第25話 最終話 真実を見つけた二人

 今回のハプニング旅行で、裕星と美羽には十分すぎるほど身に沁みたもの。それは、仲間たちの惜しみない思いやりの気持ちと、改めて互いの本物の愛に気付いたことだ。






 その夜、ホテルのスイートルームのベランダで、寒空の下、二人は一枚の温かい毛布にくるまり寄り添いながら夜空を見上げていた。


 遥か遠くの空には、昼間のように明るい日本の夜では決して見ることができない無数の星たちの瞬きがハッキリと見てとれた。


 

 そのとき、「あっ、流れ星!」

 美羽が指さした方向に、サーと銀の尾を引いて星が流れた。


「実際、流れ星は映画とかドラマと違って早すぎて願いなんてかけられないよな」

 裕星が美羽を見て笑うと、「ううん、私は願う前に叶っちゃったから大丈夫よ」と裕星に微笑み返した。



 ――この幸せがずっと続きますようにって



 美羽は静かに瞼を閉じて裕星の肩に寄り添った。

 この果てしない宇宙の中で、今は裕星とたった二人きりでいる幸せに浸りたくて、目の前に広がる幻想的な光景すら遮断したかったのだ。


 裕星は、瞳を閉じて自分にギュッともたれている美羽が、満天の星たちの放つ灯りの下でまるで地上に降りた天使のように美しく神秘的に見えた。


「美羽、愛してる。自分のことよりももっと。それくらい心の底から大好きなんだ」


 裕星は少し顔を傾け、まだ目を閉じている美羽の唇にそっとキスをした。美羽は自分がこのまま溶けて裕星と一体化してしまうのではないかと思うほど、今まで以上に裕星の熱い愛を感じていた。


 カプリ島にきらめき浮かぶ無数の星たちに見守られて、二人はこの上ない幸福に満たされていたのだった。









 追記


 美羽は部屋に戻る途中、洋子からの手紙のことを思い出して、テーブルの上においたバッグの中を探って封筒を取り出した。


 裕星は部屋に入るなり、すっかり冷えた体を温めるため、お湯を溜めにバスルームに向かっていった。

 裕星がバスルームに消えると、美羽はオチェアーノのくれた手紙をソファーに座って読み始めた。





『美羽さんへ。波乱万丈はらんばんじょうのイタリア旅行はいかがでしたか? これから先、貴女たちに起きることは、今回よりももっと辛いことかもしれません。


 しかし、この真っ白なドレスのように、どんな困難に遭ったとしても、純白な貴女の心は変わらないはず。裕星も貴女と同じ純白のオーラを持った人間なの。


 二人が力を合わせれば、きっと幸せは二倍になるでしょう。周りに流されることなく、他人に感謝の気持ちを忘れることなく、自分達らしい人生を歩んでね。


 若い頃の私は夫のことを心から信じていなかった。彼は私を心から愛してくれてたのに。彼を亡くして初めて、彼への愛に気づいたの。どんなに後悔しても後悔しきれなかった。もう帰らない思い出よ。


 でも、こんな私たちよりもずっと固く信頼し合い、ささやかで平凡な幸せを選んで芸能界を去った親友たち、それが貴女のご両親だった。


 だけど、神様は残酷ね。死を目の前にしてどんなにか辛い思いをしていたのに、彼ら二人と娘さんの貴女に私は何もしてあげられなかった。

 だから貴女たちにはこんな後悔をして欲しくないの。

 この旅は、私から貴女のご両親へのお詫びの気持ちです。これからは私の大切な娘としてお付き合いさせてくださいね。


 裕星と幸せな未来を築いてくれることを願っています。

 オチェアーノ、もとい真島洋子より』



「洋子さん――本当にありがとうございました」

 美羽の目には涙が光っていた。


「美羽、お湯が溜まったよ、一緒にあったまろうか! おいで」

 バスルームのドアを開けて裕星が上半身だけ覗かせてこちらに叫んでいる。

 美羽は大切に手紙をバッグにしまうと、「はーい!」と満面の笑みで答えたのだった。









 運命のツインレイシリーズPart8『真実を探す旅編』終

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