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7月19日

大学生活が始まり、しかし、未だに高三の春休みの延長を過ごしているようでなかなか実感が湧かない日々を過ごしている。

僕の名前多場祐介。今年大学生になった。しかし、大学というのは難儀なもので活動的でなければ空気のように時間が過ぎていく。光陰矢のごとしというやつだ。

高校生の時消極的な姿勢を貫いていた僕は気づいたら大学生一年目の夏を迎えていた。


僕は小説や、アニメ、映画、それぞれ語らせたら長いだろうが、そんな邪な心を抑える紳士な心構えもある。結果的に消極的な人間なんだが、ただ一つだけ願いがある。彼女が欲しい。もうこれさえ叶えば死んでもいいなんて位には切実に願っている。


さてまあ、そんな女子との邂逅も虚しくこの大学生活を謳歌している人間だ。

願いが叶いそうになくて不満かって?そんな事はないよ。こんな僕でもやる事があるから。アルバイト。俺は暇さえあればアルバイトをしている。大学帰りの夜。休日は多くて二つ入れる事がある。夜勤と、昼の出勤とだ。


どれも人とあまり関わらなくてもできるアルバイトだ。

スーパーの品出しとか、コンビニの夜勤とか。


しかし、この大学生活も三ヶ月が経ち、気づいた事がある。それは自分から動かないと出会いがないという事だ。男の知り合いは自然と出来るにしろ、女の知り合いは本当に出来ない。


直接的な原因は明らかだ。なんせ接触をしていないから。

でも仕方ない。女子と会ったって話のきっかけが思いつかないんだもん。

こんな窮状に例えばある男は言う。


「うん。そんな事考えた事ないな。なんでもいいんだよ。彼女の身につけているもの。性格を表した一面をエピソードを交えて褒めてあげるとか」

話者は自然にこの行為ができると言う。全くあり得ない話である。


話者は僕に嘘をついているのかもしれない。やはり見栄と突っ張りで生きる人間は嘘で塗れているのか、考え抜いてこそ実のある会話ができるというものだと僕は思うが。


不毛な話に思考を巡らす時間は終わり、意識がゆっくりと顕になる。

僕は教室にいた。しかも講義を受けている最中だった。

どうでもいい。そろそろ夏休みも間近になり、絶賛レポートの季節なんだけれど、僕はレポートなんか書くつもりはない。面倒だから。


まさか、レポートを出さなかったくらいで単位をくれないなんて事はないだろう。比較的真面目に講義は受けているし。それに不思議と不安はない。


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