外伝11話~安田記念の後に。そして次の舞台は~

《【20✕✕年】ステイファートム強すぎワロタwww》


1:名無しの競馬ファン

やっばww安田記念えぐかったな


2:名無しの競馬ファン

ついこの前牡馬初のGI8勝馬が出たばかりなのになww


3:名無しの競馬ファン

つい最近(8年近く前)


4:名無しの競馬ファン

2026年に引退したロードクレセントか。まさか初年度産駒からロードクレイアスとかいうGI7勝馬出すとはな


5:名無しの競馬ファン

2023年にイクイノックスが去った後、またそれと同じレベルの最強馬が現れるとか予想出来んて


6:名無しの競馬ファン

2024年のクラシックホースかぁ。懐かしいな

皐月賞馬ターニングポイント

日本ダービー馬ステイスターダム

菊花賞馬ロードクレセント


7:名無しの競馬ファン

え? 皐月賞馬はジャスティンミラノ、日本ダービー馬はダノンデサイルとかじゃってうわ何をするやめろぉぉぉくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」


8:名無しの競馬ファン

何だったんだ今のは

そういえばステイファートムの次走って出たんだっけ?


9:名無しの競馬ファン

net競馬さんの予測では天皇賞・秋って書いてあるな

宝塚記念はキツイし無いだろうけど、札幌記念から凱旋門賞連覇目指したりしないんかね?


10:名無しの競馬ファン

今更天皇賞・秋かぁ。て言うか本来はとっくに繁殖入りしてるレベルの馬だからどこいっても今更感が


11:名無しの競馬ファン

BCターフとか、、、って思ったが去年ロードクレイアスが取ってるからな

国内走らせるより欧州辺りとかやろ。愛チャンピオンSとか?


12:名無しの競馬ファン

キングジョージとか思ったけど登録してないからなぁ。次どこ行くんやろ。あ、ワンチャン砂に戻るんじゃね?


13:名無しの競馬ファン

ドバイWCへの出走表名取り消したし無いやろ

サウジカップ2着の時点で適性は示したから

国内走るにしろメンツ的にしょぼく見えるのもなぁ


14:名無しの競馬ファン

カーテンコールとポインセチアは春休養だってさ

シャドーフェイスは宝塚記念に殴り込むらしいww


15:名無しの競馬ファン

2200mに行くのかwww

記念出走……って言いきれないのが怖いな

ダービーの時はボロ負けやったが、今回は香港カップ勝ちの実績あるし


16:名無しの競馬ファン

ポインセチアはGII毎日王冠、カーテンコールはGII府中牝馬SからGIマイルCS、香港マイル辺りかね?


17:名無しの競馬ファン

待って。ポインセチアの次走、セントウルSになってるんやが???


18:名無しの競馬ファン

え????


19:名無しの競馬ファン

短距離路線!?!?!?


20:名無しの競馬ファン

カーテンコールとの差別化来たァァァ! この馬はマイルだろ! 使い分けやめろ!


21:名無しの競馬ファン

使い分けするなら安田記念でぶつけないだろ?

シンプルに短距離路線走れるか試してみたいんかね?


22:名無しの競馬ファン

てっきり毎日王冠かと思ってたわww


23:名無しの競馬ファン

カーテンコールはGII毎日王冠らしいぞ


24:名無しの競馬ファン

1800ぐらいなら持つかね? 秋華賞の時点で距離は不安だったけどそれならまぁ


25:名無しの競馬ファン

それよりポインセチアよ。セントウルSって……短距離試すにしてもいきなり1200mかよ


26:名無しの競馬ファン

普通1400m試してからやれよ。秋のマイルGIで結果出なかったら年末の1400mのGII阪神Cに出てみてからでも遅くないはず


27:名無しの競馬ファン

秋の短距離GIがスプリンターズSしかないけど毎日王冠より先に開催されるのが原因かね?

香港スプリントはレベル高いし選出されるかも微妙だし


28:名無しの競馬ファン

多分そうだろうね。次の1400の重賞自体、毎日王冠より後のGIIスワンSだし


29:名無しの競馬ファン

ソングラインもアメリカのマイルGI出る前にここ使ったから平気平気


30:名無しの競馬ファン

ソングラインは1351mの海外GIII勝ってたからなぁ

一緒にはできんよ


31:名無しの競馬ファン

は、なんか荻野厩舎からステイファートムの今後についてって情報出てるぞ


32:名無しの競馬ファン

マジじゃん、ネットニュースじゃなくて公式からそうやって情報出してくれるの助かるわ


33:名無しの競馬ファン

……え?


34:名無しの競馬ファン

おいおいガチか


35:名無しの競馬ファン

ははは! ありえねぇだろおい!

でも、フェートムならありえなく無いって言えるんだよな


36:名無しの競馬ファン

本当に俺たちを楽しませてくれるよこの馬は

いいや、この一家は!


37:名無しの競馬ファン

なんにせよ、秋が楽しみだな!


38:名無しの競馬ファン

…………誰も安田記念の話してない



***



 安田記念の祝勝会が終わった。ふぅ、やはりもう歳か? 疲れていたはずの身体も1時は何事も無かったかのように思えたが、やはり老体には堪えるな。



「荻野さん、少しだけ話が……」


「横川か。それに他の皆さんも……」



 ささやかな祝勝会の来賓達は帰っており、残ったのは俺と横川、あとは横川の後ろに着いてきていたファーの担当厩務員の沢村、それにオーナーの宮岡さんに、生産牧場長の館山さん。


 つまる所いつものメンツという訳か。さて、話ってのはやはり三兄妹達の、ステイファートム達の今後の同行についてだろう。



「それにしてもさっきの場所で軽く話すのでも良かったのでは?」


「館山さん、ファートムの次走ですよ? 宮岡オーナーの今までの行動を思い返してみてください。祝勝会で誰かの耳に入ればすぐネットに晒されますよ」


「あぁ、確かに。横川君の言う通りだ」


「酷いな2人とも!?」



 晒したりなど、そこまでネットリテラシーの低い者は呼んでないつもりだが、万が一があるからな。それに今後、コープやセチアに横川の奴が乗らないって可能性はない。


 ローテもぶつからないよう考えて選ぶべきだ。という訳で今回乗ってもらったコールとセチアの騎手には悪いが、この話し合いからは省いている。という訳で改めて次走について話し合いが始まった。


 と言っても主に口を出すのは宮岡オーナーで、それに我々が助言をする位だが。沢村の奴はいつも通りブログを更新している。今回の話し合いの結果も添削しつつ、すぐに更新されていく。


 あと、思ったより収益あるんだよな、沢村の書いているファートム関連のブログ。元はプリモールの初子である古き良き血統の子馬について駄弁るだけの小さいものだったが。


 まぁ、今ではステイファートムの圧倒的人気はもちろん、カーテンコールやポインセチアと言ったプリモールの子供達に、ファーと親しいタガノフェイルドとのじゃれあいも最近まで上がっていた。


 はっ、もうフェイの奴を懐かしむレベルに来たか。ファーやコール、セチアの奴らに続く子達が出てくれれば良いが……もう、十分すぎるほど恵まれていることは自覚しないとな。



「まずセチアについてです。横川くん、荻野さん。セチアは今後もマイル路線で戦えますか?」


「……3歳。いえ、4歳の春までなら戦えなくはないかと。ただ……」


「段々とスプリンター気質になってきている覚えがあります。今はまだ1200mより1600mの方が得意そうですが、一夏を超えてどうなるか」



 調教の段階から色々と感じていた。それにセチアに乗った河田将雅からも色々と話を聞いた上を加味すると……。



「そうですね。そもそも3歳スプリントのレベルは他の路線に比べて低い。今でも3歳スプリンターの中では抜けていると思います」



 そう考えていると横川が口を出す。まぁ、短距離は世代GIが無いし何より中距離を重んじる。短距離はクラシックに出れないから出るNHKマイルCにも出れない馬だってふざけたことを抜かす奴らも中にはいるが……横川の奴は真剣に言ってるな。



「今年の秋なら勝負にはなるでしょう。ただしそれ以降は身体の作りもよりスプリント気質になるかと。4歳からは短距離に路線変更すべきです」


「ふむ……では、秋の始動戦は1200mのGIIセントウルSにしましょう」


「オーナー、秋も戦えない訳ではありません。寧ろ上位を狙える器です、セチアは」


「えぇ。ですがいずれ短距離を走るなら早い方が良い。それにコールと路線がダダ被りですから」


「と、言うことはコールは」


「はい。コールはマイル路線を走ります。ただ始動戦については中距離の猛者、マイラーかぶつかるスーパーGII毎日王冠を予定しています」


「少し長い気もしますが……」


「コールの実力なら勝てるでしょう。それに目指している所はそこではありませんから」



 そう呟いた宮岡オーナーは笑っていた。それはもう、とても楽しそうに……。あぁ、嫌な予感がする。この人は破天荒だからな。



「お、先月書いたブログのコール、セチア特集が25万PVいってる。やば、みんな好きすぎでしょ」



 沢村、呑気にブログを書きやがって。お前も当事者だと言うのに……。まぁ、ファーの人参代とか色々助かってるはいるけどな。



「最後にファーですが……──です」



 全員の息が、そして沢村の手が止まった。それほどまでに衝撃だったのだ。いや、凱旋門賞を勝ったのだ。もう1つの最高峰を取りたいって気持ちは嫌という程わかる。


 わかるが……まさかアメリカ最高峰のダートGIブリーダーズカップ・クラシック。BCクラシックを名前に出すとは!



「ファーがステップレースを挟むかは向こうの馬場に慣れて貰ってから判断しますが、直行で行くつもりです」


「言い方的にまさかとは思ってましたが……国内ダートレースも出ないつもりですか?」


「えぇ。出来るなら安田記念からBCクラシックが最適です。サウジカップでダートが走れない事も無いって事は皆知ってるでしょう。夢を見ることは出来るのでは?」



 サウジカップは馬場が特殊だ。前年度覇者の芝馬が翌年に最下位に沈む事もあった。故にサウジカップのダートで走れたからと言って、国内や他の海外ダートで走れるとは限らないが……。



「夢は見れます。ただ、せめて国内や早めに向こうのダートを1回走らせてはみませんか?」


「もちろんそれも考えましたよ。でも……横川君、どうなんだい?」



 宮岡オーナーが横川の方を見る。何だ? ……まさか。



「荻野さん、はっきり言います……ファーの奴は恐らくピークが過ぎてきています」



 恐れていた事が今告げられた。競走馬のピークは1年持てば良い。そう言われる中、ファーは2歳の頃から世代トップの実力を常に見せつけていた。



「それに、最後の走りで確信しました。脚の方も限界が近い。だからこそ、今日のレースも同着になってしまった」



 そうか、脚の方も……。競走馬の脚はガラスの足と呼ばれている。非常に脆く、砕けやすい。繊細だがとても大事な身体の1部だ。



「多分……あと全力を出してレースを走れるのは3回……言え、2回が限界かと」



 横川からの言葉。それはつまり、ファーが走れるのは残り2レースであると告げられたような物だった。



「だからこその直行か。前哨戦なら全力は出さなくていいが、無駄に脚に負担をかける必要はないもんな」


「はい。恐らく、次のレースが僕達の最後のレースとなりますかもしれないんです。全力を尽くして、勝ちに行きます」



 そう言った横川の目を見て俺は……この場にいる皆は決断した。ステイファートムの次走は、ブリーダーズカップ・クラシック。BCクラシックと。


 そして競馬界に様々な衝撃が走った。もちろん反対の声もあったが、皆が皆期待をしていた。あるんじゃないか? と言った期待を。


 一夏を超えた秋の開幕戦線が幕を開ける。

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