第5話 国王様への謁見と格付け

父との最悪の出会いから二日後、俺達家族は王城に向かって馬車で移動していた。

実はあの時の魔力衝突のせいで王城の防衛システムが暴走してしまったしく、国の防衛機能が丸一日機能しなかったらしい。今回の件と俺の家庭教師の退職多すぎ問題も含めての呼び出しのようだ。マジですまん。



「母様。王様ってどんな方ですか?」

「うーんとね~・・・無駄に髭を生やした偉い中年男性かな?」

「いやいやいや!仮にも自国の王をの事を騎士団長がそんなこと言うなよ!?あのなセイル。王様は真面目で戦闘能力が皆無だが人の見る目がある偉い人だぞ!」



はぁ…なんで俺の親は戦闘以外ダメダメなんだ…俺も人の事は言えないが一応まだ1歳なんでね!一応なんだが父マイクに《鑑定》しようとしたんだが頑なに見せてもらえなかった。というか母も知らないらしい。


そんなことを話していると王城にいつの間にか着いてしまっていた。そのまま馬車を降りて国王様との謁見となった。はっきり言って《転生神の加護》で礼儀作法は覚えたのだが、一応俺は赤ん坊だからな。母が抱っこする形で国王の待つ広間で入場することになった。



「騎士団長フレア及び副団長マイク・子セイルの入場です。」



ゆっくりと扉が開くと左右に騎士達と閣僚らしき人達が険しい顔をしてこちらを睨んでくる。母は笑顔で返しているが、父は申し訳なさそうに今にも土下座しそうな様子が見て取れる。


俺は知らないふりをしつつ、極少量の魔力を散布しながら密かに騎士と閣僚達の足元に魔力を移動させた。指定された場所まで移動すると膝をつく両親。すぐに国王様が入室すると顔を上げる。



「フレアにマイク…そしてセイルだったな。わざわざすまんな。」

「この度は誠にすみません国王様。私が早めに止めれば…」

「いえ!自分の子を認識できなかった私に非があります!どうかフレアとセイルには…」



俺は黙っていたのだが、何故か俺の方を見る三人。

すると国王様が俺に話しかけてきた。母から降りて膝をつく俺の姿に後ろにいた者達は驚いた顔をしていた。



「セイル。おぬしはどう思っておる?家庭教師の件も合わせておぬしの意見を聞きたい。」

「はい。まず今回の件ですが、たかが大人二人と1歳の赤ん坊如きの魔力衝突で機能しなくなる防衛システムはいらないのでは?あと、その程度で王城に呼び寄せる暇があるのなら、暴走しないシステムを作ればよいのではないですか。それともそれが出来ないから憂さ晴らしに呼んだんですかね?家庭教師の件もそうです。あんな低レベルの家庭教師はいなくなって結構。あんなの子供の遊びです。その証拠に」



俺の発言を聞いて真っ赤になっている騎士と閣僚達を足元にある魔力を使い、鎖状に展開して全員を拘束して見せた。《魔力制御》は俺の体内から放出した魔力でもコントロール出来るので、こういう事も出来るのだ。

拘束して者達は抜け出そうともがくが、誰一人として抜け出せるものはいなかった。状況を理解できない両親を尻目に、俺は国王様に話を続けた。



「国王様。もしよろしければ私に防衛システムの再構築をさせてもらえませんか?」



一か八かの賭けだが、父の話が本当ならこの話に国王様は喰いつくはず。



「ほう、言うではないかセイルよ。ならばおぬしに任せてみるのも面白そうだな。ついてこいセイル。あと、情けないお前らとフレア・マイクは残っておれ。これも罰じゃ。」



俺は一人国王様に連れられて部屋を後にした。すまねぇ母様父様。こいつらの後始末頼むわ!


この日を境に俺セイルに反抗する王城の騎士や閣僚はいなくなった。また、新たに社交辞令として【騎士団長の息子には手を出すな】と貴族の間で暗黙の了解になったのだという。

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