第3話 これで会社を辞めました。
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■ これで会社を辞めました。
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▼ 翌朝 ▼
「イテッ!!」
んんぅ、こ、ここは地獄?、いや天国なのか?
周りを見渡してみるとどう見ても自宅の風呂場だった。あぁ...俺は死ねなかったのか...
血が固まらないように浴槽に浸けていた手は意識を失う時にはずれてしまったんだろう。
そもそも致命傷になりうる動脈までは切れていなかった。
信二は手首の左側を切ったが、動脈は手首のほぼ中心を通っているのでよほど気合がない限りは傷つけるのは難しかった。
そう入っても切った手首は痛かったので病院へ行くと傷口を見て自殺を疑われたがなんとかごまかした。
医師も気づいていただろうが《はぁ》とため息を付くて納得したようだった。
傷口を縫ってもらっているときい本物の自殺患者というか、手首をかなり深く切った自傷行為の患者が運ばれてきたせいで俺の方は有耶無耶になってしまったの好都合だった。
チラリとしか見れなかったがかなりの出血をしていて文字通り真っ青な顔色をした女性だった。
彼女は成人しているかどうか微妙な年齢でへたすりゃ高校生かもしれない。
別に知り合いでもなんでもないのだが妙に親近感が湧いてきて気になったがすぐにカーテンを閉められたのでそこでおしまいとなっった。
▼ 会社 ▼
病院を出てから会社へ行くともう、昼前になっていた。
適当な理由をつけて遅刻の連絡を入れると専務から呼び出しがかかる。
「失礼します。」
「んっ、まあ、そこに座り給え……」
専務はそう言うと座っていたデスクを離れソファーへとやってきた。
「ん、怪我をしたみたいだね。大丈夫なのか?」
「あっ、はい、大したことはないんですが念の為に病院によって来ただけで全然問題はありません。」
「そうか、それは良かったな。
ところで昨日、街金が取り立てにやってきたそうだが、そんなことを起こしてもらうと我社として非常に困るんだがね。」
「あっ、それは……」
俺が言いかけると専務は手をかざして俺の発言を遮る。
「まあ、君のことだからちゃんとした理由があるんだろうね、しかし今はそんな事は関係ないんだ。
わが社の顔である部署に取り立てが来るなんて事はあってはならないんだ。
そうなる前に相談でもしてくれればまた違った対応が出来たんだけどねぇこうなってしまったからには仕方ないんだよ。君ならわかってくれるだろう」
はぁ、つまり、素材などを扱う責任者が借金で苦労してるなんて広まったら、痛くもない腹を探られるし世間体も悪いってことか……つまり首か......
「はい、わかっております。」
専務は満足そうな顔を浮かべると処遇を切り出した。
「最近、新島にダンジョン出来たことは君も知っているだろうそこに所長として赴任してくれないか?」
ん、新島のダンジョン……あぁ、しかしあそこは現状大した素材も上がってないし現地スタッフ1名でスタートさせるんじゃなかったのか?、それにあそこは別会社になるはず、ということは出向というより転籍になるんじゃないか?
「あのう、それって転籍になるんでしょうか?」
気になる部分を直接専務に聞いてみた。
「うーーん、心苦しいか、完全別会社で出向と出来なくてねぇ、転籍となるよ、あぁ、もちろん退職金はでるよ。」
「はぁ……」
つまり首ってことだな、そしてついでに厄介払いもできるとまぁ、派閥が敵対派閥ってことをこの鬼の処遇も分からないではないけどね。
「断ったらどうなりますか?」
「うーん、残念だけど辞めてもらうことになるかなぁ……だが、君が一身上の都合で辞表を出せばこれまでの会社への貢献も含めて退職金は倍額だそう。
そう、時間は挙げられないけど考えてくれ給え……」
「わかりました。辞表を提出したいと思います。」
倍額ねぇ...倍額と言ってもうちの社の規則では退職品は退職前に急に上がるシステムでそれまでに辞めるとかなり低い金額になるはずだ。例え倍額でも定年の退職金には及びつかないはずだ。
はぁ、でも、ごねてもっ結果は変わらないだろう、倍額でも御の字かもしれないな。
「ん、そうか、そうか、英断、流石だね、では有給も残っているだろうから消化後の日付で退職としよう。業務引き継ぎの必要はない、速やかに休暇に入りたまえ」
専務はかなり上機嫌だ……ちょっと悔しい気もするがここでごねても結果は変わらないうちの派閥の山内副社長でもどうにも出来ないだろう、買い取り部門の責任者が借金で追われてるなんで醜聞は見逃せないはずだから……
しかし退職金倍額とはずいぶん気前の良いことで……まっ、もらえるものはきちんともらっておくけどね。
俺は24年間努めた会社を妻の義父のせいで辞めた。
それからしばらくは慌ただしい日々が過ぎていく。
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