第44話~GI天皇賞・秋《前編》~

東京競馬場第11R:天皇賞・秋 <GI>(芝・良・左・2000m)



《刺すような日差しは也を潜め、やや冷えた秋風吹く府中のターフ。決戦の時はもうすぐです。今年も豪華なメンバーが揃いました。中距離最強馬を決めよう、GI天皇賞・秋です!


実況は私、明智と……》


《はい、解説の細田です。GI馬6頭、そして16頭が重賞馬。中にはGI級の馬も沢山います。明智さんの推しはやっぱり……》


《言うまでもないですがはっきり言いましょう。ステイファートムです。早く元気に走る姿を見たいです! 私の夢はいつまでもステイファートムです!》


《あはは、あっ、明智さん、本馬場入場が始まりますよ!?》


《えぇ、白毛の誘導馬に促されて出てきたのは1枠①ジェミニリスト。2000mは大得意。その逃げは沈黙を歓声で塗り替えることが出来るのか、鞍上は異次元の逃亡者の背を知るレジェンド竹豊騎手っ!


②はバーストインパクト。さきほどパドックでロデオを行い

今日もノルマ達成。ゲート難、かかり癖、幾つもの障害を乗り越えて掴むはGIのタイトル。鞍上は気性難のプロフェッショナル沼添謙一!


居ましたここに。府中の舞台は5戦5勝。この地でGIの頂きまで一気に飛翔した前年の覇者、③ホワイトローゼンセです。前走2着の悔しさ胸に、魅せるは1年ぶりの勝利。鞍上は福長祐一騎手!


3歳馬唯一の参戦です。夢の続きは息子から孫へ。2歳王者④ミドルオブドリーム。古馬との初対戦となった毎日王冠はタガノフェイルドの2着。その悔しさは新コンビ鞍上ラフランス・デットールと果たします


⑤ロクテンノブナガです。その覇王道は簡単ではありませんでした。OPを勝ち上がるまでに有した27戦。7歳馬の古豪が見せるGI初挑戦の結果は果たして! 鞍上藤沢康太!


復帰戦の宝塚記念は着外。思い出の地で復活なるかダービー馬⑥アスクマカヒキモアです。古馬代表格として、負けられないぞ鞍上河田将雅!


同じく5歳馬。GIの舞台には幾度も立った。しかし届かない。何度も何度も……これが通算10度目のチャレンジ! 9度の敗北、その先で掴むは初のGI勝利か!? ⑦ヒシクラウンと鞍上梅山弘平!


2歳王者です。3年前のホープフルSで輝いた星は2年10ヶ月ぶりに同じ距離で輝きを取り戻せるのか? ⑧ダノンバルスと鞍上はホープフルSで勝利へと導いた横川典弘!


2頭目のマカヒキ産駒です。あの名牝ダイワスカーレットを母母にもち、その冠名が1次復活したことで話題を呼びました。しかし名前だけではない! それをここで証明しよう! ⑨ダイワマカヒキーと鞍上逆井流星!


続いて⑩アグネスファイル……ではなく先に⑪ガイストデゼルを紹介します。重賞戦線で活躍を続け昨年の香港ヴァーズでは2着。かつてダービーを期待された逸材が蘇るか!? 鞍上は都崎圭太!


拍手が沸きます。何故か? あの狂気の逃げ馬カブラヤオーの血が受け継がれた彼が現れたからです! あの逃げを忘れるわけが無い! ⑫ホゲットミーノットと鞍上辛英明!


香港で掴んだ5つ目のGIタイトル。最強牝馬は昨年のリベンジに燃えています。今年一杯で引退表明した彼女が目指すは牡馬を混じえた中距離最強の座! ⑬カレンニサキホコルと鞍上クリストファー・ルモール騎手!



さぁぁ、会場全体が沸く! 2度の骨折乗り越えて、札幌記念で復活アピール。4度の2着に涙を飲んだ無冠の帝王。挑むは5度目のGI挑戦に母子制覇達成なるか! 鞍上横川勤は断言した、この馬が勝つと! 1番人気⑭ステイファートムですっ!


勝ち鞍は全て2000m。重賞2勝の実績に、その実力はGI級。⑮サザンプールと鞍上磐田康成!


阪神大賞典2着からの復帰戦。長距離戦線から戻ってきた若葉S覇者の元クラシック候補。⑯メイショウザクロスと鞍上和多竜二!


一昨年の二冠馬です。大阪杯覇者となって復活の時代を告げた彼が見据えるは新世代との邂逅。2年前のクラシックホース達の意地を見せろ! ⑰ネオエイジと鞍上オリブエ・ぺリオのコンビ復活です!


スタート位置の関係上大外枠は不利と言われています。だがそれがどうした? 祭りを起こすのにそんな不利程度どうでも良い! マカヒキ祭りだ! ⑱マツリダマカヒキ鞍上ミュラー・コーセー!


そして⑩アグネスファイルですが、どうやらメルコ・デムーロ騎手が落馬をしています。なにかあったんでしょうか? 発表をお待ちください》


【馬番】

①ジェミニリスト

②バーストインパクト

③ホワイトローゼンセ

④ミドルオブドリーム

⑤ロクテンノブナガ

⑥アスクマカヒキモア

⑦ヒシクラウン

⑧ダノンバルス

⑨ダイワマカヒキー

⑩アグネスファイル→除外

⑪ガイストデゼル

⑫ホゲットミーノット

⑬カレンニサキホコル

⑭ステイファートム

⑮サザンプール

⑯メイショウザクロス

⑰ネオエイジ

⑱マツリダマカヒキ



***



 さぁてやって来ましたよGIの舞台へ! 雰囲気で分かるぞ! でもレース名はなんなの横川さん? なんて考えながら歩く。



「……モールも、そして僕も、この舞台でGIに戴冠した。この、天皇賞・秋で。今日は勝つよ。僕と、ファーが」



 ……は? 天皇賞・秋、だと? ……母さんが、GIを勝った舞台……? はは、なら、勝つしかねぇでしょ!


 という訳で敵情視察です! 知ってるやつは一旦排除して考えて知らない馬は……ミドルオブドリーム、ロクテンノブナガ、ヒシクラウン、ダノンバルス、ダイワマカヒキー、アグネスファイル、ガイストデゼル、ホゲットミーノット、マツリダマカヒキの9頭ね……いや多いよ!?


 強そうなのは若いけど自信のありそうな雰囲気のミドルオブドリームって馬に、あの闘志を燃やしてる眼のダノンバルス。


 それにヒシクラウン、ガイストデゼルって馬達も強そうだ。俺に勝てる事は無いだろうけど……油断じゃないよ、冷静に判断して、負けるなら俺が出遅れて進路がずっと塞がったままとかぐらいだし……。


 後! ダイワマカヒキーとマツリダマカヒキって何!? 特にマツリダマカヒキ! ふざけてんの!?!?!? アスクマカヒキモアおじさんと違って強そうには見えないけど……。


 それでも合わせたらマカヒキって単語付いた馬が3頭も居るよ!? なんなの!? マカヒキ一族でもある訳!? マカヒキ系があるとか!? それともマカヒキ派!? いやもしかしてマカヒキって冠名の可能性が……それだぁぁぁ!!!



『また、会ったな』


『ホワイトローゼンセおじさん』


『おじ……まぁ良い。この舞台を俺は知っている。俺が去年に勝った舞台だ。だから、ここでは負けん』


『俺もだ。俺もこのレースは母さんがかつて勝った。だから負けれない。勝つのは俺だ』


『ふっ、精々粘っていろ。この舞台は俺にとって最高のパフォーマンスを発揮出来るんだからな』



 ホワイトローゼンセが去っていく。……あぁ、覚えてるよ。俺も日本ダービーで走った舞台だな。そして、府中の直線が長いコースだって事も……前走のパフォーマンスなら俺は負ける。


 なら話は単純だ。前走より強い走りをすれば良いだけだよな!? なんて考えていたら若駒……ミドルオブドリームって馬が俺を睨んでくる。



『あんたがステイファートムおじさん?』


『おじ!? ……あぁ、俺がステイファートムお兄さんだ』


『は? 古馬はもうおじさんで良いでしょ?』



 舐めるなよクソガキ!!! 俺がおじさんだと!? まだまだ現役じゃボケっ! ……なんだよ皆、お前も去年の有馬記念にはそんな対応してただろって正論は弾圧するからな!



『タガノフェイルドおじさんが言ってた。あんたがライバルだって……だから、あんたをぶちのめしたって言ってフェイルドおじさんの絶望顔を拝みたい……!』


『あ? やってみろやクソガキ。古馬の壁って奴を思い知らせてやる』


『あはは、楽しみだぜ! 俺の夢は全ての馬をぶちのめして最強になること! そのための礎になりやがれ!』



 かー、生意気で威勢の良い歳下が入ってきたね。んじゃいっちょ、歳上の威厳って奴で分からせてやるか……! まずは、その幻想をぶち壊す!


 ……いや、止めておこう。そんな幻想を潰す暇があるならここから逃げねば……! 奴が、奴が近づいてきている!! カレンニサキホコルお姉さんがっっっ!!!



『ねぇ坊や、邪魔よ』


『あ? BBAは引っ込んで──』


『は???(群れのボスの俺もビビる威圧)』


『……どうぞ』


『ふふ、ありがとう……ファートムくんっ♡』



 ……逃げられなかった。この人はカレンニサキホコルお姉さんです。有馬記念のレース後にタマモクラウンが運ばれて行って泣いてた俺を見て、めっちゃ慰めてくれた優しい人かと思いきや……。



『貴方すごく強いもの。えへ、えへへへ♡ でもその顔。特に泣いてた時の顔! 胸にキュンキュン来ちゃった♡ だからね……私がレースで勝つの。そしたら泣いてね。それを私が慰めてあげるから……ファートムくんっ♡』



 ディープゼロスより、ロードクレイアスより、シュトルムおじさんより、タマモクラウンが怪我をした時よりももっと……プリモール母さんに怒られた時と同じほどの恐怖を俺は感じた。



『おいカレン、俺の知り合いにちょっかい出すのはやめろ』



 ま、マカモアおじさぁぁぁぁん!!!



『あら、マカモアじゃないの久しぶり。ファートムくんと貴方って知り合いなの?』


『おう久しぶりだな。ボウズは弟みたいなもんなんだ』


『ふ~ん、まぁ良いわ。とにかく勝つのは私よ。ファートムくん、待っててね♡』



 そう言ってカレンニサキホコルお姉さんは去っていく。……マカモアおじさん、キャンディボールの時もそうだがあんたって人は! いつも俺のために牝馬から助けを出してくれる! 俺、惚れるならあんたにするわ!!!



『大丈夫かよぉファートム』


『問題はない。だが助かったよマカモアおじさん』


『良いってことよ。それよりもあっちのマツリダマカヒキって子可愛くね??? ちょっと口説いてくるわ』



 アスクマカヒキモアのおじさんはそのまま走り去っていった。……俺の好感度を返せ!!! てかマツリダマカヒキって……もしかしなくても近親じゃね? 伝えとこうっと。


 こうして真っ白な灰に燃え尽きたアスクマカヒキモアおじさんを見届けると同時にファンファーレが響き渡り、GI天皇賞・秋の開幕を告げた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



放馬組のバスラットレオン、シルヴァーソニックおめでとう! 福永騎手、長い間お疲れ様でした!

そしてなんと言ってもパンサラッサくん!!! 13億持って帰ってきて歴代獲得賞金3位は無いよww次走で1位になるじゃんww

てかダートも走れるならパンサラッサ産駒セブンシーズさんの扱いも故障引退じゃなくてダート転向とかにしたのに……!

日本馬が掲示板5頭中4頭独占で約20億持って帰ってきてるのヤバすぎでしょwwサウジは芝馬でも通用するのか? ……ファートム行かせて見ようかな???

あ、今週忙しいので次の投稿土曜日とかになります

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