第20話 試験開始

馬鹿貴族に絡まれ撃退した俺は、試験会場である訓練場に入った。

一階が闘技場のような地面に二階は観客席がびっしり並べられており、すでに何人か冒険者が集まっている。

ギルドの女性職員に個室に案内され、今回のルール説明がなされた。


「セイルさん、今回のルールについてですが、真剣での立ち合いと魔力練度の高さを評価して判定いたします」


「わかりました。あと、殺さないことと武器破壊はなしでしたよね?」


「よく調べていますね!即死でなければすぐ治療できる体制があるので大丈夫ですので安心してください」


なるほどなるほど。

やっぱり事前に調べておいて正解だったな。ちなみに今のやりとりも採点対象らしい。

冒険者は事前準備の有無が命に掛かってくる仕事筆頭だからな。


「今回の相手は引退したとはいえ元Aランク冒険者です。どうか気を付けてください」


「わかりました。丁寧な説明ありがとうございました」



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10分ほど待った後、試験開始の合図が外から聞こえてきた。

言われた通りに舞台に上がると思いの外大きな声援が聞こえてくる。


観客席に目をやると母フレアにその部下10名、鬼車のじっちゃん含めた信用できる盗賊5名(冒険者に変装)。

そして極めつけは変装した婚約者リジェとその親衛隊(警備隊に変装)が15名というカオスっぷり。

綺麗に集まって俺のことを応援していて、何だか恥ずかしい気持ちになるな。


対して向かいにいる今回の対戦相手である元Aランク冒険者グレンは、やたら罵詈雑言が他冒険者から投げかけられていた。

そんなことも居に返さず、俺のことを見つめているグレンの様子は明らかにおかしい。

赤い髪はクタクタ、身体は引き締まった筋肉に真紅の鎧と腰に携えている長剣は新品そのものだ。

一番目を引くのは奴の右腕の義手の精巧さだろうな。あれは完全に【メシア】絡みの一品だと分かる。


「おい、フレアのガキ」


「何ですかグレンさん?それとも母をストーカーして利き腕を無惨に斬られた変態さん?」


「フン!今にみてろよ!!俺はお前をボコボコにしてあの女をぶちのめすからよ!!!」


「は?」


「あとお前も婚約者もいい女じゃないか?こりゃあ・・ヒヒィ♪」


グレンは俺から視点を外し、観客席の母とリジェに目をやると不気味な笑顔で笑みを浮かべている。

最初は家族が人質になっているからある程度で事を収めるつもりでいた。

だが、実際に会ってみてこいつは俺の大切な人を傷つけようとしている。

容赦する必要はないよな?


俺は深呼吸して気持ちを整えると、審判が試験開始の合図をする。

緊張はない。あるのは徹底的にこいつをボコすだけだ。


「これより騎士団長の息子セイル様の冒険者飛び級試験を開始する。双方よろしいか?」


「はい」


「いいから始めろ審判!」


「それでは始めてください!!」



お互いの獲物に手を取り、正面からぶつかった二人から剣の甲高い音が響き渡る。

こうしてセイルの試験が開始されてのだった。






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