第12話
都合のため、4月9日は本来なら休日だったということにさせてください。申し訳ございません。
一応ラブコメのラブの方の回です。長くなってしまうので2話構成でさせていただければと思っています。
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4月12日
今日は待ちに待った(?)テストの日だ。
え? 10日と11日はどうかしたのかって?
両方とも休日になった。9日は本来なら休みだったらしい。まぁ振替休日ってやつよ。
一応勉強してたよ……おいおいそんな疑いの目を向けないでくれ。
テストという事で今日は午前3教科、午後2教科をして終了だ。順番は国語→数学→英語→理科→社会という順番。面倒だぜ……やれやれ(やれやれ系の主人公ってこんな感じ?)。
教室に入るとみんな机に齧り付いて参考書なり何なりを見ている。
席に着けば隣からブツブツ聞こえたのでギョッとして見てみれば高宮が数学の公式を唱えている。
「おはよう。突然ですまないが高宮、もう少し声を小さくしてくれないか。俺は数学の公式を聞くと眠くなってしまうんだ」
了解です、とだけ述べて声のボリュームを下げてくれた。いい奴だ。
……あ、声が小さいと念仏を聞いているようで更に眠く……。
「おーい、藤堂ー。起きろー、ホームルーム始めんぞー」
間延びした声に起こされた。目を擦りながら前を見れば守田先生が呆れた目で俺を見ている。
「どうしたー? 寝不足かー? 勉強もいいけど睡眠もしっかりとれよー」
「違います先生。高宮が数学の公式を唱えていたので眠くなりました」
隣でええっ! 私のせいですか⁉︎ という声が聞こえたが無視することにした。
因みに守田先生はゲラゲラ笑い転げていた。
最近、年上の男性が大笑いするのをよく見る気がする。
ー国語ー
特筆することは特にないな。
サラサラと解答を埋めていった。
ー数学ー
前世の高校の始めのテストほどではないが絶望感を味わった。
眠いがなんとか振り切って頑張りました。
まぁ6割いけるか……?
ー英語ー
リスニング以外は簡単だった。リスニングは相変わらず出来そうにない。
しかも今日に限って話す人の癖がすごい奴だった。 あの聞き取れないし速いしで聞いていて最早笑えてくる奴。ハハッ……はぁ。
さて3教科が終わって昼食の時間になった。
大丈夫、今日は家からパンを持ってきた。
因みに中身はバタール。美味しいよな、あれ。
今日も屋上で食べようかな、ということで席を立とうとすると高宮に話しかけられる。
真面目な顔をしているので、大事な話のようだ。
「藤堂さん。忘れたとは言わせませんよ……先程のアレなんだったんですか⁉︎ 私声小さくしましたよね、どうしてですか⁉︎」
違った、どうでもいい話だった。本人にとっては大事なのかもしれないが。
「考えてみろ高宮。お前は念仏を聞いていると眠くなってくるだろう? それと同じだ」
「ああ確かに。特にこの街のお寺のやつは特に眠くなりますよね……って違いますよ! 私が言いたいのは私のせいなんですかっていうことです」
「いいノリツッコミだ。それはそうとして頼んだ後に気づいたんだ。あ、声小さい方が眠くなんじゃん、と。」
「ええ…? 自分で頼んでおいてですか…?」
こちらを残念なものを見る目で見てくる高宮。
くそう、いつか俺もそういう目でお前を見てやるからな、とくだらない復讐を誓いながら退散することにした。
屋上に着くと誠司は既にいた。駄弁りながら昼食を食べる。
どうやら誠司は英語以外はそこまで出来なかったようである。……しかしこいつ英語できるのか。こう言っては悪いが意外である。
もしかしたらなんかコツでもあるかもしれない、と思いどうして英語はできるんだと聞けば、
「え? だって英語できれば外国の美女とお話できるべ? じゃあやるしかないっしょ!」
とのこと。因みにリスニングのコツはひたすら練習あるのみとのことだった。やはり勉強に近道なし。
昼食を食べて英気を養ったところで理科と社会に臨んだ。
理科はまぁできなくはないし、社会は得意なのでこれまた特筆することはなく終わった。
ふー終わったということで背筋をグッと伸ばす。テストは終わって回収次第終了ということでもう学校に用はない。
今日はさっさと帰って寝よう。
4月13日
何とか今日も頑張って布団から出て、準備を済ませ学校へ向かう。
半分寝ながら歩いていると曲がり角付近に近づいた。
こんな感じで学校に向かっているなんて危ないよなぁ、と他人事のように歩いているとドンッと中々の衝撃に襲われる。ハッと目が覚め、
「敵襲か⁉︎」
と身構えるも誰もいない。
まさか幽霊……? いやいやそんな筈は……いや、昨日テレビで見た「コーナーマン」という曲がり角から襲ってくる謎の男かもしれん。
刃物が自分に突き刺さっていないか確認しようと下を見る。
そこにあったのは刃物ではなく、倒れている女性がいた。
「まさか……コーナーマンは女性だったのか……?」
「違いますよ!」
あら、聞き覚えのある声。
ガバッと女性が立ち上がる。高宮だ。
「怪我は無いか?」
「無いですよ。……藤堂さんのことですからもっとコーナーマンのネタを擦るかと思いましたがしませんでしたね」
コイツは一体俺のことを何だと思っているのだろうか。
「……宇宙人?」
「……顔に出てた?」
「いえ、何となくそんな感じがしたので」
「そうか……宇宙人か……いいな。でもどうしてだ?」
「私はそこまで異性の方と話すのは得意じゃないじゃないですか。ですが藤堂さんとは何故か普通に話せるんです。だからもしかしたら藤堂さんは異性じゃない何かなのではないかと思いまして!」
確かに前世の世界から来たような俺は宇宙人と何ら変わりがないかもしれない。言い得て妙だと感心した。
じゃあ学校行こうかな、と思ったところででふと疑問が出てくる。
「高宮は何でここにいるんだ? 高宮が走っている方向は少なくとも学校の方向とは違うぞ?」
「いやいや藤堂さん、いくら私がアホの子と言われているからって騙されませんよ」
「あ、やっぱり?」
「ええそうですとも!」
「やっぱアホの子だったんだなーって。ほら、そのアホ毛とか」
「全国のアホ毛持ちさんに土下座してください……ってそっち⁉︎」
「ああ。……因みに学校へはどっちに行けばいいか分かるか?」
「無論この道をこっちに行けば……」
そう言いながら指を指す高宮。ダメだコイツ。それでは学校と真逆の方に行ってしまう。
大丈夫か……? という雰囲気が伝わったのか、
「いや、待ってください……わかりました!
こっち? うん? あっち?」
混乱してあっちですか、こっちですかなんてずっとつぶやいている。
「……一緒に行くか?」
「お願いします」
こうして高宮と共に学校に行くことになった。
道中話しながら学校へ向かう。
「いやぁ……今日はリカちゃんが体調不良で休みで1人で学校へ行かなきゃだったので助かりました……」
「高宮は方向音痴なのか?」
「そんなことはない筈なんですが」
「今日は何時に家を出た?」
「ふっふっふ……7時15分です!」
「今は大体8時だから……立派な方向音痴だな」
「おっかしいですねー、いつからズレてたんでしょう?」
「さぁな……うし、学校にそろそろ着きそうだな」
「あ、そうですね。ありがとうございました。それでは!」
そう言って高宮は駆け出す……が、何も無いところでステンっと転んだ。
あいつにはドジっ子属性もあるようだ。
流石ゲームのヒロイン。属性が多いんだなぁ……。
一応介抱しようかと寄ったがすぐにぴょんっと立ち上がって走って行った。
特に怪我も無さそうで何より。
今日の主な予定は部活動紹介。部活に所属しない予定の俺にとっては授業がないラッキーな時間。
ゲームではどの部活に所属するのか、又はしないのかを選択肢で選ぶだけなので実際に見られるのは新鮮である。
例えばカナリア学園名物の音楽系の部活動紹介を観れるのはファンからすれば垂唾モノだろう。
カナリア学園は私立であり、部活動の数は多い。
事前に配られた部活動紹介パンフレットをざっと見ただけでもその数に圧倒される。
中にはゲームではないような部活がある。
野球部や吹奏楽部、サッカー部などのメジャーなものから下駄愛好会や畳愛好会、電化製品愛好会……いったいどこで活動してんだよとツッコミを入れたくなるものもある。
そうは言っても時間は有限で、どうやらメジャーな部活のみ今日は紹介するとのこと。
愛好会には自分の足で行けということなのだろう。
さて、部活動紹介を心待ちにしているとあっという間に午前の授業が終わった。
特に数学はいつの間にか終わってた。
守田先生が何か言いたそうな顔をしていたが気のせいだな、うん。
まずは腹ごしらえ、ということでいつもの場所へ。
「……なぁ誠司、お前いつも俺より先にいるよな」
「んー、そう?」
首をこてんと傾げる誠司。
いつもコイツは俺より先に屋上にいる。どんなに速く行ってもいる。
まさか授業をサボってここにいるのではなかろうか。
「いやいや、まだ入学したばっかりでサボるんはヤバいっしょ」
……そんなにわかりやすいのだろうか。
「何となくわかるんよ。だってほら、俺たちって親友だし?」
「え?」
「え?」
「「…………」」
「……昼食食べるか」
「いやいや流すなよ!あの運命的な出会いを忘れたのか⁉︎」
「まぁ確かに……いや、俺も友達とは思ってるぜ? けど家族に紹介できるか、と言われるとなぁ。俺姉と妹いるから口説かれても困るぞ」
「前者の部分についてぐう正論だな。……いくら俺でも親友の姉妹を口説こうとは思わねぇやい」
「教え子に手を出したやつが何をほざくか」
「あっ……。と、とにかく! 俺とお前は親友なんだよ! いいな!」
「いいんだが親友なら教えてくれ。そこまで親友にこだわる理由は何だ?」
「……中学時代女子とばかり話してて男友達がいなかった」
「……何か奢ってやるよ」
「マジ⁉︎ じゃあココアで!」
広嗣は 誠司 と親友になった!
広嗣の包容力が上がった!……なんてな。
そろそろお昼休みが終わるということで誠司と別れて教室に戻り、体育館に向かう。
クラスごとに移動しなければいけないというのだから仕方がない。
部活動紹介はつつがなく進んでいく。
メジャーな部活ばかりだからか定型分的な紹介が続いていった。
そろそろ眠いな……。
そう思っているとジャーン! とシンバルの音が響き吹奏楽部の人たちが入場してくる。
そこからは圧巻だった。
もうね、筆舌できないほど凄かった……というのは嘘だ。いや、凄かったのは嘘ではない。
つまりですね、俺は音楽がわからないのですごいとしか言いようがないってことですね、はい。
フハハ、前世で小6の時リコーダーで一曲吹けただけで先生に「成長したわねぇ……!」と泣かれた俺をナメるなよ。ナメてるのは俺か。すみません。
1人自虐を脳内で披露して観客から総ブーイングを喰らっているうちに吹奏楽部の演奏が終わった。いやー凄かったです。(懲りてない)
その後も幾つかの音楽系の部活動紹介が続いたが、どうやら演奏するのは吹奏楽部だけだったようである。流石製作陣が最も予算をかけたと言われる吹奏楽部の演奏シーンだ。
因みに主人公が吹奏楽部に所属すると度々演奏が聞けるらしい。
……そういえばそこに予算をかけすぎたのか他の音楽の部活は文章だけで味気ないと有識者が嘆いていたなぁ。
部活動紹介が終わり教室に帰る。
席に着いて時計を見れば3時と、個人的には帰るのにちょうどいい時間帯。
先生が来るまでボッーしながらと上の空を見るか。素数でも数えよう。
2、3、5、7、11、じゅうさ「藤堂さん、藤堂さん!」
「どうした高宮。俺は素数を数えるのに忙しいんだ」
「何かおしゃべりでもしましょうよー。ほら、さっきの部活動紹介とか! 特に吹奏楽部とかの話がいいかなぁーって」
そう言いながら話しかけてくる高宮。
確かに今暇を持て余しているのは事実なのでいいかもしれない……クラスの視線(殺気?特に男子から)が気になるが断ったら更に鋭くなりそうだし。
「吹奏楽部か……凄かったよな」
「はい……最初から迫力満点でした!」
「ああ、凄かったな」
「私は特に中盤が好きでですね、憧れてるんですよねぇ……この学校に来たのもその為で……」
「ああ、凄かったな」
「……さっきから凄いしか言ってなくないですか?」
「ああ、凄かったな……冗談だよ、そんな目で見るな。それにしても高宮は吹奏楽部に入るのか」
この高宮が吹奏楽部ねぇ……いかん、不安な感じが拭えない。
「……本当に大丈夫か?」
「うっ……だ、大丈夫です! リカちゃんも一緒ですから!」
リカちゃんさんに相当な信頼を置いているようだ。
「そうか……定期コンサートに出るようなら一報くれ。ささやかながら応援させてもらおう」
「……はい!」
丁度守田先生が来たのでこれで会話はお開きとなった。
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