第9話

電車に揺られて駅に着く。

坂を下って今度は登る。


私の通う学校は昔は山だったのだろう。

駅からは徒歩で十分ぐらい。


学校の近くには駄菓子屋さんが一件ある。

それ以外には何も無い。野や花とか畑はあるだろうけどね。


ここ本当に東京都? って感じの場所。

それが私の通う学校だった。



これからの街。

近々建設が始まるであろう小高い丘。


多分、シャベルカーみたいのがグワングワンと機敏に動いて今日も多分、土を運んでいる。


きっと数年後には違う景色になっちゃうだろうな。


そんな場所。


何時か思い出に浸ろう。

私は景色を思い出に閉じる。



ふと気になって後ろを振り返るとそこには鬼山田くんと南沢さんがいた。


何か凄い偶然? いや、二人ともご一緒?


って考えていたら、二人とも隣の存在に今更ながら気がつくという感じだった。


偶然って良くあったらもうそれは偶然じゃないよね、あぁ、必然か。


鬼山田くんは今日も格好いい。

私の好きな感じを漂わせている。


隣のクラスに居る数少ない私の友人の桃ちゃんには、あっ……そうなの?


と言われた。話さなきゃ良かったぜ。

ちっ。とやさぐれたわたし。


良いじゃん良いじゃん……別にね。

私だけが知っているんだ。


彼の良きを。



「おはよう。遠江さん」



と南沢さんに声を掛けられおはようと返す。

少し気まずいもあり鬼山田くんに会釈してみた。


鬼山田くんはそんな私の顔を見て難しそうな考え込む仕草を少ししていた。


「行きましょ……」


と南沢さんに誘われ再び学校を目指した。


後ろには鬼山田くんがいて、視線を感じる。

そんな感じの通学日だった。


気がつかない内に、運命の歯車は回り続ける。

ぐわんぐわん…………。


音、ちょっと違うか。




「この前の生配信。とても面白かったわ」

「あ、ありがと……」


南沢さんは私のメンバー……『しりあい』だ。


きっと今、さらっちの正体を知っているのはこの南沢さんだけだろう。


多分かなりな感じで色んなチェックもされている気がする。


そして学校も一緒、席も前と後ろの間柄。



あれ……。



私、殆どの時間を南沢さんと過ごしているって事になるのかしら?



彼女を見ると今日も可愛かった。


「でも………うちの制服の端が少し映り込んでいたわよ…………気を付けてね」


と言われた。

……恐るべしは南沢さんか、忘れていた私か。


多分……両方かな?


そいえば私。

彼女、南沢さんのハンドルネームを知らない。


「南沢さんは『しりあい』で何ていうハンドルネームなの?」


「………………今はまだひみつ。何かの機会があれば話すわ」


と怪しげに、妖しげに話してくれた。

流石に『しりあい』メンバーのネームは解るはず。


誰が南沢さんかなぁ?

って、想像するのは結構面白かった。


私の中で、本命対抗と穴と穴馬のメンバーをエントリーさせた。

今度脳内で予選会をしよう。


……謎のお遊びが脳内で動いていた。

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