第11話 デートの終わり
二人でカフェに入り、向かい合って座った。メニューを開くと、すぐ女性の店員が注文を取りに来た。まだ決まっていなかったけれど、とりあえず飲み物を頼む。
「じゃあ、これを」
「はい、今すぐ持ってきますね」
「ちょっと待って。花怜さんは、何を飲みます?」
そのまま店員が離れようとしたので呼び止めて、花怜さんに何を飲むか聞く。
「じゃあ、同じので」
「あ、はい」
という感じで、花怜さんの注文も取ってから店員が席から離れていった。あんな感じで、性別の違いで対応を変えるような店員は多かったりする。今回のは、特に分かりやすい人だったな。良い雰囲気のカフェなのに、少しだけ残念だ。
「何か、食べるかい?」
「いいですか?」
「もちろん」
花怜さんに言われて、再びメニューを開く。美味しそうな料理の写真がずらりと載っている。公園を全力で楽しみながら歩いてきたので、少しお腹が減っていた。
許可を得たので、遠慮なく注文してみよう。ということで、飲み物が運ばれてきてすぐに、食事メニューの注文もする。
「よく食べるね」
「はい。食べるのも、好きなんですよ」
「なるほど。遠慮せず、いっぱい食べな」
「ありがとうございます! 美味しいです!」
注文して、テーブルに運ばれてきた料理を次々と食べていく。軽食ではなく、ガッツリとしたメインディッシュ。カフェでの振る舞いとは思えない食事の量だけれど、遠慮なく食べた。
どうやら僕は、普通の男性と比べて大食いらしい。食欲が旺盛だった。
やっぱり、若いうちに色々と美味しいものを沢山食べておきたい。年をとると、食べるのが辛くなっていくのを知っているから。今のうちに遠慮せず存分に食べておきたいと思っているから、毎回の食事やおやつの時間などを大切にしていた。
「ケーキも注文していいですか?」
「いいよ。どんどん食べな」
「ありがとうございます」
ガッツリ料理を終えてから、次にケーキを数種類、美味しそうなものを選んで注文して食べる。うん、美味しいな。何度も繰り返し、フォークを口に運ぶ。どれも絶品だ。
そんな僕の様子を、花怜さんが見ている。視線を感じる。だから、笑顔を浮かべて食べ続けた。やっぱり、笑っている方が良いだろうから。美味しいと感じる、その感情に嘘はない。だから、僕は素直に楽しいという感情を花怜さんに伝えた。
カフェの食事代は、花怜さんに払ってもらった。その後も引き続き、公園内を観光する。どれも面白い展示品だった。見て回るだけで楽しい。
しかし、時間も過ぎていく。暗くなってきて、そろそろ帰る時間になった。
「家まで送っていくよ」
「ありがとうございます」
僕の自宅は、ここから少し離れた場所にある。そう言うと、花怜さんが自宅まで送ると行ってくれた。その言葉に、再び甘える。家まで送ってもらおう。
再び、花怜さんの高級車に乗り込む。やっぱり、座り心地が良いな。走る車の外の景色を眺めながら、そう思った。
「この辺りで、降ろしてくれると大丈夫ですよ」
住宅街の一角に車を止めてもらった。ここから、少しだけ歩いた先に自宅がある。
「ここで降りるの? 自宅の前まで送らなくて大丈夫?」
「大丈夫ですよ。実は、この辺には信じられないくらい多くの監視カメラが設置してあるんで」
「そうなんだ」
僕が生活している自宅の周りには、国が管理している監視カメラが多数設置されていた。何か問題が発生したときには、手元にあるスマホで通報すればすぐに駆けつけてくれる。連絡しなくても、問題が発生したのを発見したら迅速に駆けつけてくれるらしい。
今まで何度か利用してきて、一度も危険な目に遭う前に全て解決してくれた。だから、かなり頼りになることを知っている。
自宅周辺のセキュリティは万全だった。だから、なんの心配もない。
「それじゃあ、ここでお別れですね」
「そうだね」
少し非常に残念そうな表情を浮かべる花怜さん。だけど、まだ終わりじゃない。分かれる前に、これをやっておかないと。
「連絡先を交換しておきましょう」
「え? 連絡先?」
「そうです。スマホは持っていますか?」
「あ、うん。スマホは持っているけど……」
「じゃあ、連絡先を交換しましょう」
そう言って、少し強引に連絡先交換を済ませた。これで、花怜さんにメッセージを送ることが出来る。
「これで連絡先の交換は完了です。また、遊びに行きましょう」
「えっと、うん。……また、誘って」
車から降りる前に、僕は運転席に座っている花怜さんの顔に接近した。彼女の頬に軽くキスをした。今日、とても楽しませてくれたお礼。
「え? え!?」
「それじゃあ、また」
慌てている花怜さんを置いて、僕は車から降りる。そして、自宅まで一人で歩く。今日の出会いは良かった。これから、彼女とは仲良くしていきたいと思った。もっとイチャイチャしたい。これからの楽しみが増えた。
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