第2章 少年期

第11話 プロローグ

転生から6年。貴族として最低限のマナーと戦闘技術?を身に付けたセイルは、週1回の王城訪問に向かっていた。もちろん婚約者に会いに行くのであって、決して何かやらかしたとかではない。(10敗)


もはや顔パスで門をくぐり、すれ違う文官や騎士達には必ず挨拶を欠かさず行う。

王族の婚約者ではあるが、みな気さくに話しかけてくれ、騎士にいたっては模擬戦の相手をしたことがあるくらいよい関係を築けていると思う。


俺は《魔力制御》で城内部を探知すると、どうやら中庭にいるようだ。

庭園のように整備された中庭に入ると、侍女が気付き案内された。


腰まで伸ばした髪をたなびかせ、無邪気にはしゃいでいる俺の婚約者リジェ。

1個下なので今年で5歳になるが、俺と会う日以外は真面目で大人びた様子なのだが、俺といるときは逆に年相応の女の子な印象だ。

俺に気づいたリジェは、俺に飛びついてきた。


「セイルお兄様!スゥー、ハァー、やっぱりお兄様の匂いは癒やされます!!」


「相変わらずだなリジェ。はしたないからやめさい。」


「むぅ、1週間に1回しか会えないのがいけないのです!」


「ははは…。」


転生神様が人間に転生したリジェは前世での記憶は持ち合わせていないのだが、単純にあらゆる分野ですでに結果を残している。

特に人をみる目が著しくよく、前世の影響が色濃く出ているのだと俺は思っている。

以前リジェの誕生日パーティーの際に、集まった貴族達をみて不審に思った者たちの領地を調べてみたら、全ての領地で何らかの不正をしていたなんてこともあったくらいだ。

そんなこともあったため元々あった俺に嫁ぐ計画は見直されおり、こうして週一回の訪問になっているのである。


だが俺も6歳となり冒険者登録できる年齢になった。

今回の訪問の中には国王様より推薦状をもらうという名目もある。


1時間ほどリジェと戯れたあと、疲れて寝てしまったリジェえを侍女に任せ、俺は国王様のもとへ向かった。


コンコン


「セイルです。推薦状の件でお話があります。」


「入れ」


扉を開けると机に座って書類を眺めている国王様と笑顔で佇む宰相様が待っておられた。

宰相様に促されソファーに座ると、国王様と宰相様も対面に座った。


「待っていたぞセイル。おぬしのことだ、冒険者資格を飛び級するための推薦状をもらいに来たのだろう。」


「はい。そろそろ俺も功績を作らないとリジェに愛想尽かされてしまうので…」


国王様が苦笑すると隣りにいた宰相様が手を鳴らして止めに入る。

宰相様は50代らしく見た目はイケオジな感じなのだが、中身は若い印象だ。


「はいはい、話が進まないでしょ。まぁ、セイル君はすでにこの国の5本の指に入る実力者だし、人柄も問題ないから大丈夫でしょう。」


「そうじゃの。ただ登録時にとある冒険者と模擬戦をしてもらうからの。三日後に王都の冒険者ギルドに来るように。王命で出しているから忘れず行くのじゃぞ?」


「わかりました。(うゎー…絶対見に来るつもりだな国王様。帰る途中で対戦相手の情報収集しなくちゃな。)」




俺は三日後の冒険者の対戦に向け、王城を後にしたのだった。








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