第4話 最低確率0.09%~レア(おみくじ)を引いた1年~

 明けましておめでとう。

 そして今年も宜しく。


 さて、正月と言えば初詣。

 参拝の後はそう……たぶん『御神籤おみくじ』だ。


 もう引いてしまった人も、参拝の列に並んでいる人も、家でぬくぬくしている人も、暇潰し程度に読んでもらえれば嬉しいが『年始めの心構え』として、案外役に立つかもしれない。


 今回はおみくじに纏わる、不思議な体験を書こうと思う。



 それまでのまきお家では、おみくじを初詣のおまけ……言わばと捉えていた。

 そもそも参拝すら年一の、にわか信者だ。


 にわかはにわからしく、十五円のお賽銭を投げて手を合わせても願い事しない。毎年『無心』or『労いの言葉』をかけていた。


 そんな信仰心の欠片もないに罰が当たった? のが、およそ3年前――。


 それからの我が家は『初詣』が誕生日やクリスマスを凌ぐ大イベントへと昇格し、御守りを通り越して厄払いやお札にお金を納めるまでの中堅信者に変貌した。


 当時、一体何があったのか……是非その『奇妙』を聞いて欲しい。




 3年前の1月上旬――。

 とある神社の一角に、引いたばかりのおみくじを握りしめて佇む、男女2名の姿があった。


 放心すること数分……「気味が悪い」と思われたのだろう。気付けば私達の周囲だけ、人が遠ざかっていた。


 しかし想像してみて欲しい……。

 成人式から数十年――見た事も聞いた事も無い『日本語』に出会った時の心境を!

 そしてそれが、おみくじの中央に書かれていた衝撃を!



半凶はんきょう



 皆は知っていたかもだが、私達はこれをつい3年前まで知らずに生きてきた。

 無知で恥ずかしい限りだが、本当の事だ。


 に遭遇した直後、呆けている私を更なるが襲う――。


「ねぇ……私、半凶だったんだけど、意味知ってる?」


「知らない……けど俺も『半凶』だ」


 冗談だど疑って旦那のおみくじを確認すると、本当に同じだった。


「へっ!? 半凶って、そんな頻繁に出るの?」


 バッグからスマートフォンを取り出し、検索へ入る。


「半凶を引く確率は13%、5%、3%……低っっ!」


「それが2回、連続だぞ……」


 少し怯えた表情を見せる旦那。


『半凶』×2(連続)……1.69~0.09%の確率か――。


 (まあ、確かにレアだけど……あり得るわよね?)


 そう言い聞かせ、私はおみくじに目を通す。

 古典的な文章は殆ど理解不能だが、あまり良くない事は伝わった。


「……」


 どうやら旦那も熟読を終えたらしい(おそらく理解はしていない)。

 私達は半凶2枚を木の枝に結び、真っ直ぐ家へ帰った――。




◇◇


 それではサクッと、答え合わせに行こう!


『半凶』×2の1年……まきお家に何が起きたのか!? それとも、何も起きなかったのか!?



 結果……正しく『半凶』だった――。

 内訳は以下の通り。


 上半期~数多くの不良品に見舞われた。


 野菜を買えば、中身が腐っている×複数。

 肉(豚)を買えば、獣臭=全て破棄×3。

 新品のソファーを買えば、破れた状態で届く×1。


 後は夫婦揃いのノロウイルスや、私に陽性腫瘍が見つかったりもしたが、まだ小さいので経過観察(現在は切除済み)。


 どれも騒ぐ程の不幸ではなく、? もあって「今年は仕方がない」と穏やかな心でやり過ごした。



 そんな感じで時は過ぎ、気付けばもう12月。


「なんだ、こんなものか……」


 パッタリと細かい不幸が消えた、下半期のクリスマス~私達はチキン片手に高笑いで無事を祝った。


 しかしまだ、1年は終わっていない。

『半凶』はしっかり継続していたのだ……。



 12月26日(高笑いの翌日)。


 赤信号で停止をしていた旦那の車に、後方より4トントラックが突っ込んだ。


 救急車で搬送された旦那……。

 私が事故を知ったのは、からの電話だった。


「さっき事故にあって、今病院の帰り。これから帰る」


 そんな軽めの報告だったが、改めて聞いた事故の詳細に、吐き気がしたのを覚えている。


 脇見運転とはいえ、減速していた相手。

 助手席の鞄に手を伸ばし、頭を低く保っていた旦那。


 これらの偶然がなければ「ムチ打ちどころじゃ済まなかった」と、警察に言われたそうだ。


 命があって本当に良かった……。  終わり

                


 さて、どうだろうか?


 これは『半凶=おみくじ』が関係している?

 それとも、ただの偶然?

 

 どちらにせよ、年始めは新たに「気合いを入れ直す」必要はあると思う(特に初詣と御神籤を推奨)。


 それではまた……良い正月をっ!

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阿呆な日常【一話完結タイプ】 まきお @makikichan

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