第23話
お久しぶりです。
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5月11日
ゴールデンウイークが終わり、無事五月病にかかった俺はそれはまぁ怠惰に過ごしていた。
高校総体で部活をしている奴が頑張っている中でゲームしたり本を読んだり、バイトをしたり、ダラダラと勉強してみたり……簡単に言えば腑抜けてた。
そして今日、いつも通りダラ〜っと登校した後の朝のホームルームで事件は起こった。
「お前らー今日から中間テスト2週間前だからなー。1週間前になったら部活は原則活動禁止だぞー。まぁ精々勉強しとけー」
「ゑ?」
驚き桃の木山椒の木。中間テスト? 何それ美味しいの?
「藤堂お前初めて聞いたような顔してんなよ……。前から言ってたじゃねぇか……」
確かにそんなことを言っていたような…駄目だ。頭がアッパラパーで思い出せん。ここは高宮にでも聞いてみるか。
「なぁ高宮。マジか……あーやっぱいいや」
「」
隣を見れば初めて聞きました感半端ない顔をしている高宮がいる。
「まー、うん、勉強頑張れよー? 特に藤堂、高宮、有原ー。お前らいつも俺の授業で寝てるから心配だぞー」
あかん、数学寝てんのバレとる……。これから死ぬ気でやらな……。
「りょ、了解です」
「おう。んじゃーホームルーム終わりー。お疲れー」
そう言って去っていく守田先生。……よし。
こうなってしまった以上、俺の言えることは一つしかない。
地獄の2週間、はっじまっるよー☆……ちょい待ち、冗談だから引くな。
〜昼休み〜
現在、俺、誠司、有原は屋上にいた。理由?
そんなの決まっている。巻き込む為だ。
「さて、これから作戦会議を始めようと思う」
グラサンをかけたダンディーな感じで発言する。
「お? 急にどしたん? 話聞こか?」
「……まさか」
何かに気づいた様子の有原。流石数学を寝ている同士、気づいたか。
「ふむ、有原。わかったか? 言ってみてくれ」
「ああ。……学園祭に向けて体を絞ろう、という話だな?」ドヤァ
「……」
「え? そうなん、広嗣? ……ってどうしたんだよ、急に天を仰ぐなんて」
「?」
「えーと、だな。俺が言いたいのは「わかった! 好きな女子でもできたか?」……違う!」
確かに最近見たアニメでやったからやってみたいと思って真似したんだけどさ、まさかここまでずれまくるとは思わなんだ。
先に議題を言ってない俺が悪いのだが……。
「今回の議題は中間テスト対策だ」
一旦気持ちを落ち着かせた後に議題を発表する。
「中間テストぉ? まぁテキトーでいいだろ」
「……左に同じく」
発表するや否や白けたように2人は発言する。フッ、甘いな……。
ここで今更かも知れないがテストイベントについて説明しておこう。
1学期〜3学期にそれぞれ3回(学期始め、中間、期末)あり、大体3日〜4日程自由行動ができなくなる。
学期始めのやつは例外として1日で終わる。
ではテストの際なんのパラメータが1番重要か?
もちろん学力だけ……と言いたいところだが、ここがクラ恋の面白いところ。
なんと器用さも必要になってくる。
それはなぜか? 一言で言えば「時間配分」、それに尽きる。
なんでも、定期テストはどうかは分からないが大学入試では時間配分が重要とされているから反映してみたんだとか。
まあ実際問題、器用さが必要かと聞かれればうーん……とはなるが時間配分は大切だ。
閑話休題。ここでメリットを説明しておこう。
まず、良い成績を取った場合、他人の評価が上がりやすくなる。特に知性を好むヒロインの攻略の際には欠かせない。
他にも両親から手紙が来てアイテムをもらえたり、次の月の仕送り額が増える。
とどのつまり、良い成績を取ればいいことが返ってくる、ということだ。
さて、話を現実に反映してみよう。俺は主人公じゃあない。
故にヒロインの好感度が上がらない。そもそも出会ってないし。……え? 皆川がそのヒロインに該当するんじゃないかって?
ところがどっこい、実は別にいる。
確か……7組だっけ? ほら、あの主人公がいるあのクラス。あそこに所属している。
一応ゲームで見たことあるからな、間違いない。
……あれ、そういえばなんで入学式の新入生代表挨拶をしてないんだろう。ま、関わんなそうだし考えるだけ無駄か。
んで次。お小遣いやアイテムは……期待できそうにないな。お小遣いの方は交渉の余地があるかも知れないが、何だよ、アイテムって。
母や父、妹からよう分からんモノもらっても困るんだが?
考えごとが長くなった。2人の顔を見渡せば
「こいつ大丈夫か?」って顔で俺を見ている。
「お前ら……本当に勉強しなくていいのか?」
「いや、勉強しないわけじゃないけどよ。テキトーでいいんじゃね?ってカンジよ」
「……女子にモテるぞ」
多分な。
ピクリ、と誠司が反応し、こちらを見上げる。
うし、釣れたな。次は有原だ。
「あー……より、筋肉についての理解が深まるんじゃないか?」
生物とかやれば多分。俺は知らん。少なくともあったとしても範囲外だと思う。
有原も弁当をつまむ手を止め、ギョロリとこちらに視線を向ける。
「「その話、詳しく」」
……よし、釣れた!
それぞれ食事を終え、昼休み終了まで会議をする。
やれどこから勉強していくか、場所はどうするか、とか。
「よし、じゃあまずは不得意教科を明らかにするか。俺はもちろん数学。他は強いていうなら理科だな」
「俺は英語以外全部! まぁ文系科目はそれなりにできるっちゃできるぜ」
「……俺は数学、英語、理科だな」
「「「……」」」
全員で目を逸らす。
<悲報>俺たち、理系科目ができない。
困ったことになった。まさか全員理系全滅とは。教え合う意味ほとんどないやんけ。
どうしたものか。いっそのこと守田先生のところに凸るか? ……中々良さげな案だな。早速提案してみるか。
「なぁ、守田先生「……いや、やめておこう」お、どうした?」
「……筋トレの話で盛り上がって勉強どころではなくなってしまう」
「あの人そんな趣味あったのか……」
初めて聞いたぞ、そんなこと。
「ああ。最近始めたらしくてな」
「いや、あの人も教師だから抑えが聞くだろ……」
「……いや、俺が話を振ってしまうんだ」
「お前かい!」
数学の話は先送りにして理科について話すか。
「えーと理科は…… 一年は生物か。となると尾根枝「絶対に嫌だ!」どうした誠司。ビックリするじゃんか」
俺の鼓膜さんが死んじゃうだろ。
「尾根枝は嫌だ尾根枝は嫌だ尾根枝は嫌だ……」
どこぞの魔法学校かな? そんなヤバい奴だっけ、尾根枝先生って。
「あいつさ、なんか怖ぇんだよ! 目線合うとウインクしてくるし! 問題演習してて視線感じるなーって思って顔を上げると俺のテスト見てニヤついてんだぞ⁉︎」
「あっ……」
誠司の為にも辞めとくことにした。
うーむ、参ったな。先生に聞くという案が見事に潰れてしまった。
やっぱり地道に頑張って理解を深めていくしかないか。
時計を見ればそろそろ時間だ。今日はこれぐらいにしておこう。
〜放課後〜
今日は家に帰って計画でも立てるか。
ああさらば自堕落な日々。そしてこんにちは、地獄の日々。
「……藤堂」
「およ、有原。どした?」
「いい案が思いついた」
「お、マジすか」
有原が教えてくれる人に目処が立ち、その人の場所へ連れて行ってくれるというのでついていくことにした。
「……で、貴方たちが来たって訳ね」
「ははっ、どうも」
なんとそこには皆川が! まぁ、驚きだわ!
という冗談は置いといて。そうか、皆川なら確かに全教科教えられる。
問題は教えてくれるか、という話だが。
「えーと、話はどれくらい聞いておられるんで?」
「貴方たち3人組が理系が全滅、貴方の案も挫折したって所ね」
「つまり全部やん……」
おっとうっかりエセ関西弁が。実は結構な頻度でエセ関西弁を使ってます。
「それで、という話だけど」
「おう」
「貴方たちの話、引き受けるわ」
「ま、だよな……まじ?」
「ふっ……私は委員長よ? ならば悩めるクラスメイトを導く、というのも大事な仕事だもの」
おお……すげぇな委員長って。……しかしそこまでやらないのでは……いや、今は多様性の時代だからな。委員長も多様性に満ちているに違いない。
「いやはや流石委員長殿。頼りになりますなぁ」
「オーホッホッホ! もっと褒めてくれてもいいのよ! というか褒めなさい!」
チョロ……ゲフンゲフン。これで少しは不安が軽減された。これから頑張ろう。
「あ、この話を引き受けるのはいいのだけれど、それなりの対価を払ってもらうわね」
……ファッ⁈
「Wait a minute,please 」
「OK」
気が動転して英語でタイムをとってしまう。
クッ、急に真顔になって言ってきやがった。いやまあ見てもらえるだけありがたいからこんな言い方はアレだけれども。
対価ってお前……さっきの委員長発言どこ行った?
どの世界線にクラスメイトのお願いを対価と引き換えに聞く奴が居るんだ。
しかしこれもまた多様性といってしまえばそれまでである。
多様性って便利な言葉だね!……いや、こんなアホみたいな使い方してんの俺ぐらいだわ。
「What do you want?」
「I want you to help me 」
ほう、助けとな? あの皆川が? 珍しいこともあったものである。
「What should I do for you?」
「Do you know when the school festival starts?」
「I don’t know」
「7月の初週の土日よ」
お帰りジャパニーズ。……ジャパニーズは英語か。じゃあお帰り日本語。
「しっかし学園祭、ねぇ」
そういやあったな、そんなもの。中間に気を取られすぎてすっかり忘れてたわ。
「貴方、忘れてたでしょ……まぁ、それはどっちだっていいの。私がやりたいのはズバリ、模擬店よ」
「へぇ……ん? でもお前さん、ソフトテニス部だから模擬店やるじゃん」
「そうね。けれどこの学校、申請すれば個人の模擬店の出店を認めているの。それ相応の責任を持つことが求められるけど」
……段々と雲行きが怪しくなってきた。外も、そしてこの話題の先行きも。
「外見たら怪しい天気だなー。こりゃー早く帰んないとー」
「アルベルト」
有原がにじり寄ってくる。まるで元から俺が逃げるのを防ぐポジショニングである。コイツ……俺を嵌めやがった!?
「ちょい待て有原。お前まさかこの話を知っていたな⁈」
「……許せ」
ちょい待てやコラ。お前屋上でテキトーでいいとか言ってやがったのに……ハハーン、どうせ皆川にでも口走って怒られたんだろ。……じゃなくて! このままじゃこき使われてしまう。
ダラダラ模擬店の制覇をしようと考えていた(さっき思いついた)のに……!
嫌というわけではないが前世じゃあ全然実行委員に入っていて忙しく、模擬店を制覇できなかったのだ。是非今世ではしたいものである。
「時に藤堂君。模擬店をやるとして貴方はお好み焼き又はたこ焼きならどっちがいいかしら?」
「どちらでも大歓迎でござんす。何なりとお申し付けください、皆川様」
早すぎる陥落であった。
有原と皆川と別れ、家路に着く。一応勉強会は今週の休みにやることに決定した。
なお、
「貴方にはできれば私と一緒に教師役に回って欲しいの。しっかりやっておきなさい」
などというお申し付けがあったので家に帰り次第やろうかと思っている。
「まずは課題終わらせな……」
ああ、地獄の始まりやね……。あ、ご褒美のアイス買っとこっと。必要経費だから浪費にはカウントしません。まあこうやってお金は減ってくんですけどね。
家に帰り課題をある程度終わらせた。まぁ1学期だし、マジックアイテムこと解答さんにお世話にならずに済んだ。
疲れたしアイスでも頂こうとしよう。
「〜♪」
今日は王道のバニラ。いつも妹に献上してるお高いやつ。実は一回も食べたことないんだよね。
「う、上手い……!」
こりゃ妹も好きな訳だ。リピートしたい……いやしかし節約……バイトについてもうちょっとオッサンと交渉してみよう。
そうこう考えているうちに食べ終わってしまった。
美味しい時間は一瞬で終わるのにこれからも苦痛は続いていく。
まぁ頑張らなきゃいけないんですけどね。
結局、この日は数学に費やして終わった。
疲れたので最後に一句。
夢にすら 出てくる数字 終わりだよ
a、bこないで お願いです
うーん……才能無し!
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