第43話~遠きロンシャンの地にて《2》~
《先頭はシャドーフェイス! 海外で鍛えた成果はここで実る! シャドーフェイス1着っっっ! 国内GI初制覇! そして目指すは香港スプリント連覇かっ!?》
海外マイルGI連戦から帰還したシャドーフェイスがGIスプリンターズSを快勝した事から秋のGI戦線が開幕したことを告げる。
そして余談だが、シャドーフェイスの次走はスプリンターズSの結果を受けて香港マイルに決定した。……香港マイルに決定したのだった。
そして海外マイルGIで壊れかけつつもようやく治ってきた沼添の腕が、再びバーストインパクトする事も決定したことにネット民ははしゃぐのだった。
***
「まずは札幌記念の勝利をありがとうね」
「いえ、恐縮です。僕の力だけじゃありません。ファートムが頑張ってくれたからです」
馬主の宮岡さんが騎手の横川を労う。それに加えてカーテンコールも8馬身差の圧勝というオマケ付きだ。むしろここまで冷静な彼を褒めたいくらい。
「ふふ、謙遜しなくていいよ。復帰戦、しかもスーパーGII札幌記念を勝ったんだ。秋のGI取りに向けて良い弾みが着いたよ。それで荻野さん」
「えぇ。ファートムの骨に異常はありませんでした。少しコズミ……筋肉痛のような現象はありましたが、レース2日後には完治しています」
「それはつまり……」
「えぇ。間違いなく本格化してます。正確には有馬記念の時点でその兆しはありましたが……。今までならコズミも1週間は長引いたはずです」
2歳時の骨折はまだ幼い身体で限界を超えたから、有馬記念時は成長期に無理をしすぎた所をぶつけたから。だが今は本格化の影響もあって、怪我もしにくい体質になっているのではないだろうか……。
「やはりステイゴールドの血か? いや、ステイスターダムはダービーを最後に引退。逆にテイオーから生まれたクワイトファインの血を継ぐプリモールは無事是名馬の名に相応しい活躍をした……分からないものだな」
「ともあれ、天皇賞・秋には間違いなく間に合うどころか仕上がりますよ。問題はその後です」
「あぁ。秋古馬三冠……レースを皆勤した馬すら最近では少ない。活躍ともなれば無事是名馬の代名詞であるキタサンブラック辺りが最後だろう……」
「ファーの奴はハッキリ言って虚弱体質という訳ではないですが、だからと言って身体が強いわけでもないですからね。いくら成長したとはいえ、1戦ごとに状態を確認させます」
「あぁ。無理そうなら秋古馬三冠は諦めるよ。分かっているさ……でも、見たいじゃないか。もうオペラオー、ロブロイのような馬は二度と現れないかもしれないんだ。そしてそれを目指せる馬が私の手元にいる。……なら、目指すぐらいは好きにさせてくれ」
「僕もその意見に賛成です。……と言うか、今のファートムより僕が落馬とかして怪我しない方が心配ですけど」
「その時は仲良くお終いさ。怪我なんてしてくれるなよ? 横川君」
「えぇ、肝に命じておきます。それとカーテンコールの次走はどうするつもりですか?」
「あぁ、クラシックを狙うつもりだから今日と同じ距離のGIIIアルテミスSを予定しているよ」
ステイファートムの全妹、カーテンコールの次走は天皇賞・秋の前日に行われる2歳牝馬限定のGIIIアルテミスSに決定する。
そして正式に、ステイファートムの秋古馬三冠レース皆勤も決定した。まず目指す頂きは、母プリモールとの母子制覇がかかるGI天皇賞・秋。
***
ロンシャン競馬場第4R:凱旋門賞<GI>(芝・重・右・2400m)
《日本の最初の挑戦は1969年、スピードシンボリから始まりました。そこから長い長い我々の挑戦は幕を開けたのです。1999年、エルコンドルパサーが2着に入りました
その後も英雄、金色の暴君を含めて馬券内の大健闘はありつつも未だ半世紀を超えてもなお、この高い壁を乗り越えた馬はいません
数々の日本の名馬を跳ね返してきたその高い高い壁に、今年は3頭の日本馬が挑みます。昨年の3着馬の逆襲なるか、GI4勝をあげる日本の現役最強馬、ロードクレイアスッッッ!!!
そして現役最強ステイヤー、ゼッフィルド。春のグランプリ宝塚記念の1着2着馬が、世界の高い壁に向けて挑みます
そして父キセキも挑んだロンシャンの地にその息子が降り立ちました。奇跡を起こそうその脚で、キセキノアシ! 今年は日本からこの3頭が挑みます。
全てのホースマンがそこを勝ち、最高の栄誉を求める世界最強を決めるGI、凱旋門賞。そう、皆さん待ちに待った凱旋門賞です
世界の名だたる名馬たちの頂点がここで決まります。
昨年のGI英チャンピオンS勝ち馬アクセルナンバー、GIプリンスオブウェールズSを連覇したローゼンクランツ、昨年のGIコロネーションC勝ち馬サウザンドアイズ
今年の独ダービー馬シュタインウェイ、同じく仏ダービー馬シュネラーアルツ、そして英ダービー馬フォルテッシモ
イタリアで無敗を誇り、GIIニエル賞を勝った伊ダービー馬オーソレミオもいます
そしてGIエクリプスSを4馬身差快勝した昨年の世界王者、グランゼルディン。GIキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSで5馬身差を付けた昨年2着のシャルルゲートも参戦です
牝馬からは今年の英オークス、愛オークス、そしてヨークシャーオークス。スノーフェアリーですら勝てなかったこの3連戦を見事に駆け抜けたリリーオブザインカもいます
そして去年からおなじみ、逃げ馬マーニュもいますよ。今年も豪華GI馬11頭を含む全13頭。世界最強を決めるに相応しいレースとなりました》
《JRAオッズ》
1番人気ロードクレイアス1.9倍
2番人気グランゼルディン4.5倍
3番人気ゼッフィルド4.9倍
4番人気シャルルゲート5.4倍
5番人気リリーオブザインカ7.8倍
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9倍キセキノアシ40.6倍
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11番人気オーソレミオ132.7倍
《海外ブックメーカーオッズ》
1番人気グランゼルディン3.8倍
2番人気シャルルゲート4.1倍
3番人気リリーオブザインカ5.6倍
4番人気ロードクレイアス6.2倍
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7番人気ゼッフィルド15.7倍
~~
9番人気オーソレミオ62.9倍
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13番人気キセキノアシ210.5倍
《さぁ、最初に収まったのは①ゼッフィルド。そして少し開いて⑦にキセキノアシ。⑫にロードクレイアスです。海外では枠番と馬番が違うので注意してください!
さぁ、全馬ゲート入り完了です! 去年の雪辱を、夢の続きを見せてくれ第×××回凱旋門賞スタートです!
出遅れはありません。最初にレースを引っ張るのは、やはりマーニュです! GI馬マーニュです! そして早め2番手キセキノアシも行きました!
ロードクレイアス、ゼッフィルドの2頭は後方。かかってはいません
さぁ、全頭の隊列はすんなりと決まりました。先頭マーニュ、そしてキセキノアシが集団を引っ張ります
GIプリンスオブウェールズS連覇のローゼンクランツが3番手。独ダービー馬シュタインウェイと仏ダービー馬シュネラーアルツが並んでいます
その後ろにシャルルゲートが居ます。その後ろに英ダービー馬フォルテッシモがピッタリとマークしています
伊ダービー馬オーソレミオはその後ろ。牝馬リリーオブザインカと連覇を狙うラストランのグランゼルディンはここ
さらにその後ろにロードクレイアスとゼッフィルドは並んでここにいます。GI英チャンピオンS勝ち馬アクセルナンバーもここ
GIコロネーションC勝ち馬サウザンドアイズが最後方。こう言った形で比較的落ち着いた様子でレースは進みます》
《さぁ、依然としてマーニュとキセキノアシが引っ張る形でロンシャン名物、偽りの直線フォルスストレートを迎えます!
ロードクレイアスは依然として後方で落ち着いています。おっと動いた!? ゼッフィルドがここで仕掛けた!?
ゼッフィルドの得意なロングスパートです! しかしロンシャンの直線は東京競馬場と同じぐらい長い533m!
持つのか!? 幾ら菊花賞馬と言えど本当に持つのか!? 鞍上ルモール、行けるのか!? グランゼルディン、シャルルゲートはまだ動かない!
そして最終コーナー! 最後の直線! 今年こそ夢の先を見せてくれ! まだ先頭マーニュ! キセキノアシと並ぶ!
しかし! 前目にいたシャルルゲートが並びかける! 外からゼッフィルドも伸びてきている! オーソレミオも来ているぞ!
真ん中から、満を持してグランゼルディン来たァァァ! 先頭キセキノアシに変わってシャルルゲートだ! 1番外から! 世界のロォォォドクレイアスッッッ!!! レジェンドを背に王の進撃開始ぃ!
抜け出した先頭シャルルゲート! 真ん中からグランゼルディン! 大外からロードクレイアス!
そして並びかけるロングスパートをかけたゼッフィルド。さらに並ぶ形でオーソレミオ! リリーオブザインカも来ている!
キセキ! いやこれはもう届かない! 外からロードクレイアス! 外ロードクレイアスッ! クレイアスが、竹豊の鞭に応えて伸びてくる!
先頭シャルルゲートとグランゼルディンが並ぶ! 欧州最強馬の決着となるのか!? ゼッフィルドも伸びているが差は詰まらない!
ロードクレイアス脚を伸ばす! リリーオブザインカ! オーソレミオも来ている!
しかし抜けた! シャルルゲートだ! グランゼルディンを突き放した! グランゼルディン下がっていく! 世代交代か!?
変わってロードクレイアスが2番手に上がった! 届け! 届けっ! 届けっっっ! クレイアス、伸びろっ!
シャルルゲート先頭! しかし、届くか!? 届いた! 並ぶ、並ぶ! 並ぶっっっ!!!
シャルルゲート!? ロードクレイアス!? 2頭のマッチレース! 並ぶ! 並ぶ! 抜けろっ! 抜けろっっ! 抜けろっっっ!
しかし、届かないぃぃぃぃ!!! 僅かに、僅かにシャルルゲートが抜けていました。ロードクレイアス、届きませんでした……
2着……日本に立ち塞がる高い高い壁……それを今、痛感させられました。勝ったのはシャルルゲート。あの神の馬、ラムタラ以来の欧州3大レース制覇達成です
そして、連覇を狙ったグランゼルディンのラストランは4着。3着に入ったのはなんとなんと伊ダービー馬のオーソレミオです
ゼッフィルドはロングスパートをかけるも交わされて5着。リリーオブザインカが6着でしょうか
7着との差はそこから3馬身ほど差がありました。……今年も日本の悲願は達成されません。日本が誇る最強世代のダービー馬、ロードクレイアスですら、今年も壁にぶち当たりました
……来年こそは、そう期待させられる結果ではあります。本当に来年こそは、この壁を乗り越える馬が日本に誕生することを祈りましょう
実況は私、明智でした。現場からは以上になります》
1着シャルルゲート
2着ロードクレイアス クビ
3着オーソレミオ 1 1/2
4着グランゼルディン 1/2
5着ゼッフィルド 1 1/4
6着リリーオブザインカ 3/4
~~
11着キセキノアシ 2
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ウマ娘2周年神!こちらも出さねば、無作法というもの
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