第4話

短めです。

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「交通事故ですって……。居眠り運転だったそうよ……」

「まだ若かったのにねぇ……。可哀想に……」「嗚呼どうして……? どうしてよ……●●……」

……ここはどこだろうか? 泣いている人がいるようだ。

「あのー……どうかしたんですか?」

特にひどく泣いている人に話しかけても反応はない。

他の人に話しかけても同じように無視される。

おいおい、遂に俺は他人に無視されるまでになったのかよ、なんて惚けられる雰囲気ではなさそうだった。

しばらくただ見るだけしかできない時間が続いてボッーとしていると、お坊さんが入ってきて念仏を唱え始める。

そこでようやくここが誰かの葬儀をしていることに気づいた。(服装とかで気づけ、なんていうことは言わないでくれよ)


 そこでふと気づく。知り合いに亡くなった人がいる覚えは無い。

だとすれば誰の葬儀なのだろう。

気になってお坊さんの後ろから覗き込む。

    『●● ●● 享年18』

文字が読めない……? だとすれば葬儀場に来ている人を見ればピンとくるかもしれない。

そう思い、先程誰かの名前を呟いて泣いていた女性の顔を覗き込む。

「は、母?」

母にはこんな若い知り合いなんていないかった……いや、違う。1番近しい人間がいたじゃないか。

ああそうだ、これは俺のーー




「……きて! 起きてください!」

誰かの声で現実へと引き戻される。目の前には美しい少女がいた。

「……女神様?」

思わず呟いてしまう。

「へ?」

あ、だんだん目が覚めてきたわ。

そうだ俺ベンチで寝ちゃったんだったなー……ん? これ現実?

てことは目の前にいる子は3次元?

人生オワタ\(^^)/ 恥ずか死ぬ。

よし、死んだフリをしてやり過ごそう。

「俺はこれから死んだフリごっこをするから。

 君は興味をなくして帰る、OK? よし、おやすみ」

「はい、おやすみなさい。それでは! ……いや、そうはなりませんよ⁉︎」

チッ、融通の効かない奴め。早く帰れよ……」

「貴方口が悪いですね」

おっといけない、思わず心の声が漏れてしまった。

というか今更だけど誰だよこいつ、と改めて少女の顔を見る。

「ゑ? ヒロイン?」

「ひろいん? あの……誰のことでしょうか?」

そこには絡むはずだったヒロインの御尊顔があった。


 


 思考と共に体がフリーズする。

何で、どうしてーなんていう思いが絶えず体を駆けめぐる。

俺は彼女をスルーした、だからこちらから絡まなければもう関わることがないはずだったのだ。

だというのに目の前には奴がいる。

ふと奴を見ると能天気に

「あの……? どうかしたんですか……?」

なんてのたまってすらいる。

俺が寝ている間に何があったのかわからない。

そう考えていると奴は

「あ、お財布とかは盗っていませんから安心してくださいね」

見当違いのことを話し始めた。

違う、俺が聞きたいのはそこではない。

正直言って今すぐ逃げ出したい……が、どうしてここにいるのかなどの疑問があふれているので仕方なく話しかけることした。


 「……君はどうしてここに?」

「たまたま通りかかったんです。何となく公園に入ったらうなされてる人がいて……」

どうやら俺はうなされていたようだ。

ただ、普通見ず知らずの人間がうなされていてもほっとくのではなかろうか。少なくとも俺はそうする。

そう述べると奴は

「いや、それは貴方くらいでは……?」

と返された。 解せぬ。


 ふむ、このやりとりで自分がどんな状況にあったのかが理解できたな。

たとえスルーしたいヒロインが相手でも起こしてくれたのは感謝すべきだ、ということで感謝して帰ることにした。

「あ、どうも。それじゃ」

しかし『占いの館』使ってこんなことになるとは……ゲームでもアタリハズレが激しい時があったけどそれ引いちゃったのかね?

まぁ仕方ないことだから気にしたってしょうがない、ということで走り出そうとした。

「あ、あの! その……お名前とか教えていただけませんか?」

……何言ってんだろう、このヒロイン様は?


 思わず頬をつねってみる。うーん現実で間違いない。

ヒロインを見てみるとアワアワしながらチラッチラっと期待した目でこちらを見ている。カワイイ。

……じゃなくて! 何があってどうしたら俺なんぞに名前を聞く、なんてことを思いつくのだろうか。

ただ単に怖い。こんな積極的なヒロインだっただろうか? ……あ、奴のルートやったことなかったわ。

いやー、出会ったのはいいんだけど出会った時はデパートにバイトしに来てたからなぁ。

なんかイベント始まったわ〜ぐらいな感じだったんだよね。

正直言ってヒロイン、奴なんて連呼してたのは名前がわからないからだったのよ、なんて現実逃避してみたり。

「どうかしたんですか?」

「ちょっと今どうすべきか現実逃避してるから黙ってて」

「いいじゃないですか! 名前くらい!」

「れっきとした個人情報なのよ。というわけで帰っていい?」

「そこまでして教えたくないんですか……?

泣きますよ?」

「うーん畜生 ……わあったよ、教えるよ!

俺は名無野権兵衛って言うんだ、よろしくしないでいいからな!」

「ち、ちくしょう? えっと、名無野さんっていうんですね! よろしくお願いします!」

あら純粋。ニコニコしてる。

やっぱりいいことしたみたいで気分がいいね!

……あれ、これっていいことなのか?

いや、気にしたら負けだ。帰ろう。

「バイビー!」

某緑野郎の捨て台詞を吐いて走って帰った。



 



 

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