第12話 BBQの材料に適応体は使いません。

「「「「「カンパーイ!!!!」」」」」


「はいカンパイ」

『カンパイ』


 真っ白な砂浜に、大きく乾杯の声が響き渡る。


 今日は適応体調査開始から一か月の節目という事で、お疲れBBQ会を別荘の側の砂浜でしている。


 参加しているのはサヨの姉妹が半分と、クジで当たったブレインユニット達が同数くらいだ。


 学生服に白衣に巫女服にコスプレにと、サヨ姉妹の服装は彩り豊かだ。

 それに負けじとブレインユニット達も、いつもの軍服でなくリゾート街のお店で買ったであろう服を、思い思いのファッションセンスで着こなしている。


 数百人規模の女性達が、ワイワイと騒がしくBBQを楽しむ姿は壮観だね。

 お肉に野菜に魚貝類にと、皆楽しそうに焼いている。



 今俺の側に居るのはサヨのみだ。



 BBQのルールとして、俺とお話するのも時間制やスケジュールが存在していると説明をされて、今は最初なのでサヨと二人で過ごす時間という訳だ。



「やっと適応体も見つからなくなってきたな」


『はい、巣の規模からしてこれ以上の範囲の捜索は非効率的になります、物資を集めを優先してついでに適応体も探すという形にシフトしましょう、見つけたらそれが渡りなのか巣の一員なのかを見極める感じで行きましょう』


 ふむ、そうなると漁師というより、天然のハチの巣を見つける猟師といった感じだな。


 適応体は獲り過ぎても文句を言われないから有難い。


「まだ物資貯め込むのか……? 適応体の物資のおかげで超弩級要塞の機関部もどうにかなるし、あれが完成したら大丈夫じゃね? だって直径3000kmだろ? 地球の月くらいあるんじゃないかなぁ」


『地球の月より少し小さいですね、作業工程は69%まできました、あともう少し足りない素材がありますので、外れの方の星系を丸ごと食べてしまいたいのですけども……』


 もうすでに適応体の巣は最初に見つけた大きい奴が一か所、そしてそこから分かれたとみられる小規模な奴を数か所潰している。


「うーん……さすがに小惑星帯ならまだしも、星系を飲みこむのは待ってくれってクレア少佐も言ってたからなぁ……済まんが細かい小惑星帯やらで我慢しといてくれ、そのうち許可を貰うからさ、まぁ一つ二つ辺境の星系を飲みこんだ所で、文句は言って来ないとは思うけどな」


『残念です、では要塞の建築をやれる所までやったら、大型弩級戦艦の製造と各種艦船の増強をしておきます、必要になりそうですし』



「それでよろしく、早く向こうも決着つかんのかねぇ……権力争いって面倒だよな、いっその事何処かに国でも作っちゃうか? なんてな」


『それもいいですね、隣の銀河に行ってみるのも楽しいかもしれません』


 俺の軽口にサヨも軽口で返してくる。

 造られた存在で戯言を言えるってのもすげーよな。



 そんで権力争いってのは、軍の上層部や皇族や貴族の中で、ちょっと揉め事が起きているらしいんだ。


 まぁ切っ掛けは俺のせいっぽいが……そもそも俺を駒にしたいって時点で知ったこっちゃない事だよね。

 なので一か月たってもまだ帰れない。


「こうやって皆で楽しめるから正直アリアード皇国に帰らんでもいいんだけど……まぁクレアさん達や家族の皆がちょっと心配ではあるな、俺の地球の家族も皇帝陛下に保護されたって言うしよ……爺ちゃん婆ちゃん達は驚いているかもな……姉ちゃん達は楽しんでそうだけど」


『その辺りは私の方で監視してますから大丈夫です、潜宙艦のみで構成した分隊艦隊もこっそり置いていますから』



「そうだな……、ハハ、ばれたら反逆者扱いにされそうだけどな」


『私の中にいるシマ様をどうにかするのならば、人質しか考えられないですから、対処をするのは当然の事です』



「分艦隊って言うけど、サヨから離れれば離れるほど戦闘能力が落ちるんだっけか?」


『銀河ネットが繋がる場所ならほぼタイムラグ無しで運用できますから……それでもまぁ数%落ちるかもしれません、なので遠隔操作じゃなく現地に行きたいとの声がありますが』



「それは駄目だ、ただでさえ作戦の性質上義体……生身でここから離れている奴もいるんだし……あいつらには自分の命も大事にしろって、ちゃんと命令してあるよな?」


『してありますが、それを聞く者は一人も居ないでしょう』



「はぁ……仕方のない奴らだ……」


『彼女らはシマ様の事が大好きなのです、なればそのご家族も命を賭けても守るでしょう』



「……内乱は起こるのか?」

『起こります』


 サヨが断定するなら起こるんだろうな……。


 アリアード皇国がこの銀河で一番の勢力を持っているのは、旧銀河帝国の遺産を押さえているからだ。

 だがそれらは扱える者を選び過ぎる。


 あの狼獣人みたいなのを使わなきゃいけないのが、為政者としては嫌なのだろうね。

 道具は使うものであって使って貰うものではない、だったか……。


 でまぁそこに俺が提供した『シマ型巡洋艦』だ。


 それらを大量に獲得できれば覇権も取れると勘違いするアホウが……出てきたらしい。


 俺の件は切っ掛けであって元々やばい内情だったんだろうね。

 そりゃ銀河ネットだって遺産で運用してるらしいし、それらがないと恒星間のリアルタイム通信が不可能になるらしいからな。

 通達や情報収集に船の早さが影響してくる世界になったら……各地の領主がこっそり戦力増強するのも判る話だ。


 領主って言っても、元々は一国の王だった家系も多いからな。


『もうそろそろしたらシマ様は皇帝の前に呼び出されます、その時になにやら事を起こす画策をしている者が居るのですが……内容はほぼ掴んでおります、ですが私のツテは銀河ネット経由のみなので、どうしても情報に穴が空いてしまう事もご理解下さい』


「それはまぁしょうがないさ、臨機応変にやるしかないよな……はぁ……こんな事しか言えない俺はつくづく無能だと思い知るよな……」


『シマ様には私達がついております』


 サヨの言葉と共に、近くにいたサヨ姉妹達やブレインユニットな女の子達も、全員が俺を見てコクリと頷いてきてくれる。


「ありがとう皆……よし!、そろそろ重い話はやめて楽しもうか!」


『了解しました、ではお疲れ様BBQ会のメインイベント『シマ様と交流会』を開始します』



 ベタベタな名前だな……。



 そうして俺の前にまず一人目が現れる。


 黒っぽい和服を着ていて、ちょっと年齢が高めに設定されている義体っぽい。


「1番サヨ姉妹が一人、シマ様の兄嫁だったけど兄が病気で亡くなってしまい嘆き悲しみ、それをシマ様に慰められているうちに好きになってしまった未亡人設定人格です、よろしくお願いします」


「長いしいきなり設定が重いよ! 普通でよくね? 後、俺には姉しか居ないんだけど……」


 俺が突っ込みも入れるも、それに対する返事は無く。

 サヨ姉妹の未亡人は、俺の座っていた椅子に無理やりそのでかい尻を潜り込ませて来て、さらに俺にしなだれかかる。


「ねぇシマ君、私すごい寂しいの……ベッドで慰め――」


『ピーーッ、レッドカードです、1番退場!』


 サヨが笛で音を鳴らすと、わらわらと人が集まり未亡人は連れていかれた。


「どういう事?」


『直接的な表現はルールで禁止されています、お触りも局部は禁止です、あ、シマ様からするのはおっけーです……が、やりたくなったら最初は私でお願いします』


 そんなルールがあるのね……っと俺の前にまた女の子が立って居る。

 ツインテールでアイドルに成れそうなくらいの美少女だ。


「2番巡洋艦ブレインユニットが一人、トウトミと申します、えとえと、握手お願いします!」


 トウトミと名乗った美少女は、真っ赤な顔で俺の前に手を出している。


「ああうん、よろしく、いつもありがとう……これでいい?」


 俺はその手を取り握手をした、するとトウトミは。


「ありがとうございますシマ様! では次はトウトミちゃん可愛いって言っ――」


『ピーーッ! 時間切れです、次の方』


 サヨがそう言うと、またワラワラと人が集まって来る。


「御無体なー---」


 俺の方へ手を伸ばして叫びながら、トウトミは他の女子達に運ばれて行った。



「3番サヨ姉妹が一人――」

「4番駆逐艦ブレイン――」

「5番サヨ姉妹が一人――」

「6番戦闘機ブレイン――」



 ――



 ――



 そうして続く彼女達との交流会、俺はその合間に横で時間を管理しているサヨに問いかける。


「なぁサヨ」


『はい時間です、交代して下さい、なんですかシマ様』



「334番戦艦ブレイン――」


「335番巡洋艦ブレイン――」



「これいつ終わるんだ? なんか気のせいかBBQに居なかった子が並んでいるように思うんだが……」


『そうですね、BBQは物理的な広さや見栄えで人数を制限しましたが、これは順番に交代すればいいので、当たり率も高いと皆さんに評判でした』



「340番サヨ姉妹が一人――」


「341番航宙母艦ブレイン――」



「まて……すでに百万を超える義体ブレインユニットが居るのに当たり率が高い……だと?」


『こら! そこに触るのはNGですよ! 退場! では次の方~、ご安心下さい戦場クジに比べればの話ですから』



「353番揚陸艦ブレイン――」


「354番潜宙艦ブレイン――」



「ああ、そういう事か、戦場だと多すぎても動きづらいもんな、びびったわ、じゃぁあと何時間くらいで終わるかな?」


『はい次の方~、そうですね、このペースだと……後100時間と少しでしょうか?』



「やっぱそういう落ちか! 絶対そうだと思ったんだよ! なぁサヨ‥‥‥人間はそんなに起きていられる生き物じゃないんだよ……お前やっぱどっか壊れてるだろ……」


『強化措置を受けた体なら連続稼働で10日くらいでも余裕ですよ?』



「まじ?」


『おおまじです、ほらシマ様、次の方が待ってますよ』



「ああすまん、はいどうもいつも助けてくれてありがとうな! ハグ? 勿論おっけーだ、どんとこい」


 そうして俺は24時間耐久所か、100時間耐久の交流会を行って行くのであった……。




 いやまじで、精神は別にしても、体力的には軽くいけちゃったのには驚いた。

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