の履いているパンツを渡せと言うがごとき所業だと言う。


 ならば、事が終わったのだから彼女らの下着を選ぶべきだとサヨに言われた……。



 ……どうしてそうなる?



 正直理屈がおかしい気もするが、大事な機体を貴族に引き渡したのは事実だ。


 内乱を起こした公爵をとっちめてから、戦闘機の大部分は取り返したのだが。

 各地の公爵派貴族に研究用にと分配されていた物もあり……辺境伯領地の適応体討伐に使うという名目すら守らないクソ共だった。


 取り返した機体もブレインユニット達の感覚からすると、下着泥棒に盗まれてから返ってきたパンツの様なものらしいので……。


 機体をサヨに吸収させて資源に戻し、ブレインユニットに紐づく新規の戦闘機を皆に作る事になった。



 そうやって少し呆けて考え事をしていたら、横にいるサヨが俺の腕を掴んで揺らす。


「ほらシマ様、呆けてないでちゃんと見てあげて下さい、彼女達は自分の大事な物をシマ様によこせと言われたのですから、新しい下着をきちんと選んでプレゼントするのは、男の甲斐性という奴ではないかと思うのです」


 いやだから大事な物って戦闘機だろうに……いやまぁそれは良い、それはどうでも良いんだが……。


 俺の後ろの壁際で、椅子に座っているクレア皇女の機嫌がどんどん悪くなってるんだよな。

 もうすぐ結婚式だってのに……。



 ……んー、……あー、……そうだなぁ……。



 俺は戦闘機パイロットなブレインユニット達の下着ファッションショーを一旦止めて、少し時間を貰った。



 そうして俺は、壁際の椅子に座っているクレア皇女へと歩み寄り。


「クレア皇女」


「なに? シマ君」


 俺の呼びかけにも答えてはくれるが、機嫌の悪そうなクレア皇女だった。



 サヨとの結婚を先にやる事や、他の側付きやブレインユニットの皆が側室候補な事に、納得はしていると言っていたが、まだ割り切れない物があるんだろうか?



 いや……そんな感じでも無いんだよなぁ……。



「クレア皇女、もうすぐ俺達の結婚式だよね?」


「そうよ……そうなんだけど……」


 うーん……自身でも不機嫌の理由が判らない困惑した様子というかなんというか……。


 そういや日本に居た頃に、姉貴の友達がマリッジブルーになった話を聞いた事があったっけ。


 理詰めで考える男には、理解出来ない事だと姉貴が言ってたな……この不機嫌さはそういう事なのかもしれない?



 ならば……感情の不安定な揺らぎを、さらに大きな別の感情の波で押し流してしまおう!



 俺は座っているクレア皇女にさらに近づくと、不機嫌そうにペタンと閉じてしまっている、その可愛らしい狐耳の側に口を寄せ小さな声で内緒話をする事にした。

 まぁ周りの子は皆高性能なので聞こえてしまうのだが、内緒話で伝えているという行為が大事なのだ。



「俺達の結婚式後の初夜で着る下着を一緒に選ぼうか?」

 そうASMR攻撃をクレア皇女にするのであった。


「ほひょっ! ひゃぁぁっぁぁん! えええ!? ……それは! その……」


 耳の側で囁いた俺のASMR攻撃のせいか、座りながらピョコンと一瞬飛び上がったクレア皇女は、驚きを持って混乱していた。


 だがしばらくすると、立ったまま頭を下げて顔を寄せていた俺の耳の側に、クレア皇女が中腰になって口を寄せて来ると。


「し……シマ君はどんなのが良い?」


 そう顔を真っ赤にして、内緒話っぽく聞いてくるのであった、うん、すごく可愛い。


「美人なクレアお姉ちゃんが着るんだから、何でも似合いそうだけどそうだなぁ……やっぱり初めてだしエッチィのがいいかな」


 そして駄目押しにお姉ちゃん呼び攻撃もしておく。

 ただしこれはあんまり使うと慣れがきてしまいそうなので、単発撃ちで使う。


「そそそそうね、私はシマ君のお姉ちゃんでお嫁さんにもなるんだもの、シマ君をリードするセクシーで……ちょびっとエッチィのを選ばないとね……一緒に探してくれる?」


「勿論、貴方の為なら喜んでお付き合いします、そうそう、向こうの獣人女性下着の専門店に可愛いネグリジェがあったんですよ、行ってみましょうか」


 俺は機嫌の悪さなんて吹き飛んだらしいクレア皇女の手を取って立ち上がらせると、手を繋いだまま下着探しの旅に出るのであった。



 そうして俺がクレア皇女に、可愛いだの綺麗だのセクシーだの言いまくったせいなのか。

 そのまま他の皆と一緒に、下着でのファッションショーに参加してしまうクレア皇女。


 やっている時はノリノリで、ポーズとか取ってきたしモデルさんみたいだなーと思ったのだが。



 全てが終わってブレインユニット達とも解散になる段になり、やっと自分のやっている事を深く理解し、恥ずかしがって顔を両手で覆いしゃがみ込んでしまった。


 頬も真っ赤であまりに可愛らしいので、そのままお姫様抱っこをして補給艦へと帰る事に。


 お姫様抱っこで歩いていると、クレア皇女はやっと落ち着いたのか、顔を覆っていた両手を開けてそのまま俺の首に抱き着いてきた。


 恥ずかしいのか目をつぶっているけど、頬の赤さは収まる所か増している。


 そしてクレア皇女は少しだけ上体を起こし、俺の顔に近づくと。


「シマ君のいじわる……初めての日は覚悟してね?」


 そう俺の顔の横で囁いたクレア皇女だった、可愛いなぁもう……。






 いやーこんな可愛いクレア皇女がなぁ、俺のかーちゃんより年上だとは――


「シマ君?」


 ひぇ! 耳元で冷たい声が聞こえた。


 俺は自分の思考を変更し、今日の晩御飯の事を考える事にした。

 ……いやーまじで女性の勘って怖いわぁ。



 補給艦に帰ってもまだクレア皇女をお姫様抱っこをしていたのだけど。

 近衛兵な側付きさん達の指摘により、自分が可愛いネグリジェと下着姿のままだった事にやっと気付くクレア皇女。


 彼女は俺の頬を引っぱたいて自室に駆けこんで行った、いやー役得役得。


 ん? 勿論下着姿なままな事を判っていて、そのままお姫様抱っこをしました。


 あんなに可愛いくて、もうすぐ嫁になる狐獣人の美人さんをお姫様抱っこしない男が居るか?

 居ないだろう? 強化措置を受けていれば一人や二人や三人でも抱える事が出来る。


 それにクレア皇女が下着姿から元の服に着替えて我に返って居たら、お姫様抱っこは許されなかったかもだしな。

 下着ファッションショーに恥ずかしがって混乱していたあの時はチャンスだったんだ。



 ……俺はさ……クレア皇女がよその男に騙された時の様な事はもう嫌なんだよ。



 だから俺は自分の思う様に行動する、願望は我慢しないし、貴方が大好きで心底欲しいのだと行動や言葉できっちり示していく。


 ……勿論、相手が本気で嫌がる事はしないからね?


 可愛いなら可愛いと言うし、綺麗なら綺麗と言う、好きだなーと思ったら大好きだと口に出して言う事にしたんだよ。



 そんなのは恥ずかしい?



 この広大な宇宙に比べたら、俺の恥ずかしいという気持ちなんてゴミクズみたいなもんでさ。

 それよりも可愛いくて大好きなクレア皇女に、素直にその感情を示してあげる方が大事なんだ。



 それに美人エルフの前で素っ裸で偉そうに『パンツを寄越せ』と言う事以上に恥ずかしい事なんて無いだろう? 



 ん? ……何かいま大きなフラグが立った様な……気のせいだよな?





 そうそう、ちなみにサヨが下着云々で自分もと騒がなかったのは、初めてリゾート街を回った視察デートの時に、あいつの下着を散々選ばされたからだ……。



 ……。



 それと下着回なら俺の下着の話も必要だよな!


 えーと俺の服ってサヨがサイズぴったりなのを準備してくれるから、自分で選ぶ事がほぼ無いんだよな。

 私服もシンプルなのだし普段は軍服だし、ただまぁたまに、前面にゾウさんがプリントされたボクサーパンツとかを遊びでよこしてくるんだよなサヨは……いやまぁいいんだけどよ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る