第2話 補給艦の艦長に成りましたが、俺の性癖が周りの人にバレて居たそうです
ピーピーッと小さな音が聞こえ……俺はその音に誘われるように意識を取り戻していく。
目を開けると目の前の景色に妙な蒼色がついてぼやけている。
目が悪くなったのだろうか? 俺は手をあげて目をこすろうと……ん?
足が地についていない、手を動かすと反作用で体も動く……あれ?
俺、色水の中に浮いてねぇか!?
いそいで上に行かないと息が……息が……苦しくない……。
呼吸を意識すると、液体が肺に入っていっているのが判るし苦しくない。
よく見るとぼやけた景色の向こうに人の姿が見える、そうだ、俺は……。
……。
足元から急に引っ張られる力を感じる、地面に引っ張られるように自然と地に足が着き、俺の周りの蒼色のついた液体が急速に足元に吸い込まれていく。
しばらくすると頭の上から空気部分が降りてくる、強化処置が終わったようだ。
全ての蒼い液体が排出されると急激に吐き気を催し、体に残った色付き水を吐き出していく。
何故か肺からも出ていくのが判るから気持ち悪い……。
目の前の透明なガラスだか何かで出来た円筒形の筒が上にあがって、足元から外気が流れ込んでくる。
そして一人の金髪ロングヘアのエルフみたいな女性が近付いてくる。
『お疲れ様ですシマ様、強化処置は予定通りに完了しました』
「ああ……サヨか、液体が肺に入ってくるのって気持ち悪いのな」
『そのうち全部蒸発しますので無理に吐き出さなくても大丈夫ですよ』
俺がサヨと呼んだその女性は、旧銀河帝国の遺産である兵站用補給艦の人格AIが、物理的な行動をするために用意したアンドロイドだ。
中身というか思考は、俺が今乗っている補給艦の方でしているので、ただの器に過ぎないらしいんだが……。
「なぁサヨ」
『なんですかシマ様』
俺はそのサヨの義体に向けて思っていた事を質問していく。
「最初に出会った仮想空間やモニターの映像と体格が変わっているのは、何か理由があるのか? その胸とか明らかに盛っているだろう?」
そうなんだよね、映像でのサヨは美人だけどお胸はあんまり……少し……貧……ペッタ……板? だったのに。
今は結構大きくて、紺色のワンピースの胸元をぱっつんぱっつんに張らせていて目の毒、いや眼福ではあるんだがね。
さらに紺色で膝丈のシンプルなワンピースの上に白衣を纏い、足元は黒のローヒールを素足で履いていて、顔には細いリムの眼鏡を掛けているので、美人巨乳眼鏡医師さんといった所だ。
『はて? 私はご主人様の願望に基づいて義体を作ったまでですが……ああ! 大丈夫ですシマ様! ちゃんとシマ様の幅広い性的嗜好に対応するべく義体データも各種揃えております、義理の姉型、義理の妹型、義理のお母さん型、幼馴染型、学校のクラスメイド型、先輩型、後輩型、職場の同僚型、ナンパ用も一期一会型として巫女さん型や水着型や浴衣型等々各種……ちょっと多すぎてデータを圧迫してるので順次作っちゃっていいですか?』
「なるほどな、それだけ種類があれば俺の幅広い性的嗜好にも対応できるよなウンウン、しかもちゃんと家族は全て義理にして倫理観もニッコリだね、っじゃねーよ!! 俺はお前の胸が偽装じゃねーのかって言おうとしただけで何で俺の話になってるんだよ! それとクラスメイドってなんだよ、クラスメイトの間違いじゃねーのか!? それにデータを圧迫ってお前のデータを圧迫できるくらい俺の守備範囲は広いってか、銀河全ての人類をデータ化しても余裕で保持できるって言ってたじゃねーかお前は! もう勝手に言ってろ」
白衣を着たサヨは胸を押し上げるように腕を組み、片手だけ持ち上げて口の下に人差し指をあてて顔を少し傾け、困った風な表情をかもしだし。
『メイドや執事を育てる専門学校のクラスメイトでしたがお気に召しませんでしたか? シマ様の秘密なムフフアーカイブのデータから嗜好を解析したのですが……あ、大丈夫ですよ、見た目はエルフだけじゃなく獣人や地球人タイプにも出来ますから、データの圧迫の件ですが私は純情可憐で清楚なAIなのでそっち方面に使える領域が狭いんですよ、ですがまぁシマ様のご命令通りにしますね』
「そうか、やっぱりケモ耳メイドは憧れだよな、って違うって言ってんだろ!!! 俺の秘密なムフフアーカイブを見たのか? あの銀河ネットのアーカイブは宇宙に来る事になった時に一旦削除してあるから、今は俺の端末に移したデータしか無いはずなのに……」
『え? あんな消し方をしても駄目ですよシマ様、データは住所を示す物を消してもデータそのものは残っているんです、完全に別の物で上書きとかしないと……というかアリアード皇国の軍部にもシマ様の秘密なムフフアーカイブは知られていますよ? 訪ねてきた軍人達は女性ばかりでシマ様の好みに合ってませんでしたか? あの人達はハニートラップ……いえシマ様が手を出しても良い相手で、皇国と絆を深めるために揃えられた人達だったのですが……シマ様が一人にもお手をお出しにならなかったので秘密なムフフアーカイブのデータは偽装で、シマ様は男性がお好きなのではとの意見も出ていますね、まだ女性好きの意見の方が優勢ですけども、次に何もしなかったら対応する相手がムキムキマッチョや細めの男の娘に変わると思われます』
「え? まじで? いや……え? まじで!? 俺あの指揮官っぽい豪華軍服獣人さんすっごい好みだったんですけど、獲物を狙うような冷たい眼差しがちょっと怖いけど、フサフサの狐耳とホワホワの尻尾とか超モフりたかったんだけど! そんな事なら手を出して! って……いやいやさすがに任務でそれをやれって言われた人に手は出せないよ……すごく……すごく残念だけどな……」
『シマ様のお相手は志願制ですよ?』
「はぁ? え? あの軍服獣人さんや他の女性兵士さん達って、志願して俺の相手になろうとしたの?」
『勿論ですよ、私のような素敵な遺産を手にしたシマ様は、超お金持ちでエリートの道が約束されていますので、そのお相手を募る志願は皇帝の近衛部隊からのみ受け付けたそうですが、数百人単位の応募があったそうですよ?』
「まじかぁぁー-!!!! 勿体ない事をしたぁ……あ、いや、次に報告か何かで会った時にアプローチしてみよう、うん、なんか先々に希望が見えてきてこう心が解放された気分だなぁ」
『ちなみにシマ様が言っている指揮官なお方ですが、なよっとした情けない年下が好きだそうで』
「それは! 認めるのは悔しいが俺とも相性抜群じゃねぇ!? なぁサヨ‥‥‥一回皇国に帰らねぇか? ほら護衛用の駆逐艦も出来たしさぁ、な?」
『……その指揮官様なのですが、シマ様に一切相手にされなくて自分の魅力の無さに絶望をしていたところを、なよっとした男性士官に慰められてお付き合いを始めるそうです、近衛なので寿退役は許されませんが新婚旅行用のパンフレットを各種大量に注文したそうですね、ちなみに既婚者はシマ様の対応に出てきません』
「……なん……だと……あのモフモフ狐耳やモフモフ尻尾が他の男の物に、うぐぁぁぁ!!! 俺が! 俺がもう少し自分の性的嗜好に素直であったのなら!! 告白をしていたらぁぁぁ!! くぅそおおおお!!」
『シマ様、後悔というのは後でするものなのです、なのでこれからは、ご自分の性的嗜好を素直に表に出して生きて下さい』
「ああ、分かったよサヨ、俺はこれからは自分の性的嗜好を素直に表に……出したらただの変態だろうが! サヨ、お前俺に何を言わせようとしてるの?」
『ご自分で自分を変態だとおっしゃっていますがよいのでしょうか、ですがご安心下さいシマ様』
「俺の性的嗜好を表に出したら変態だって言ってるんだよ、今は出してないからセーフだ! で、何を安心しろって?」
『素っ裸でご自身のナニを自分の従者に見せつけつつ、開放的な姿で会話をするシマ様は……すでに十分変態でございます』
俺はサヨの言葉を受けて自分の体を見下ろした。
パォーン。
俺の息子が元気よく返事をしてくれた。
俺は考えをまとめるために天井を見上げて、顎に手をつけてしばし黙考する。
「……」
『……』
そしてカッっと目を見開きサヨの方を向く。
「もっと早く言えよ!! 心が開放されるどころか体が開放されてたじゃんか!」
『私に対して一皮むけた姿を自慢げに見せつけているのだと思いまして、ご安心下さい、強化措置のついでに元に戻らないようにしてあります』
「それって強化措置で俺が強くなったって意味だよね? 強さが戻らないって意味だよね?」
『私のような純情可憐な女性にそんな事を言わせようとするなんて……仕方ありません私はシマ様の下僕! 願望に応える義務があります! では自律AIサヨをノーマル女医さんモードからアブノーマル女医さんモードへと変更し――』
「せんでいいわ! いいからはよパンツをよこせ!」
『もぅ~シマ君ったら私のパンツがそんなに欲しいだなんて……変態な患者さんなんだから……他の患者さん達にはナ・イ・ショ・だぞ、よいしょっと』
サヨが紺色ワンピースのスカート部分をまくりあげ始める。
「お前のパンツじゃねーよ! 俺の下着を用意しろって言ってるんだよ! てかやっぱお前どっか壊れてるだろー!!!!」
俺の突っ込みが、地球から遥か離れた宇宙の片隅で響き渡るのであった。
「所でサヨさん」
『何ですかシマ様』
「俺の秘密なムフフアーカイブに対して意見がどうのって話なんだが、誰が意見を出してるの?」
『皇国本星中央防衛大学を優秀な成績で卒業をした者のみで構成されている、皇帝直属軍参謀本部の会議室でシマ様の秘密なムフフアーカイブのデータを基に、彼ら彼女らが真剣に話し合いをされた結果の意見ですね』
「なにその地獄絵図な会議は……取り敢えずその人達に今度土下座でもすればいいかな?」
『その必要は無いかと、一部の将校は資料だと言ってシマ様の秘密なムフフアーカイブデータを複製して持ち帰りましたから』
「……どんなに頭が良くても男ってのは変わらないのか……」
『え? 女性将校も持ち帰ってますよ?』
「……すっごいエリートで雲の上のごとく偉い人達なんだろうけども、彼ら彼女らに会う時が来ても緊張しなくなったかもしれん……」
『良かったですねシマ様』
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