第13話

此処は美味しいで有名らしいファミリーレストラン。


同じ席には桃ちゃん。

そして私の好きな人、鬼山田くんがいる。


少し遠くにはえちかちゃんこと南沢さん。

その隣には強オーラのお姉さんのあおばさん。


そしてレジには確かたけのさん。

家にはおかあさんと引き籠もっているおとうと。


そんな現在東京都のとあるファミレスの一角。


私は美味しいパティーメルトをむんずと手で掴み食べていた。


少しぷちパニック気味だったので状況を整理したけどやはり状況は変わらない。



桃ちゃんはふふんとばかりにどやっている。

彼は何故かこちらのテーブルに来てくれた。


しかし私は鬼山田くんの顔は恥ずかしくて見られない。


近い、近すぎるんだよ。


自分に応援。がんばれさらお。

こんなチャンス滅多に無いけどアレだよあれ。


ピンチはチャンス嗚呼違った。

じゃあチャンスはピンチだよおおお。


頭は結構、動いているのに言葉は全く出なかった。


そう。

緊張が私を黙らせる。沈黙のさらお。


「……良く来ているよね、此処に」

「……………………そうかな」


「うん。私も此処でバイトしているからさ」

「…………家からの」


「いえ?…………」

「……最寄り駅なんだ、此処の駅」

「そうなんだー」


と言いながら私に目で合図を送る桃ちゃん……。


「………………」


頭が回らず言葉が出ない私は沈黙を守る。

今は静寂だけが友人なのよのん……。



「結構さかえているから暮らしやすそうだね、この辺は」


「うん。それでもまだまだ町作りの計画が立てられているらしいから、これからだよ」


沈黙を回避させるべく話す桃ちゃん。

私の代わりにがんばって。


聞かれたら怒られそうな私の思考。

でも今は何を話してもボロが出そうな感じ。


とそこで鬼山田くんは先程の女性、あおばさんを凝視しながら話している。


動きと共に首が動くぐらいに。


「ほほぉー。鬼山田くんはあおばさんが気になるのかな?」


「…………そ、そんなコトはな、いや、有るのかな? ……解らないや」


「……遠くで見るだけにしとき、あの人は……」

「………………そうするよ。……少し、気になっただけなんだ」


「……ふーん。見るなら他にも女子はいるでしょ? ホラ、此処にも」


両手を広げて桃ちゃんは鬼山田くんに私たちをアピールしている。


「…………そうだね。じゃあ…………○○を見せてよ」

「えっ?」


鬼山田くんはコーヒーを飲み、返事の後に小さい声で…………私たちに何かを見せてと話したが聞こえなかった。


「…………いや、何でも無い。あ、そろそろ僕は帰るね。また明日、二人とも」


えっ、えっ……。

彼は行ってしまった。


「………………うーん、逸らされたかな?」

「………………」


「彼は…………一筋縄では行かないね」

「…………そうなの? 桃ちゃん」


「うーん………………に頼むか……いや」


そう桃ちゃんは話し一人で何かを考えている様子。

私は彼を目の前にして禄に話せなかった事を後悔していた。


そうなる事すら解っていた筈なのにね。

ダメだなぁ…………わたし。


いやいやでもでも彼と同席してお茶出来た。

桃ちゃんに感謝。


前向き前向き。


今度……学校でも切っ掛けを作って話してみよう。

まずソコが一歩め。


鬼ヶ島への道は遠いのだ。


その後は南沢さんがバイトを上がるまで長居して皆で一緒に帰った。


ご飯美味しかったなぁ。

また来たいね。

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