第10話



最近学校で鬼山田くんと良く目が合う。


一日の中で大体だけど10回以上20回未満。

夢の中を足したら30回以上。


もうこれ両思いあるかもしれん。

うう、どおしよ。



顔が熱い。



まともに見られない。


目があった瞬間に目を反らしてしまう。


遠くを見たり黒板を見たり。そのまま首を回したり。

彼は真っ直ぐな瞳で私の方を見ていた。


意識し始めたらもっと意識する様になった。

彼の中でもそうだと良いなぁ。

……夢見すぎって桃ちゃんに言われそう。


夢は10回ぶんぐらいだもん。



何故私って鬼山田くんが好きになったんだっけ?

って考えていたら理由はそんなに、いや、全然無かった。


うーん。


思い出せるのは、たまたま猫が学校に迷い込み鬼山田くんが保護した。


とか、犬がねとか猿やキジがねとか……何か動物に好かれているんだ、彼は。


その辺からだとは思うんだけど。

多分、好きや恋に明確な理由って無いのかも。


……でも猿とキジは言い過ぎかな。




って思って初めて意識した。


自分の体はどういう風に動けるのか。

手は、首は何処まで曲がるかな?


足は何処まで上がるかな?


私の腕は何処まで届くのだろう?


そんな事まで意識しないよね。

大体こんなもん程度だ。


私は何時か月に手が届くかも知れない。


意識すれば、みょーんって。違うよ、比喩なんだよう。



そんな感じで実際はどうであれきっと彼と私の距離は近づいて来ている。


あとは切っ掛けだけ。

そんなわくわくな予感。


桃ちゃんに話したら一言、それは願望だよとあしらわれた。


がるーずとーくしよーぜっ、桃ちゃん、もっともっとぉ。

恋バナに飢えていたわたし。


そんな時もあるよね。


同じクラスの最近仲良くなり始めた南沢さんにはまだ鬼山田くんの事は話していない。



いま話したら変にルート分岐しそうで怖い。


きっとタイミングが重要なんだ。


去年に会った従兄妹の影響で少しゲーム脳になった私。

来年は大型タイトルが出るから楽しみだって話していたなぁ。


なんだっけ、ええと……と、とみ…………うーん、忘れた。



私も今年が勝負だと思っている。

……でも何かがまだ足りない気がする。


いや、多いのかな?

ええと、犬、猫、キジ、猿、桃…………待っててね、鬼さん。


きっとこんな感じのリアルゲームなんだ。

私のいま。


来年になるとループして元通り。

リトライ、んな訳無いか。



そいえば南沢さんは最近バイトを始めたって話してたね。

何のバイトだろう?



私はバイトした事無いんだよね。

まぁ時間があると最近は配信に廻しちゃう事が多いからね。


ふむむ。バイトかぁー。

あ、お花屋さんとか良いな。


確か桃ちゃんは食べ物屋さんでバイトしてるって言ってたかな。



週に1回とか2回なら時間あるかなぁ。


学生でこのまま卒業したら社会に出るって考えるとバイトも経験しておいた方が良いんだろか。


むむむむー。


……そのまま配信者っていうコースに乗っているよね。


いま……。


私の人生、成り行き号が発車してしまう前に何とかしないと。


行き先大事。ゴールが解れば道が見えるんだ。

解らない場合は道草で、道を探して行く感じ。



従兄妹のお兄ちゃんはここ10年ぐらいでコミニュケーションの在り方が大きく変わったって話していたね。


何でも電子の世界が現実に歩み寄ってきたとか。


それを聞いて逆の様に思えたんだけど、もうフィールドは電子の世界で仮想空間。


人間も形を変えていくのではって言ってたかしら。

未来は誰にも解らないぐらいの可能性を秘めているんだってさ。


それで……仮に心。


こころが電子上に移行できたら、そっちがメインの世界になってさ、こっちの世界の身体にそろそろ時間だ、ご飯食べさせないと的な感じ?


んで、身体を維持、そろそろ運動、そろそろ就寝。

とかを自分の身体に命令する世界とか。


すっごくサイバーだね。


それは融合であり進化の形でーって面白いよね。

少し難しいけど。



それってネットゲームとかツールで行われている事が主になって。


挨拶とかも当たり前になるって感じでしょ?

凄いね。進化って。


私も気がつかない内に電脳に完全支配された女子になっているのかも。

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