第11話
「おはよう、さらお」
「あ……桃ちゃんだ、おはよおー」
学校の下駄箱で声を掛けられた。靴が上手く履けなかったからトントンしながら挨拶を桃ちゃんに返した。
桃ちゃんとは小学生の時からの友達で中学、高校と同じ道を偶々歩んでいる。
そんなに同じクラスにはならなかったけど帰り道が同じ方向という事も有り、タイミングが合えば一緒にお家近くまで帰る感じ。
高校に入って少ししてから、桃ちゃんはアルバイトを始めたらしく、一緒に帰る機会はだいぶ減った。
「……最近調子はどうだい?」
「…………うん。まぁまぁだね。いや、結構良い方なのかも」
「へぇー。珍しい。私のこの問いにそんな良い答えが返ってきたのは初めてだよ?」
「…………そうかな?」
「……うん。あ、もしかして鬼山田くんと良い事でも有った?」
「…………な、ないよぉー。ぜぜんん」
「さらお、全然が言えてないよ全然」
ぜぜんんぜぜんんぜんぜんぜんぜん言えてるYO。
「良い事……良く目が合うぐらいだよぅ」
「ふむー。そういえばアルバイト先に何度か食べに来ているね、彼」
なんですと? ええと、食べ物屋さんだっけ。そーなんだ……。
「桃ちゃん、今日行こう……」
「ええー。今日は私バイト休みなのになぁ……」
「おごるからいこうよ」
「…………うちのお店、結構高いよ?」
「大丈夫、お小遣い一杯あるから」
「うーん、……まぁ良いか。でも来るかどうかも解らないよ? そんなそこまで常連って程じゃ無いし。大体来ると二時間近くはいるけどね」
「どのみち一度は行きたかったんだ。桃ちゃんのバイト先」
放課後の予定は決まった。
一体どんなお店なんだろう。楽しみだね。
「ねぇねぇ、桃ちゃん。どんな感じの食べ物屋さんなの?」
「あぁ、うーんと、一部のマニアには堪らないらしいよ?」
「そ……大丈夫なお店なの?」
「まぁ、メイド喫茶みたいなもんだよ」
「あぁ、なるほどね。ってなんですとぉ?」
鬼山田くんはメイドさんが好きなのか…………。
何処まで常連なんだろう?
「……多分、ケーキとかパイが美味しいから来ている気もするけどね、ああでも制服の胸は皆、大きく見えるね。服の作りからも」
「そなんだ…………それは凄い」
私はまだまだ努力が足りていないのかも。
……従兄妹で同い年のお兄ちゃんはこう言っていた。
ちっぱい最高。良いじゃ無いか。個性なんだってよ。
妹もそんな感じだけど、それが良いんだって男も多いんだよ!
負けるな。大丈夫だ。その思いは必ず届く!
…………ほんとかいな。
「じゃあ放課後……そっちに行くから」
「あ、うん、解った。待ってるね」
今日のご予定は埋まった。
教室に着くとつい目で追ってしまう鬼山田くんはまだ来ていなかった。
遅刻ギリギリで来て席に座っていた。うーん、何か珍しい。
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