第10話 回想
俺は知っている。
「わたし、将来しゅうのお嫁さんになる」
「ほ、ほんとに?」
「うん、約束しよ!」
お互い笑いながら手を取り合い、
「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます。指切った!」
「あはははっ」
「えへへっ」
俺は知って、いる。
「偉いぞしゅうやー学年トップの点数だ!」
大きな拍手が巻き起こる。
「流石、俺の親友だなー鼻が高いぜ!」
「勉強してたとこばかりが出て良かったよ」
「おいおい、そんな事いいながら前回の順位も一桁だったの知ってるんだぞ!」
「おうおう、そうなのか?しゅうや俺にも勉強教えてくれ!」
お調子者のゆうたが前屈みになりながら土下座をして、じわじわと前へ詰めてくる。
「あははっいいよ!僕で良かったら喜んで教えるよ!」
「やはり、しゅう神だ!」
と言いながら俺の背中に手を回して抱きつく。
「ははっっ、、、ちょ...ちょっと......く...くすぐったい」
「こ、心の友よー!」
大声で叫びクラス中に笑いが起こる。
「もう、しゅうやが困ってるんじゃん」
「そろそろ離してあげなよ!苦しそうじゃんか!」
「いや、しゅうやは俺の物だ!」
再びどっと笑いが起きた。
そう、俺は知って、、、いる。
「勉強や部活も大変なのに毎日家事してくれてありがとね」
「いやいや、このぐらいどうだって事ないよそれより.....」
母の手を掴む。
手が腫れていた。
「いつも、無理させてごめんね。」
「いいのよ、しゅう、、、大した事はないわ」
家事と言っても、全てが出来る訳ではない。
ご飯一つにしても材料を買いに行って、料理をして皿を洗って乾かす。
("絶対に母さんに楽をさせてやりたい")
そう、そのはずだった。
俺は今まで生きてきて全てが順風満帆で何一つ壁や不幸と感じる出来事がなかった。
このまま、何も変わらない日常を生きて人並みに幸せを感じ、出会いがあり別れを悲しむような人生を送るはずだった。
どこから歯車が崩れはじめたのだろうか?
いや、そもそも最初から、、、、。
そう、俺は知っていたんだ。
人は、、、簡単にも絶望の淵へたたき落とすという事を。
そして、それには悪意が全くなく寧ろ善意と似た正義感を振りかざしてくる。
("ははっ醜いもんだ。同じ生き物で同じ種類の枠組みとして俺も混ざっている訳だ")
たが、やつらと俺には決定的な違いがある。
自分が強いと錯覚した人間は人の痛みに鈍感になってしまう。
だが、それは仕方のない事。
目の前の苦しみから、そして、真実から目を背けて逃れようと現実逃避する事を考えているからだ。
だが、人間は弱い生き物なんだ。
決して強くなる事はない。
たがだか他の動物より少し知性が上回っているぐらい。その程度のものなんだ。
これからおこなう事は、驕った人達の考えを根本的に捻り潰す。
何が起きているか?何が正しいのか?原因は何なのか?なんて最早どうでもいい。
全て、そう、、、一度この全てを無に還す。
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