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 AK-47、革命の銃、これは象徴だ。今まで多くの国がこの銃で自由を勝ち取ってきた。そして俺達も。

「式典まではまだ時間がある。少し食事でもしないか?」

「俺はいい、腹が減ってる奴は交代で、見張りの奴にも何か持って行ってやれ」

 狭い隠れ家の中に何時間もいれば息も詰る、まぁここが人里離れた洞窟じゃなく普通の民家なのは救いだ。何人かの同胞が声を掛け合って外に出るようだった。

「おい、今日は警備も厳重だぞ、怪しまれるようなことはするなよ。酒は一杯だけ、それと、変なものは食うな、腹を壊したら洒落にならない」

 同胞は短く返事をして出て行った。それを見送った後、残ってた者の内、一番年配の奴が俺に近付いて来た。

「良いのか? ここで何かあったら台無しだぞ」

「それはそうだが、大事なときに腹が減って動けないのも困る、それに……」

「何だ?」

「あいつらも十分分かってるさ、だから死ぬ前に何か食いたいんだろう?」

 みんながこいつ位慎重なら良いが、どうせ俺達は寄せ集めだ。訓練したって何したって、性根は変わらない。

「リーダー、アンタは良いのか? 最後の晩餐だろ?」

「俺は……要らない、それに何度も言ってるがリーダーじゃ無い」

 俺達のレジスタンスのリーダーは別の人間だ。そいつはもっとカリスマが有って自信に満ちている、自分がこの国を変えると。

「それはそうだが、今日の作戦のリーダーはお前さ、違うか?」

「違う、今日の作戦に参加してる奴はみんな対等だろう? 作戦だって別の奴が指導している。俺たちはそれに従うだけだ」

 今日の作戦は成功しようが失敗しようが恐らく全員死ぬ。用は式典にケチが付けれればそれで良い。ただ、命をかけるからにはそれ以上が有る。

「違わない、お前は俺たちのリーダーだ、だからアイツらもさっきお前に聞いて来たんだ、人が集まれば頭が必要なのさ」

「あんな奴でもか?」

 俺は、流しっ放しのテレビに映る男顔を睨み付けていた。この国の誰もが知っている、最悪の男の顔を。

「奴は俺達に必要無い、だから殺す、それでも別の頭は必要だ。俺達の指導者見たいな人間がな、お前だってそうだ」

「そうか……」

 俺にはそれしか言えなかった。確かに皆、俺には一目置いている。それはもちろん分かっていた。ただそれは、俺が誰よりも奴を憎んでいるからだ。レジスタンスは当然、皆奴を憎んでる、家族を殺され者も少なくない。それでも、俺の怒りと憎しみを皆一目置いているんだ。俺は自然と銃を強く握り締めていた。同胞が持っているものと同じ、革命の銃を。式典まではまだ、少し時間がある。

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