第10話 全力で楽しむ
女性とデートをするときは、心の底から全力で楽しむ。それが、僕のモットーだ。常にニコニコと笑顔を浮かべて、媚びすぎじゃないかと思うぐらいの反応を見せて、相手に不快な思いをさせないように気をつける。
「わぁ! かわいい」
公園の出入り口で、マスコットキャラクターが出迎えてくれた。全身緑色の、口の大きな狸。三頭身のアニメ調にデフォルメされている着ぐるみ。コミカルな動きで、見ているだけで楽しい。
「写真、撮ってもらいましょう!」
「あ、うん」
花怜さんの手を引いて、キャラクターに近寄っていく。そして、施設のスタッフに自分のスマホを渡して、花怜さんと一緒に写真を撮ってもらった。早速、良い思い出が出来たな。
「ありがとうございます!」
「いえいえ。ぜひ、楽しんでいってください!」
スマホを返してもらい、写真を撮ってくれたスタッフの人にお礼を言う。そして、花怜さんの方に振り返って言う。
「さぁ、中に入りましょう」
「そうだね」
その公園に入るためには、入場料が必要だった。
「それじゃあ、支払いは私が」
「ありがとうございます」
「いや、これぐらいは」
公園の入場料は、花怜さんが支払ってくれた。僕は、素直に甘える。奢ってもらう相手は、ちゃんと見極めていた。花怜さんのような大人の女性だったら、抵抗はせず素直にごちそうになるのが良い。同年代や年下の場合は、少しだけ遠慮したりする。
「面白いですね」
「あぁ。なかなか、興味深いね」
公園内に展示されている作品を、二人で一緒に並んで歩きながら見て回る。最初は戸惑っていた花怜さんも、楽しんでくれているみたいで良かった。自分だけが楽しむのは大変だから。彼女が一緒に楽しんでくれているなら、もっと嬉しい。
「直人くんは、こういう場所にはよく来るの?」
「はい、よく来ますよ。観光スポットを巡ったりするのが好きなんです」
「そうなのか」
僕の答えを聞いて、驚く花怜さん。こういう場所に、男の人が足を運ぶのが珍しいからだろう。今も、周りを歩いているのは女性たちばかり。
ここまで来る間に、女性と一緒に歩いている男性を何人か見かけた。だけど、どの男性も面倒くさそうな、興味ゼロの表情だった。僕のように、楽しんでいる方が珍しい。そういうものらしい。
「この公園に来たのは初めてです。ずっと見に行きたいと思っていたけど、なかなか機会がなくて」
「そうか。それなら今日、見に来ることが出来て良かったね」
「はい!」
徐々に会話もスムーズになってきた。良い感じで、花怜さんと会話が出来ている。このままの調子で、距離を縮めていきたい。
しばらく公園内を歩いていると、良さそうな雰囲気のカフェが見えてきた。食事も楽しめそうなお店のようだ。
「ちょっと、歩き疲れましたね」
「ん? そっか。えーっと、どうしようかな」
「あそこにカフェがありますよ。あそこに入りませんか?」
「そうだね。そうしょう」
ということで、僕の提案にすぐ賛成してくれた花怜さん。彼女と一緒にカフェへと入る。席に案内されて、ゆっくりと落ち着くことが出来た。
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