過去

 担任先生が来る事によってなんとか場を収める事が出来たのだが、暴力が行われた事への言及は無かった。


「学校ではやるな!やるならしっかりとばれないとこでやれ!」


「そして、そこのお前……ふん、言い様だ!多くの人を傷付けた傷の深みはそんなものではないからな?」


 淡々と俺から視線を外さず睨みながら、言い放った。


(は?多くの人だと?どういう事だ?)


「先生.....ほんとに...お「おいっ」」


ドスの効いた声で、


「これ以上、喋るんなら追い出すぞ!」


 俺は驚きつつ開いた口をゆっくり、ゆっくりと塞ぐ。



 俺は3年生に上がった頃、先生に密かに相談をしていた。


 当時は、受験に対する不安や人間関係の相性が悪いのも相まってか、頻繁に問題行動やいじめなどか多発していた。


 そして、俺は誓った。誰一人として仲間はずれがないよう、に笑いが絶えないクラスを築きあげていくのだと。



 でも、人との関係、繋がりをよくするなんて事は想像より難しかった。

 

 そこで、クラスの皆で、何かを成し遂げる事が必要だと思った。


 そこで行事だ。

 俺は、手伝ってもらう程で、とにかく声をかけ続けた。

 至って単純だが、俺に出来るのは、話す機会を設ける事だと思った。

 長い時間を使い切磋琢磨する事で、人との関わりや、時には本音で言い合う事で俺達は、強く太く切っても切れない程の信頼関係が結べたのだ。


 そして、文化祭や体育祭、共に優勝した時なんかは、皆で喜びを分かち合い、誰もが理想とするクラスが出来あがった。



・・・と思ったのだが、どうやら俺の思い過ごしのようだ。


 あれから、まだ半年も経っていない。

 なのに、現状はこの有り様だ。

 他の人が俺の立場なら恐らく、苦しいや怒りを通り越して、感情の赴くままに膝から崩れ落ちるか、何とか自尊心を保つように'無'の感情でこの場をやり過ごすだろう。




 授業が始まるのだが、後ろからケシカスらしきものを投げられる。


('はぁー、やっぱ変わんねーよな。俺もお前らも')


 俺は久々に息を殺しながらすすり泣いてみる。

意外と出てくるもんなんだな、、、おまけに鼻水も。


 だが、彼らの行動は収まるどころかさらにエスカレートしていく。


嫌がらせは一日中続いた。


 花梨と隼人に至っては俺のやられてる姿を見る度に'だっせー'、'もっとやれやー'と大笑いして、優越感に浸っていた。



 家に帰る頃には、傷だらけの身体に、ボロボロの見た目となっていた。


長かった一日だった。



そして、玄関から扉を開けようとするのだが

鍵が締まっていて動かない。


玄関の貼り紙にこう書かれていた。



'家族以外立ち入り禁止'




どうやら、これからが長くなりそうだ。



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