第13話 旦那との出会い【他人称視点】

saido 鬼車のじっちゃん



俺は鬼車の異名をもつ凄腕の盗人だった。

三年前の最後の大仕事の際にセイルの旦那に会わなければ、今頃はこの世にはいなかっただろう。今思い出してもあの場を生き残れたのは奇跡だった。


あの時…




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三年前



「野郎共!俺の最後の仕事だ!抜かりなく頼むぞ!!」


「「「「「「おう!!」」」」」」


王都が満月の光に照らされた深夜に、鬼車と仲間6人は最近不正に手を染めた貴族の屋敷に向かっていた。鬼車は決して殺さず、不正に手を染めた貴族をターゲットを中心に活動してきた義賊である。金品と不正の証拠を盗み、それをとある筋に流して取り締まってもらっていた。


今回の依頼は女騎士団長の屋敷だ。少し違和感があるが、情報屋からもらった内容は他の情報屋からの情報と差異はない。だが俺はこの情報に違和感があった。きれいにみな口を揃えて言うのだ。


「あの屋敷には化け物がいるか…。お前たち、そろそろ気をつk…」


俺が振り返ると腹部に激痛が走る。俺が信頼していた次期鬼車の男がナイフを刺していたのだ。奴はナイフを抜くと仲間達と一緒に俺を眺めて笑っている。


「じじい!お前にはここで死んでもらう。」


「なぜだ!?ま、まさかあの連中と!?」


「何だ、知ってんじゃないか。あっちの方が儲けはいいし、元々俺はあっち側の人間なのさ。あんたの死体を手土産に俺は!!」


「はいはい、近所迷惑だから大声出さないでね?」


「「!?」」


両者の間に突然現れた子供に、一同は固まってしまっていた。

いつから居たのか?何者なのか?疑問は尽きないがはっきりと分かることがある。

この子供は次元が違いすぎる。


「このじいさんは僕がもらうよ。お前にはもったいなさ過ぎる。」


「ガキが!おまえに何ができる!?お前たちさっさと…」


男が振り返ると仲間たちはすでにいなくなっていた。彼らが着ていた服を残して…

そしてその男も振り向き変わる前に姿を消してしまった。


「ふぅ…いい加減に隣国のテロリスト何とかしないとな。」


一息ついた子供が腹部の傷口に手をかざすと、ものの数秒で傷口塞がった。

俺は確信した。情報屋が言っていた情報の中にあった、俺が一番信じたくなかった情報。


「改めまして鬼車さん、僕はセイル。いきなりですが、僕の下で働いてくれませんか?」



最恐騎士団長と副団長の息子であり、裏社会での名は二重の意味で天災のセイル。

圧倒的な力を前に、俺は無言で首を縦に振るのだった。



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「おっ!早速来たな!」


いつもどおり届けられた紙を見つめ、俺は家を出る。

今日も俺は仕事に精を出す。すべては旦那の為に。

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