第2話 泣いてる日に
課題の動画を撮った数日後。
由利香は寝転がりながら本を読み、カーラは寝床で寝転んでいた。
母親は、そんな一人と一匹を見て笑った。
「犬は飼い主に似る、なんて言うけどアンタたちはまるで姉弟ね。おんなじように寝っ転がって」
「カーラは私の弟分だもん」
由利香はそう言って笑った。
由利香は一人娘だ。
カーラが来たとき、とんでもなく大喜びしたのは両親もしっかり覚えている。
「可愛い弟分が来た!名前もあげないとね」
カーラは由利香が名付けた。
ゆりか、だから弟分はかーら、としりとりにしたのである。
急に由利香は無言になる。
そして、もそもそとほふく前進してカーラの腹部に顔を埋めた。
カーラはいきなりのことに、ビクっとする。
「カーラ……」
どうやら、読んでいた本で辛くなり、泣き出してしまったようだ。
カーラは首を上げていたが、安心したような、諦めたような感じでコテン、と首を降ろす。
由利香が泣き止むまで、そのままカーラはじっとしていた。
「……くぅ」
由利香は泣き疲れて、カーラの腹部で寝始めそうになった瞬間である。
カーラはムクリと立ち上がり、由利香は顔面をカーラの寝床に強打した。
「痛っ!! カーラ、ひどいよ!」
由利香が抗議すると、カーラは背中にドスンとぶつかる。
『仕方ない姉さんだな、いてやるよ』と言いたげな衝撃に、由利香は安心する。
「なんだかんだ、カーラは由利香が大好きね……」
母親は微笑ましく見守る。
「さてと、お母さんは夕飯の支度しましょうかね」
その言葉に、カーラは喜んで台所へ飛び込む。
「姉さんよりご飯なのね……。足元でうろちょろしたら危ないから、姉さんと散歩でも行きなさい!」
カーラはそれを聞いて尻尾をブンブン振った。
ワン、ワン! と吠え立てて、由利香を起こそうとする。
「カーラ……」
由利香は傍に来たカーラを捕まえる。
そのまま抱き締めて抱き枕状態にしようとした瞬間!
カーラは足をジタバタ暴れさせ、由利香の腹部を蹴る。
「痛い! 痛いって! もう分かったよ……」
「じゃあ、お散歩よろしく!」
「はーい……。行ってきます」
由利香はカーラを散歩に連れ出した。
ついでと言わんばかりに脚側行進の練習をさせようとしたが、カーラはおやつばかり狙う。
「ドッグトレーニングの授業通りにはできないか……」
由利香は苦笑いした。
だが、カーラは度々アイコンタクトしてくる。
由利香はそれがとても嬉しく思った。
ちゃんとアイコンタクトしてくれるのは、犬なりの信頼感と学校で聞いたことがある。
カーラはちゃんと由利香を信頼してくれているのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます